「ニノ、大丈夫?」
横向きになって荒く息をする俺の髪を、かたわらに寝て梳きながら、大野さんは尋ねた。
「ん…もう、ウィンクする体力も残ってないよ…」
「んふふ…ウィンクぐらいできんでしょ」
髪を梳いていた大野さんの手が、俺の頰に移動した。
「できないって…」
笑い混じりに言って、目を閉じる。大野さんは俺の頭を腕で包み込むようにして抱き寄せた。熱さを保つ大野さんの胸に顔を埋めて、その甘い香りにほうっと息を吐く。
「ね、大野さんウィンクして」
ふと思いついて、目を開けてお願いしてみる。
「ふ…なんで…おいらのはいいよ…下手くそだもん」
「なんでも」
頬杖をついている大野さんを見上げて言うと、彼はんふふ、と笑った。
「…じゃあ…するよ?」
「うん、全力でやってよ」
大野さんはゆっくりと大きく両目を開いた後、ぱちりと素早く両目を閉じて、開けた。
…両目って(笑)
「どう?」
にこにこする大野さんに呆れたように言ってやる。
「…おーのさん、ウィンクは片目ですから」
「ふふ」
「でも、もっかいやって」
「ヤダ」
「やってよ」
…なんだなんだ、この非生産的な押し問答(笑)
って、恋人との会話ってこんなもんか…
俺が堪えきれなくて笑ったら、大野さんも笑った。
「じゃあ、もっかいね」
大野さんはもう一度、大きく目を見開いて、ゆっくりと両目を閉じて、開けた。
「ふっ…だからウィンクじゃないって」
「ふふ…片目のウィンクを同時にやってんの」
「ああ、そうなんですか…ってなるか!」
思わずノリツッコミしながら、大野さんの腕をペシッとパンチしたら、大野さんはふふっと笑った。
「ウィンクする体力も残ってないって言ったのに…痛ぇよ」
「だって…そりゃ」
あなたのウィンクが可愛くて、元気出たとか…
言えないでしょ。
俺が言葉につまっていたら、大野さんは照れたような笑顔で、片目だけのウィンクを素早く2回、俺にくれた。
-終-