秀さんは私を誉め殺しにする気らしい。
お互いの仕事の内容もわかるようになってきて、秀さんは仕事の合間にもLINEが来る。
「えーー?!ゆきンこさん1人でそれ全部やってるんですか?すごい!優秀なんですね」
「社外に人脈を持つって、なかなかできないことです。素晴らしいですね」
「誰にでもできることじゃない。ゆきンこさんが優秀だからできるんです」
「美人だし人付き合いも上手いし、知識が豊富で納期厳守で仕事が早い」
よくそんなに褒めるポイント見つけるなぁ。
「暇な管理職なもんでw」
と秀さんは言いますが、この時期、事業報告や人事評価などなど、面倒な仕事が詰まっているはず。
「暇なのは部下が出さなきゃいけない提出物を出してないから、待たされてるだけでしょ?」
と返すと、
「よくお分かりですね♪」
と嬉しそう。あたりだった?
そして、またベタ褒めしてくる。
仕事がパンパンに詰まっていて、気が張っている昼前にきたLINE。
「依頼した資料は無事に届きましたか?怖い顔していたら美人が台無しですよ。笑顔で頑張ってください」
「なんでブスッとした顔で仕事してるってわかったんですか?」
と返すと
「昨日、私に言ったでしょ、部下が出さなきゃいけない提出物を出さないのでは?って。アレ、ゆきンこさんも同じなのかなと思って」
秀さんにとって、苦労をわかってもらえるってことが。気持ちいいんだろうなぁ。
褒めてくれるおかげで、今私は機嫌がいい。
だから、忙しい作業をしている中でも、次の企画がポンポン浮かんでくる。
調子がいい。
私の納期厳守で、できて当たり前の仕事をこんなふうに褒めてやる気にさせるなんて、秀さんは部下のことも褒めるんだろうなぁ。管理職の能力すごいと思う。
「ゆきンこさんのように締め切り前にビシッと出してくれる優秀で、マネジメントができる部下がいたら助かるんだけどなぁ。」
こうやって日を追う毎に、私の興味を惹きつける。誉め殺しで手懐ける作戦だよね、きっと。