楽しんで小説書こう!

楽しんで小説書こう!

主に短編小説を書いていこうと思います

Amebaでブログを始めよう!
ちょっと昔に書いたので、オチが今ではちと厳しいお話


 彼女は占いが大好きだ。どのくらい好きかというと、とある携帯サイトで数時間おきに更新される〈あなたの今の運勢〉とやらのコメントを基盤にして生きているほどだ。ほんの二十字足らずの文章に従い、彼女はラッキーカラーの服を着たり、デートコースを決めたり、食事のメニューを選んだりする。
 
 彼女によれば、僕との出会いも占いが導き出した結果らしい。初めてのデートで、僕はそのことを明かされていた。

「飲み会や合コンなどで正面に座った人が吉、ってあったのよ」

 つまり、そうでなければ僕のような冴えない男に声などかけなかったというわけだ。
 
 高嶺の花という印象を、僕は彼女に対して今でも強く抱いている。彼女には僕程度の遊び相手ならいくらでもいるし、本命だと噂されている男も知っている。高学歴で、金も地位もあるくせに、ルックスもスタイルも服のセンスもさほど悪くはないという羨ましいかぎりの男だ。なぜその男と結婚しないのか、愚かにも訊いたことがある。

「ラッキーイベントに、結婚の2文字が出ないから」

 それが答えだった。ならばさしずめ僕は、ラッキーアイテムの一つといったところか。今日彼女から連絡があったのも、僕の名前が幸運を呼ぶイニシャルと一致したためで、僕らがバーにいるのはそのおかげなのだ。

「今夜のラッキーナンバーは3ですって。この数字が使えるもの、あなた知らない?」

 アルコールでほんのりと目の周りを赤く染めた彼女はそう言うと、携帯電話のディスプレイから視線を僕に移した。

 地下にあるこのバーの中では、携帯電話の電波がいっさい届かないことを僕は知っている。
 そして僕のアパートの部屋番号は、3号室である。

 はたして彼女はそのことを知っているのだろうかと、僕は頭の中が真っ白になった。