櫻井大尉が去って、俺は内心ため息をついた。
わかってるな?って…
つまり、吐かせとけよ、って意味なんだろうけど…
「リーダー?」
相葉ちゃんが心配そうにこっちを見た。
「一度、戻る」
見張り役に短く告げて、相葉ちゃんと牢を出た。
詰め所に戻ると、棚にしまってあった書物を取り出した。
「リーダー、これ…」
「ん…」
まだ新米牢屋番の俺に、つい先日、渡されたのがこの『心得』という書物だ。囚人を自白させるための様々な方法が記されている。
「俺もこれ読まされたことあるよ。リーダー、できんの?」
「んー…痛い系とかは…ちょっと…」
相葉ちゃんも、ふんふんと頷いた。
「そうだよね…俺やったことあるけど、なんかこっちの心が痛くなっちゃうんだよね」
「やっぱそうなんだ…」
なんでおいら達、牢屋番になったんだろ…
しかし、今はやるより他に仕様がない。俺は書物に描かれた、囚人を痛めつける様々な方法や道具を見ながらパラパラとページをめくった。
「性 的ナ責メ苦ヲアタエルニハ」
と書かれたところではたと手が止まる。
手に、柔らかなニノの体の感触が蘇ってきた。
「リーダー、もしかして…」
「こっちしかないよね…」
小さく呟くと、相葉ちゃんは途端に、いたずらっぽい笑顔になった。
「リーダー、逆に…溺れないようにね?」
おぼれる?
「水責めとかしないから大丈夫」
「そういう意味じゃなくて…」
俺の肩をポンと叩いて、相葉ちゃんはくっくっと笑った。