およそ7年前、私がメルカリを知ったきっかけは「寝ない子育児」が始まったことでした。

 

私の息子はとにかく寝ない子でした。当時の育児日記を見ると、24時間の内22時間は起きている、そんな育児をしていました。子を産む前は「3時間おきに授乳する」と聞いていたのに、産まれてみれば「30分おきに授乳」していました。極度の疲労で蕁麻疹が出現した私の脚は搔きむしってボロボロになり、42キロだった体重が37キロまで落ちました。

 

辛い育児の中で、唯一の楽しみが授乳時間でした。子に授乳することが楽しみなのではありません。授乳する間だけは、片手にスマホでネットを見ることができました。ネットサーフィンが当時唯一の息抜きだったのです。

 

「授乳中は赤ちゃんの目を見てあげましょう」。そんなこと、今乳児を育てているママたちに口が裂けても言えません。私は授乳中、スマホだけを見ていました。スマホの充電が切れればテレビをつけました。

寝ない子ワンオペ育児の辛さは想像を絶します。主人は海外出張で一か月以上家を空けることもありました。近くに頼れる祖父母も居ませんでした。そういう育児を、私はしてきました。

 

授乳時間のネットサーフィンで私は「メルカリ」を発見しました。そこには私の大好きなコスメが沢山並んでいました。

廃盤になったスックのアイシャドウ、限定品でほとんど店頭に並ばないシャネルの口紅、高額で手が届かなかったクレドポーボーテのファンデーション。それらがすべて、手の届く値段で並んでいました。ただし全て、中古品でした。

 

コスメの出品はヤフオクでも見ましたが、オークションは状態次第で値が上がります。メルカリはそれがありません。ワンコインでもいいから今すぐ手放してすっきりしたい、そんな私と同世代の女性たちの顔が、画面の向こうに見えた気がしました。

 

中古のコスメなど、興味の無い人にとってはゴミ以外のなにものでも無いでしょう。私も元来潔癖のところがあり、人が一度手にした化粧品を使うのにも嫌悪感がありましたが、メルカリ画面を見続けるうちにいつの間にか自分が「売る側」となり、やがて「買う側」へもなっていきました。取引を重ねるうちに中古コスメへの抵抗感がグッと下がったのです。

メルカリは早い者勝ちの世界です。2万円するファンデーションが、未使用開封のみの状態で2千円で出品された、まさにそのタイミングで同時に「購入」ボタンを押さないと、格安商品は手に入りません。いつそんなお得なものが出品されるか分からない、焦燥感から私は授乳中、メルカリ画面に張り付くようになりました。

 

当時のメルカリ中毒、今思えば育児ストレスが大きかったと思います。しかし逐一変化するメルカリ画面を負うことで、私は育児の辛さからひと時でも解放されたのは確かです。他人と話すことのないワンオペ生活の中で、メルカリ上でコメントのやり取りをするのがとても楽しく思えました。当時購入した中古のコスメたちを私はゴミとは思いません。あれは、私の辛かった気持ちを癒してくれた、お金には代えられない大切なものでした。

 

 

 

 

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