自分の城のような学習机を幼い私は欲しいと思っていましたが、当時の我が家には既に立派な学習机がありました。
それは大学教授の祖父がかつて使っていた、重厚な木製の事務机です。
手元には引き出しがあり、足元にはワゴンがあり、そういうところは普通の学習机と同じでした。よくある学習机との一見した違いは目の前の本棚が無いこととくらいです。
しかし細かいところで、たとえば子ども用の学習机にありがちな無駄なメカチックさ…棚をあれこれ動かせたり、見えないところにポケットがあったり、デスクライト用のコンセントが付いていたりというような、そんな余計な飾りが一切無いのが、祖父の机の特徴でした。
大人になった今見るとその趣ある机の魅力も分かりますが、昔の私は趣よりも「ごちゃごちゃと色々付いた机」が欲しいと思っていました。
しかし、そう裕福では無かった我が家でしたから、私も父に新しい机をあらためてねだることはしませんでした。
机が欲しい。
おじいちゃんのがあるよ。あれを使ったら。
分かった、じゃあそれで。
そんな僅かな会話で全てが終わったと記憶しています。
造り付けのおかげで新しく家具を買わなくて良いし、処分にも悩まされないという金銭的なメリットは確かにありました。
しかし「自分の学習机が欲しい」という欲求を満たすすべはもはや永久に無くなりました。
子どものためか自分のためか分かりませんが私は、子ども部屋にカウンターなんて付けなければ良かったと思っています。
どうか息子は同じ思いをしませんようにと、イオンの学習机コーナーを通る時は彼が興味を示さぬよう、いつも足早に通り過ぎています。
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