2002年7月 健太君 高校1年生の頃

以前、俺をいじめていた不良グループ。
だが、今は俺の足元に倒れている。

俺は、このケンカに勝ったのだ。
訳がわからなかった。

でも、言える事が一つ。
あの時、一瞬勝てるって思った。

その思いのまま、相手に立ち向かったら本当にこのケンカに勝てたのだ。

大悟藍佳がゆっくりと歩いてきた。
由紀菜はまだボーっと立ち尽くしたままだった。

『おい、健太…。お前、すげぇな…。』
『どうしちゃったの?いきなり。人が変わったみたい。』
『なんか、このままじゃダメだって思ったんだ。』
『由紀菜を守りたいって。そう思った。』


『あの時と一緒だ…。』
『健太君のあの目…。以前、何度も見たことある…。』


『ん…?目?』 『どういう事?』
『うん。以前の私の仲間もね、たまに今日の健太君みたいな目になったんだ。』

『俺には、普通に見えたぞ?』
『まあ、私たちは遠くで見てたから、はっきり分からなかったけど。』



この日は、服が汚れてしまい。
大人しく帰ることになった。
俺が以前いじめられていたせいで、由紀菜たちを巻き込んでしまった。
それに対して、ものすごく罪悪感を感じてしまった。


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2002年7月 由紀菜 高校1年生の頃


健太君は誰もいない空き教室にいた。

『ずるいよ・・・。』 『私の事・・・。ずっと騙してたの?』
『いや・・・。騙してないよ。』
『入学したときは本当にお前をいじめた。それは本当だ。』
『お前が本気で嫌いだった。それも、本当だ。だから、いじめたんだ。』


先日、健太君の強さを目の当たりにした私は健太君という人物がわからなくなってしまった。
以前、健太君と喧嘩をして圧勝した大悟が、不良3人に歯が立たなかった。
そんな健太君が不良3人をいとも簡単に倒してしまった。

『でも、いじめてる時に本気で私の事殴らなかったのはなんで??』
『それは・・・。』
『手加減してたの??』
『私はいっつも本気だったよ?』
『本当に健太君をやっつけてやろうって思った。』
『今も、ケンカするたび。本気で苦しめてやろうって思う。』
『なのに・・・。』


すると、健太君のものすごいパンチが私の頭上をすり抜けて、
ものすごい音とともに、私の後ろの壁を貫いた。

『キャッ!!!』

『もう、昔の事は忘れた。』
『もう俺は昔の俺じゃないことに気付いたんだ。』

『俺の手の骨とお前の顔面の骨。』
『どっちが砕けると思う?』
『・・・。』 『損得感情なんだわ。』
『なんの、損得?』
『俺の手が砕けるのと、お前の顔面が砕けるとじゃ、』
『俺の手が砕けたほうが俺が得をするからな。』
『なんでよ!!!』 『自分が傷つくんだよ??』
『お前の顔面を砕いたら、お前の顔と心が傷つく。』
『だったら、俺の手なんかどーでもいいんだわ。』 『な?納得だろ?』
『できないよ!!』 『手が傷ついたら、もうボクシングできないよ??』
『ボクシング?別に、命かけてやってるわけじゃねえよ。』
『うそ!!すごく、楽しそうだもん!』

『由紀菜、聞いてくれ。』 『なに?』
『俺、お前に自分の事ばかり考えるなって言っただろ?』 『うん。』
『いじめられてた時に言われた。』
『でも、以前の仲間からも同じ事言われた。』
『私には意味がわからないけど。』


『お前をいじめてるときは、お前が必死に藍佳を守ろうとしてるのを見て、ムカついた。』
『よえーくせに、いっちょ前に守ろうとしてる姿が痛く見えた。』
『無謀だろ。勝てないケンカに手を出して、結局お前が傷つく。』
『そうしたら、他人がお前を心配してくれるもんな。ただのアピールに見えたんだ。』
『だから、自分の事考えるなって言ったんだ。』

『でも、今は違う。』
『今は違う意味で、お前に自分の事ばかり考えるなって言える。』
『どういう事?』


『んじゃあ、その意味を説明してやるよ。今度は黒板を思いっきり殴るぞ?』
『砕けるぞ?見てろよ?』
『やめて!!!!!!!!!』



私は健太君に抱きつき、必死に止めた。

『もう、分かった。』 『本当はわかってるの!』
『健太君が今何を言いたいか。何に悩んでたのかも全部わかる!!!』


『何が??』 『その手が砕ける瞬間は今じゃない!!』
『私の事。守って?』 『私の事、守ってくれなかったら・・・私、死んじゃう。』
『私が健太君の前で、ニコニコしていたら、健太君は嬉しいんだよね?』
『いつか、私が死にそうになったとき、その手で私を守って!!!』



すると、健太君がニコッと笑った。
『そーだな。そうするわ。』 『私なんか守る価値ないかも知れないけど・・・。』
『価値は俺が決める。』 『うん・・・。じゃあ、守って。』
『約束な。』 『うん。』


私が中学の時に一緒にいた仲間を正直超える人たちは現れないと思っていた。
しかし、なぜだろう。
今、私の目の前にいるのだ。
昨日のケンカの時に見せたあの目は、以前の仲間と一緒の目をしていた。


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2002年7月 健太君 高校1年生の頃

『ってか、いつまで、俺に抱きついてんだ?』  『は!!!お前!!!』
『お前が抱きついてきたんだからな。』 『ひええええ!!!』
『大悟におこられっぞ?』 『たしかに・・笑』 『じゃあ、内緒ね!』
『はいはい、内緒ね。』 『まぁ、藍佳ちゃんには言おうかな♪』
『てめぇ、殺すぞ・・・。』 『いや、守るっていった手前、殺すなよ・・・。』
『時と場合によるわ、ボケ!』 『やっぱり、私の扱いが雑・・・笑』
『まあ、お前は一生クリリンだからな。』 『いや、ヤムチャだし・・・。』
『・・・。どんぐりのなんちゃらだな・・・。』 『五百歩千歩だな。』
『えらい、ちがうな、その差。』 『うっるせーーー!!!』



由紀菜ありがとう。
俺、お前に生意気な事いってるけど、、、
一真たちと約束したんだ。
そして、次はねぇって、そうも言われた。

お前の彼氏は大悟だけど、
俺にもお前を守らせろよ。

絶対に裏切らねえから。
そんで、いつかアイツらと俺と一緒にお前と再会できたら、
きっとお前怒るかな?(笑)
でも、お前は幸せであるべきなんだ。そして、俺らを照らしてくれ。



ここは誰もいない空き教室。
俺と由紀菜の二人きりだった。
しかし、壁に完全に穴をあけてしまった。
タイミング悪く、巡回に来た先生が教室に入ってくるなり、穴を発見した。

『きさまら・・・。何をしてんだ・・・。』
『健太くんが、私を殴ろうとしたんですーーーー!!!!』

『ちょ??はー??』
『まぁ、健太。お前だろうな、やばんなやろうめ。』
『いやいや、まて!!!』


こっそり由紀菜の野郎は俺に耳打ちをした。

『私の事、守ってくれるんでしょ?』
『てめぇ、ミスターサタンだな。』
『はいはい、何とでもいってくださーーい。』
『先生、後処理は健太君におねがいしまーーす!!』

『きさまーーーーーーーーーー!!!!』
『はい、反省文な。お前。』

『うぉぉぉおおおおおおお!!!!!!』


由紀菜が駆け出して教室を出ていく姿を目で追った。

はぁ…。
そーいや、アイツ…校長室に何度も呼ばれた強者なんだっけ…。
俺、そういう経験ねーんだよなぁ…。(笑)


                              つづく