夫と結婚する前、まだ二十歳だった頃に二人で沖縄旅行をしたことがある。
 
当時の思い出のうち一番強烈に記憶に残っているのが、「5泊の旅行で5日とも、まったく同じ店で夕食を食べた」ことだ。
 
あれは忘れもしない、「麦酒館」という名の食事処である。
 
 
店構えはチェーン居酒屋風の「麦酒館」だが、出てくる料理が意外にも家庭的だった。
特に豆腐チャンプルーがとても美味しく感動した私たちは、旅行中の全夕食をその麦酒館でとった。
 
 
最後にはとうとう、店員さんとも顔なじみになってしまった。
 
「(お家は)お近くですか?」と聞かれ、「旅行者です。明日帰ります」と種明かししたところ大変驚かれたのは懐かしい思い出である。
 
 
せっかくの沖縄旅行で連続5日間同じ店へ行くことについて、あのとき夫はノリノリだった。そして私もノリノリだった。
 
たしか夫は他の店も事前に調べていた様子だったが、結局はオール麦酒館に落ち着いたのだ。
 
 
 
二十歳そこそこの、若い時代のお付き合いというのは、ついつい自分をかっこよく見せがち、見栄をはりがちである。
 
毎日同じ服では恥ずかしいとか、毎日同じ食事では恥ずかしいとか、そんな風に余計なことを考えがちなのが二十歳そこそこのカップルである。
 
しかし夫は、若い頃からそういう見栄とは無縁だった。
 
彼女と行く初めての沖縄旅行で、洒落っ気も何もないチェーン風居酒屋に、美味しかったとはいえ五日連続で通えてしまう。
 
「彼女の目もあるし、一日くらいはお店を変えた方が良いんじゃないか」というような余計なことを一切考えない夫の自然体が、私にはとても気楽だった。
 
 
 
そんな彼の「見栄を張らない生活スタイル」は、結婚した今でも続いている。
 
彼がすごいのは、見栄は張らないのに、彼が選ぶものはなんか違う、と周りからは一目置かれているらしい点だ。
友人たちの間で評判が良いし、何かと頼りにされている。
 
妻の私だって「見栄の張らない生活スタイル」には自信がある。
ただ、見栄を張らないそのままに、周りからも「ゆきんこには目新しいところが一つもない」と思われている節がある。
 

おっかしいなあ、何が違うのかなあと考えるうちに、もう相当の月日が流れてしまった。

 

 

 

 

 

これを書いている今日は平日、時刻は昼の一時。休日出勤の代休を取った夫が、疲れて隣で昼寝をしている。

 

周りからは一目置かれがちな夫だが、寝顔だけ見ていたらどっからどう見てもただのオッサンである。

 

初々しかった昔の自分たちがそろそろ懐かしくなるお年頃の、オッサンとオバサンである私たち。お互いに歳をとった。

 

 

麦酒館へ通い続けた沖縄旅行を楽しんだのはちょうど今頃の季節。10月だった。

なぜ覚えているかといえば、航空券を買うときに私の「バースデー割引」を使った記憶があるからだ。

 

すごいな飛行機。新幹線にはそんなもん無いぞと思いながら人生初の飛行機に乗った。

 

 

あれからもう20年、私と夫は今年39歳になり、私たちの息子は9歳になった。

 

夫は一人で数千万の住宅ローンを背負い、私は小遣い一万円で生活している。

夫は毎朝庭の植物に心の中で話しかけていて、私は毎日しょうもないブログを書いては、知らない誰かに話しかけている。

 

そういう20年後ですよと言われても、若い頃にはとてもとても信じられなかったことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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