はー…やばい。
ニノの姿がバスルームに消えて、俺はほうっと息をついた。
ドキドキするだろうな、と思っていたものの…
ニノとふたりきりでこの狭い空間にいると、抱きしめたい衝 動がこみ上げてきて、それを抑えるのに必死だった。
ニノを不安がらせないよう、スマートに、紳士的な態度でいたい。
…だいたい、今日が暖かいからいけないんだ。
俺は自分の理性の信頼性のなさの根拠を天気に転嫁しようと、ぶつぶつ呟きながら布団を押入れから出した。
あったかいから、ニノがあんな薄着で…
大きく開いた襟元からなめらかな白い肌と綺麗に浮き出た鎖骨が見え隠れして、不動産屋からずっと、あまり見ないようにするのに必死だった。
アイツ…なんであんな…色 気あんだろ…まだ高校生のくせに…
そう、まだ…高校生…なんだよな…
今は、高校は入試のために授業はもうないけれど、一週間後に卒業式だと聞いている。
キ ス…とか…
その先だって…したいけど、
り、倫理的に…ちゃんと考えて…
やっぱ、せめてアイツが…入学してからの方が…いいよなあ…
ベッドの傍の床にもう一つ寝床を作り終えたころ、バスルームからニノが出てくる気配がした。
「いいお湯でした~ありがとう」
「じゃ、俺も入ろっか…」
振り向いて、俺は激しく後悔した。
なんで、こんなぶっかぶかのパジャマ渡したんだろ…
黒白の大きなチェックのパジャマはゆったりとして、ニノの手を半分ほど包んでいる。足先だって、大きめのズボンの裾でほとんど隠れてしまっている。
肌がチラチラ見えるのも目に毒だけど、大きな布に包まれて、肌が全く見えないのも…それはそれで、妄想をかきたてるもんなんだよな…
めまいにも似た感覚が一瞬俺を襲う。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ニノはタオルで自分の髪を拭きながら上目遣いで俺を見上げた。
「…翔ちゃん?」
ニノが近づくと石鹸のいい匂いがして、俺はニノを見つめたまま立ちつくした。
ニノは首を傾げて俺に一歩近づいた。
その細い顎に思わず手が伸びる。
「翔ちゃん…」
気づいたら、ニノの後頭部を抱きしめて、その唇を塞いでいた。
「んっ…ふ…」
ニノの唇から漏れる甘い吐息に、何もかも吹っ飛びそうになる。
小さい肩…
なんか…唇…甘いし…
ニノは腕を俺の背中に巻きつけた。ニノの舌 をちゅっと吸 うと、ニノの腕にぎゅっと力がこもる。もっと、って言うかのごとく、おずおずとした動きながら俺を求めてくるその 舌が可愛くて、可愛くてたまらない。
「あーっ‼︎ ダメ、ごめん、ちょっと頭っ…冷やしてくるから!」
ガバッとニノを引き剥がすと、思い切るように頭を振って、バスルームに飛び込んだ。
「翔ちゃんっ⁈」
ニノの戸惑いの声が聞こえた。