Side S
智くんと肩を組むポーズの撮影に入って、俺は笑顔のまま智くんに低い声で言った。
「さっきのニノとリリティの会話…考えてみたんだけど…」
智くんは思わず俺をちらっと見る。
「もしかしたら…ニノ…奴に脅されてんじゃないかなって…確証は…持てないけど…。ニノは奴に狙われてんじゃないか…」
智くんは目を見開いた後、険しい顔になった。こくっと頷く。
「ニノ、アイツの楽屋行くって言ってたんだよね…」
「うん…」
智くんは、撮影に一生懸命なスタッフ達を見回した。
終了まではまだ時間がかかりそうだ…
「翔くん…ごめんね」
「え?何が?」
「信じたくないけど…翔くんが考えた結果がそうなら、やっぱニノが…あぶないんだって思うから」
智くんはカメラに向き直る。
「後で、スタッフさん達にも謝るね…でもおいらは、後悔したくない」
「なに?どういうこと?」
俺がびっくりして智くんを見た瞬間、智くんはいきなりお腹を押さえてふらふらとカメラに向かって歩き出した。
「すみません…俺、腹痛くて…」
「だっ…大丈夫ですか、大野さん、ちょっと休憩しますか?」
スタッフが駆け寄って、心配そうに智くんの背中に手を添える。
「すいません…できたら、お願いします」
智くんは痛そうに腹を押さえるふりをしながらも、俺に向かって手をかざして、ごめんの合図をした。
そっか…これ、撮り直しになっちゃうかもしれないから…
そんなの、俺は全然構わない。
後で謝る時は、一緒に行くよ…智くん…
スタッフに身を起こされて、前を見据える智くんの瞳には、もうすでに怒りの炎が燃えているように見えた。
スタッフに身を起こされて、前を見据える智くんの瞳には、もうすでに怒りの炎が燃えているように見えた。