Side N
「許可は翔ちゃんにとってよ」
俺が困った顔で大野さんに言ったら、翔ちゃんはまた吹き出した。
「いいよ。こっち向いて新聞読んでるから」
その言葉を聞いて、大野さんはソファに座って、自分の膝の上をぽんぽんと叩いた。
「ほら、ニノ、ここきて」
ああ…
この人にこんなこと言われて、
断れる俺はいない。
俺はソファに近づいて、大野さんの膝にまたがる形で彼の膝の上に座る。
大野さんが腕を俺の背中に回して、ぎゅっと抱き寄せた。
あ…大野さんの香り…
大野さんは俺を抱き寄せた後、背中に回した手でそっとそこを撫でた。
頰を大野さんの頰にくっつけると、彼は動物みたいに自分の頰をすりすりと動かした。
顔を少し上げて大野さんの方を見ると、大野さんもこっちを見た。息遣いも聞こえるくらい、至近距離。
収録後、アイツんとこに行く前に、何の屈託もなくできるキス…
大野さんと最後にしたい…
俺は合わせてた視線を外して黙って大野さんの頰にそっと唇を寄せる。大野さんは一瞬驚いたように身じろぎして俺を見たようだったけれど、彼の手は俺の後頭部に伸びて、そのまま力が込められた。
そっと、唇を彼の唇に寄せると、大野さんもかすかに唇を開く。
大野さん…
音も立てず静かにお互いの唇をついばんだ。
どんなことがあっても、
俺の一番は
あなただからね…
気持ちが弱くなりそうで、唇を離して大野さんを見つめる。彼は目をあげて俺を見るとふふっと微笑んで、小さな声で囁いた。
「ニノ、どしたの?甘えてる?」
「ん…」
もう一度唇を寄せると、今度は深く口付けられた。音は立てなかったけど、新聞を読んでる翔ちゃんは、俺たちが何してるか気づいているだろう。
こんな、ずっと…しんとしてんだから…
その時、ガチャ、とドアが開いた。
「うおっびっくりした」
潤くんが入ってきて、キスしてる俺たちに気づいて声を上げる。
慌てて離れて潤くんを見ると、彼は真っ赤になっていた。
「翔さんいるのに、何してんの、あんたら」
俺は翔ちゃんを横目に見ながら、潤くんに向かって人差し指を口にあてて「しーっ」って言った。
「いやいや、翔さんもわかってたでしょ」
「何かあったんでしょうか?私新聞に夢中だったんで何も…わからないんですが」
翔ちゃんがおどけて言うから潤くんは吹き出した。
「オトナだね、翔さんは」
荷物をおいて、翔ちゃんの隣に座る。
「でも、リーダーとニノさ、もっと気をつけた方がよくない?俺らはいいけど、他の人にバレたら面倒だよ?」
潤くんが真面目な顔で俺たちに言う。
ズキン…って胸の奥が震える。
「そうだよね…ゴメン」
俺が真面目な声で謝ったら、潤くんは慌てて手を振った。
「いや、そんな、俺に謝んなくても」
「ううん、ゴメン…これから、気をつけるよ」
小さく呟く俺の手を、大野さんはきゅっと握った。