Side N
ふたりでもう一度シャワーを浴びた後、照明を落として、大野さんの隣にぴとっとくっついて寝転がる。
「ニノ」
真面目な顔の大野さんがこっちを向いた。そのまま抱き寄せられる。
「約束して?」
俺は彼の胸に埋めようとしていた顔をあげた。
「誰かに脅されて…そいつとスること強要されたら…俺に相談するって…」
大野さんの気持ちは痛いほど伝わってきたから悪いと思ったけど、思わず吹き出してしまった。
「すごい…ピンポイントだな…」
「だって…そう約束しないと言ってくんないかなって…」
「大丈夫だよ。今後は気をつけるし」
「ホントに?もうひとりで決めて、あんなことしない?」
心配そうな顔の大野さんに強く抱きつく。
「しないよ」
「録音もおいらとの会話だし、写真もおいらとのだし…ああいうの、ふたりの問題だかんね?」
どきっとして、思わず顔を見た。
「ふたりの…もんだい…」
くすぐったいその言葉を舌の上で転がす。
「そだよ。ああいうときは、ふたりで考えんだよ」
大野さんは俺を抱き直して、優しく頭を撫でる。
この人とふたりなら、何も怖くないって思えた。
本当に。
涙が出そうになったから、また顔を大野さんの胸に埋める。大野さんの香りが俺を安心感で満たしていく。
「ホント、翔くんに感謝だな…」
「え?」
「お前が田中さんと飲んでたはずの日に、翔くんが田中さんと飲んだって言ってて…なんかおかしいってなった」
そうだったのか…
「じゃあ、今度翔ちゃんに田中さん、紹介してもらお」
「うん…そんで絶対に翔くんと一緒に行ってな」
「ふふ」
「ニノ、絶対だよ」
大野さんは心配そうな声で言った。
「大丈夫だって、田中さん妻子いる人なんだから」
「やけに詳しいな…」
「ふふ、だってずっと好きなんだもん」
「俺とどっちが好き?」
口を尖らせた大野さんを見てまた吹き出してしまった。
「そんな…比べるまでもなく、あなたに決まってるでしょ…てか、好きの種類違うし」
背中に回した腕にぎゅっと力を入れる。
大野さんは「ふへへ」って満足そうに笑った。
「おいらも…ニノ、好き」
大野さんはそれだけ呟いて、次の瞬間、目を閉じた。
すぐに聞こえてくる、すうすう言う規則正しい寝息に俺は声を立てないように笑った。