息子が生まれて半年程が経った頃、近所の郵便局へ息子名義の口座開設に行きました。
北海道でも沖縄でも、平日でも祝日でも、都会でも田舎でも関係なく、ATM手数料無料でお金を引き出せる郵便局が、私は大好きです。
息子の口座も何の迷い無く、ゆうちょ銀行に決めました。
生後半年の息子を連れて向かった郵便局で、見知らぬおじいさんに声をかけられました。
息子は家の中ではいつも泣いていましたが、その分外出先で泣くことはほぼ無く、いつもお利口にニコニコしていました。
その様子を見て可愛いねとおじいさんが私に言ってくれた、その後に、まだ話せない私の息子にも、おじいさんは話しかけました。
「その笑顔が、きみの命を守るからね。いつも笑っていなさいね。」
息子はそれをまたニコニコしながら聞いていて、それは間違いなく、私が間に入らない、おじいさんと息子との間で直接に交わされた「会話」でした。
聞くとおじいさんは戦争を経験されていて、戦中戦後の貧しい時代を苦労して過ごした方でした。
自分に対して笑顔を見せてくれる人を、相手は攻撃しないものだ。いつも笑顔でいることで、おじいさんは自分の身を守り、厳しい時代を生き抜いてきたのだ、と私に話してくれました。
息子の為にお金を貯めようと向かった郵便局で、しかし彼の命を守るのは、お金ではなく実は息子自身の笑顔である、と知らないおじいさんに教えてもらいました。
私はあれから8年経った今も、あの言葉を鮮明に覚えています。
息子を守るのは息子の笑顔であるから、私は息子のためにお金を貯めること以上に、息子の笑顔を絶やさないような生き方をせねばならない。
大きくなった息子が今でもニコニコと笑うたびに、これで彼の命が守られるのだと、安心した気持ちになります。
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