「人の縁を簡単に切ってはいけない。縁を大事にしなさい」

幼い頃、祖父母からよく聞かされた言葉だ。


私は生まれも育ちも京都だ。
土地柄もあるが、外を歩けば多種多様な人間が行き交う。

当たり前だが、すれ違う人々は知らない人ばかり。
こんなに人がいる中で、何かの縁があって人と人が出会い、仲良くなったり、恋に落ちたりする。


「人の縁は大事にしなさい」


幼い頃のその言葉が、大人になった今でもたまにフラッシュバックする。


どんなに嫌いな人でも、受け入れられない人でも、何かの縁があって巡り会ったんだと思えば、この出会いも無駄じゃない。なんて前向きに思える気がした。


それまで別々の人生を歩んできた他人同士が、ふとしたきっかけで出会うだけでも素晴らしい事ではあるが、お互いに恋をして相思相愛となり交際に至るなんて、なんて素敵な縁の巡り合わせだろう。



私と元カレの出会いは、ありきたりな合コンだった。
男女に一人ずつ欠員が出て、当日になって急遽召集がかかり現場へ駆けつけたのが私と彼だった。


その日に限ってたまたま定時上がりだった私と、

その日に限って家に直帰せずフラフラ飲み歩こうとしていた彼。

ほぼ同じタイミングで遅れてお店に着き、余っていた端の席に座る事で必然的に向かい合わせになった私たち。

趣味(カメラとテニス)と好きなアーティストが同じだった。少しマニアックなアーティストだったので、お互い初めてファンだと言う人に出会って、とても驚いた。
歳は11歳違ったけれど、誕生月も同じ。
こういうのを俗に言う「運命の出会い」って言うのかな。なんて思った。


彼とはすぐに意気投合し、1ヶ月後には交際することになった。トントン拍子だった。


すごい巡り合わせだな。
この人は私の運命の人なのかな。

って浮かれていた。

今までは11も離れていたら、それだけで即恋愛対象外だったが、この人に限り年齢差が全く気にならなかった。