私が時々訪れる小さな書店には、店の真ん中に大きな柱があります。
柱の周りは主に雑誌コーナーとなっているのですが、とにかくその柱というのが邪魔で邪魔で、しかし店は狭いので、柱の死角となるような場所にもところ狭しと雑誌が並べてあります。
 
明確に目的を持って、ぐっと手を伸ばさないと商品が手に取れないその柱の死角にあるもの、なんとなくでは絶対に手に取らないようなところに書店の主人があえて置いているのが、「金儲け」絡みの雑誌です。
 
株主優待、ビットコイン、スマホ投資、FIRE、失敗しない起業についてなど、このあたりの内容の雑誌がその死角には置いてあります。
同じ経済系のものでも、アエラ、日経ビジネス、ニューズウィーク日本版などは死角ではなく、すぐに手に取れる柱から離れた場所に並べられており、私はこれらの雑誌の配置について、書店主人の明らかな作為を感じています。
 
雑誌には色んな種類があります。アイドル雑誌、ファッション雑誌、コスメ雑誌、園芸や裁縫などの趣味系のものなど様々です。
世の中に数ある雑誌の中で、少々手に取りづらい場所にあっても客が必死に手を伸ばそうとするものこそが、「金儲けについての雑誌」であろうと書店の主人はそのように考え、柱の死角にあえてこれらを置いたに違いありません。
 
 
私は綺麗なものや、楽しげなものには勿論心を動かされますが、より圧倒的に心が動く、言い換えますと、一番「動揺する」のが「金目のもの」に対してです。
 
好感を持つ、嫌悪感を持つ、そのどちらもが動揺です。
決して無関心ではいられないのが「お金について」で、たとえ死角に置こうとも必死に手を伸ばす、又は蔑む目で眺めることでその雑誌の存在を認知する、そのように人を一発で動揺させる金目の雑誌こそ、柱の死角に置くにふさわしいのでしょう。
 
 
さてその日、夫と私は共にその書店におりまして、夫は園芸雑誌、私は文芸雑誌を読んでいました。
帰り際にふと主人が持ってきたのが「ゆる副業のはじめかた」という本で、アフィリエイトブログの書き方指南書でした。
 
ブログで稼ぎたければ崇められる教祖になるか、肩を組める仲間になるかだ。ゆきんこはどちらを目指すか?と言いながらこの本を見せてきた夫に、今すぐ柱の死角に戻してきなさいと私は即答しました。
そんな本、使わない。教祖も仲間も目指さない。そのように主人に言いながら、私の心は激しく動揺していました。
 
 
 

 

★ランキング参加中★

にほんブログ村 その他生活ブログ 家計管理・貯蓄(30代)へ
にほんブログ村