新たな行きつけの店を発見しました。
土曜の夜にだけ、ひっそりと灯が灯る小さな店。
ずっと前は違う店だったはず、最近オープンした?
奥の方に数人の人影。カウンターの中の人と他のテーブルにいる人とが楽しげに話しているけど、全員が家族のようにも見える。
仲間だけが集まる店なんだろうか?
入りづらい。
看板は小さくてよく見えない。
思い切って入ってみました。
「こんばんは。ここはどういう店なんですか?」
カフェにしては夜だけというのは違和感。
BARにしてはお酒のボトルが見当たらない。
声をかけると店内の全員がこちらに注目する。緊張する瞬間。
30代のエプロン姿の店主が歩み寄ってきて、メニューを見せながら
「スープデリを中心にいろいろありますよ」
スープデリ? それってランチ営業するべきメニューじゃないの?
不思議な店だわ。
メニューは食事のほか、お酒もある様子だったので入ってみることにしました。
先客は、ご近所の人って感じで、やっぱり親しい人の溜まり場っぽい。
カウンターに私と同世代の女性、真ん中のテーブルに20代の男性(この2人は親子でした)。
奥のテーブルには60代後半の男性とその奥様(私と同世代くらい)です。
空いている席は入り口付近のテーブルと、その人たちのそばにあるテーブル
「お好きな席にどうぞ」と店主に言われた時、60代男性が自分の荷物を隣のテーブルの椅子から退ける仕草が見えたので、入ってもいい空気を感じ、この人たちの輪の中の席を選びました。
真ん中にいる20代の男性をイジるような会話に笑わせてもらい、
「皆さん、繋がりなんですか?」と問いかけると、この店の店主を応援する会だよ、と60代男性が言う。
私「奥様が、え?そうなの?って顔してますよ🤣」
店主「そうなんですか?初めて聞きましたw」
案の定、客というよりもっと親密な立場の人たちの集まりでした。
でも、入っていっちゃうのが私wwww
同年代の女性はこの店の家主。
その息子は、私の娘と同級生でした。
60代男性は会社生活のあと、キャンピングカーで旅をしたり、時々海辺の自宅の大きなガレージでマルシェを開催するなど、人生を謳歌する暮らしをしているとか。
「SUP体験会をやったんだ〜。一緒にどう?」と誘われました。
その奥様はリラクゼーションサロンの経営者。美しくてスラリとした品のある雰囲気。この夫婦、絶対再婚同士だと思うなぁ。
そして、そのマルシェに出店しているのがこの店の店主さんという関係。
「住宅街の草むらで、コソコソとスープを売っていたのを見かけて、マルシェに呼んだんだけど、店を持ちたいっていうから、ここを紹介したんだよ」
と、60代男性が言う。
「草むらじゃないです〜、自宅のガレージの芝生です」
と、店主が言う。
なかなか面白い。
ハイボールとパスタを注文。
生パスタと牡蠣のクリーミーなパスタ。
このパスタがめちゃくちゃ美味しい!
絶対、この店流行る。
けど、webを検索しても情報は全然出てこない。
広告はこれからなんだという。
ディナーメニューの裏にはモーニングメニューやランチメニューもあるけど、まだ土曜の夜限定の試運転営業なんだそう。
「まだ、始めたばかりでいろいろ整えないといけない。お酒の種類も増やしたい」という。
へぇ~、楽しみな店をみつけちゃったなぁ。
応援団が全員帰ったあと、店主がカウンターの外に座って話相手になってくれました。
私は職業柄(職業病)の癖で、ついつい取材のようなインタビューをしてしまう。
なんで、自宅前でスープを売っていたの?ゆっくり経歴から尋ねてみた。
「経歴はリゾートホテルのレストラン厨房シェフ → アパレル関係 → スープデリの店をオープン(今ココ)」
転職したときの理由は?
「厨房シェフはハラスメントがキツかった。アパレルは自分の采配で売り上げが伸びるのが面白かった。でも、忙しすぎて家に居る時間が取れなくて、子どものそばにいたかったし、得意の料理でなにかやってみたくなった」
それで、自宅前ガレージの草むらでスープデリ? 怖くなかった?生活とか将来のこととかを聞いてみた。
「不安はありますよ、でも、なんとなくやれる気がするんです。実際、アパレルでも上手くいきましたしね」
一見、シェフからアパレルは関係ない世界のように思うけど、シェフ時代に料理だけで無く厨房の段取りなどの回し方を学び、アパレル時代に売るための戦術を学び、料理をつくることや売り上げを伸ばすことの面白さという二つの好きなことを、次のスープデリの店の出店につなげている。
なんとなくやれる気がするという言葉の裏には、ちゃんと積み上げてきた自信がある。
そして、転職を決める理由は「やりたいことをやるため」という、自分軸。
やっぱり私は保守的なんだなぁ。
私も一度は在宅ワーカーとして起業したけど、収益が伸びずに立ち消えになった。
あれから、雇われることに執着している。
子どものそばにいたいという気持ちは、私も同じ。だから私は勤務時間にこだわった。結果、非正規なんですよね💦
自分が選択した結果じゃん!
最期に収入が途絶えることに対する不安はないのか?家族もいるのにと聞いてみました。
私がずっと、雇われることから逸脱できなかった理由はこれでした。
「ダメなら、死ぬだけですよwww。そのまえに、生活レベルを下げればいい。」
この答え、今まで取材した若い人からもよく聞いた言葉。
若い人たちの働き方が、昔と変っていることはいろんな場面で実感する。
この店主の話でも、ふわふわとした新しい働き方を感じる。
時代が変る。
変わる原動力はこういう若い人たちの価値観だと思う。
私はマイホームを買って、ローンの完済まで無事に乗り切りたかったし、子どもの教育費はケチりたくなかった。
自分は我慢してでも、雇われて収入を得ることに執着して、子どものそばにいる時間は削りたくないので非正規雇用。
(やりたい仕事だったので後悔はない)
ワンオペ育児で忙しかったし、夫が居たのに頼れなくて苦しかった。
今の若い人たちは「刹那」を楽しむこと、「自分優先」というふうに見える。
でも、それはただ私と価値観が違うだけなんだと私は思う。
好きな仕事も好きな生き方も、家族との時間も大事にする若い人たちが増えているんだなぁ。
子どものそばにいたいとか、好きな仕事をしたいという点は私も同じ。
若い人のキャリアデザイン、ライフデザインは真似できないけど、共感できます。
だから、応援する人がいるんだろうなぁ。