2011年2月20日(日)
 
 
あの日の、たっくん。
☆☆☆ その① ☆☆☆

たっくんの威嚇。二歳の頃。

とにかく乱暴だった。自宅の庭で一人で砂遊びをしているところへ、

近所の女の子が通りかかる。

「たっくーん」嬉しそうに駆け寄ってくる。

たっくんは、目の前の可愛い女の子に向かって突然、砂をかける。無

言で、狂ったように砂をかける。かけ続ける。

「たっくん、やめて」女の子は懇願するが、砂かけをやめようとはし

ない。

異変に気づいた私が、走って行って、たっくんの手からスコップを取

り上げる。

たっくんは「だめー、だめー」を連呼。スコップを取り上げられたか

らではない。女の子に向かって「だめー」と叫んでいるのである。 

何がダメなのか。

「ねえ、たっくん。どうしてこんな意地悪するの?」女の子のママが優

しく尋ねる。

「だめぇー。だめぇー」吠え続ける。飛び跳ねながら叫んでいる。

女の子は泣きながらも「たっくん、あそぼ」と言う。

たっくんは口を結んだまま仁王立ち。

私は「ごめんね。今日は、たっくん、一人で遊びたいみたい」そう言

って、女の子が立ち去るまで、たっくんの身体を押さえている。

女の子が見えなくなってから、スコップを渡すと、たっくんは何事も

なかったように、また一人で黙々と砂遊びを始める。

縄張りに侵入してきた敵に対する威嚇。

子猿が、可愛い♀猿に、こんなにも威嚇するのはなぜなのだろう。

家の前を通る幼子たちを、狂暴猿から守らねば。家の周りを鉄柵で取り

囲んだ。たっくんが脱走できないように、門扉に鍵もつけた。

『危険! 乱暴な男の子あり。なるべく近寄らないでください』そんな看板を

設置した記憶がある・・・。 二十年ほど昔の話である。