今回は神話を少し離れて月の模様についてです。

月の模様はむかしから世界中でウサギに見えたり、女の人の横顔に見えたり、蟹に見えたり…

いろいろな国でいろいろな模様に見えると云われています。

日本ではほとんどの人がウサギが餅をついている模様と聞いたり、見えたりするかと思います。

同じ日本でも少し見え方が違う地域があります。

今回はそんな民話からピックアップ。



桶を担ぐアカリヤザガマ

むかしむかし、沖縄の宮古島に初めて人間が住むようになった頃のお話です。
美しい心の持ち主であられた、お天道様とお月さまは、下界の人間がいつまでも長生きできるようにしてやろうと思い、アカリヤザガマという怪物を呼び出すと、


『こちらの桶には変若水、もう一つの桶には死水が入っています。

この変若水を人間に浴びせて世が幾度変わっても生まれ変われるように長命を持たせなさい。
そして蛇には肝心がないので死水を浴びせなさい。』

と命じました。
こうしてアカリヤザガマは二つの桶を天秤棒で担ぐと地上への長い旅を始めました。

ところが…
ちょっと一休みと思って草むらに臥せて体を休めようと、担いでいた桶を傍らに置き、道端で小便をしていた時、一匹の大蛇が忍び寄ってきて、変若水を浴びてしまいました。
それに気づいたアカリヤザガマは慌てて大蛇を追い払いましたが、変若水は大蛇が思いっきり浴びてしまっています。


『いやはや、これはなんとしよう。
まさか蛇の浴び残しを人間に浴びせるわけにもいかないし…
しかたない、死水を人間に浴びせよう』

としかたなく死水の方を人間に浴びせてアカリヤザガマは天へと戻って行きました。
そして変若水と死水のいきさつをお天道様とお月さまにお話をしました。

いきさつを聞いたお天道様とお月さまはひどくご立腹され、


『長命や美しさを守ろうと思っていましたが、お前のために心づくしが台無しになってしまった。
お前の人間に対する罪は償いきれるものではない。
人間のある限りその桶を担いで永久に立っていろ』


こうして罰として永久に桶を担いで立っているようアカリヤザガマに命じます。月の中に見えるのは、この桶を担いだアカリヤザガマの姿だと言われています。


人間が蛇のように気が早かったら、いつまでも長命でいられたのに、死水を浴びてしまった人間は死んでいかなければならなくなりました。
そして若変水を浴びた蛇は終始脱皮を繰り返し、生まれ変わり長生きしているのです。
お月さまは人間に不死を与えてあげようとしましたが、神様は永遠の命でなくとも多少は若返りさせてあげようとお思いになられました。
その時から毎年節祭の祭日に向かう夜に大空から若水を送るようになりました。
今に至るまで祭日の第一日の黎明に井戸より水を汲み、若水と呼び家族全員が水浴びをする習慣があるそうです。

蛇というのはどうも悪者役が多いですね。

旧約聖書の失楽園でも禁断の果実(リンゴ)を人間に食べるように勧めたのも蛇ですし(;´▽`A``