Side N
大野さんはバスタブにしゃがみこんで俺を抱きとめて、そのままバスタブの反対側の壁面に背中をつけて、俺を抱き寄せた。
2人の荒い息と、シャワーの音だけが響く。
「ニノ…すごい感じてたね…」
「ん…」
「あのへんな薬、まだ効いてたりしない?」
大野さんはいたずらっぽく笑って俺の頭を撫でた。
あんなの、もう効いてない。
もう効いてないけど…
この場合、効いてないのにあんな感じちゃってるってことになんのか…
すげー恥ずい…
俺は大野さんの首筋に顔を埋めて、そのままかすかに首を振る。
大野さんがふふっと笑う気配がした。
「ニノ、立てる?先上がっといて」
「大野さんは?」
「ここ、キレイにしてから行くから」
「わかった…」
恥ずかしくて、そのままふらふらとバスタブを出る。
「ニノ」
大野さんが呼ぶから振り向くと、彼はバスタブに肘をついていた。
「ベッドで待ってて」
満面の笑みで言われて、顔が熱くなる。風呂場を出ると、身体から湯気が上がった。