前回太陽神の子パエトンの話を書きましたが、次はヘリオスと同一視されているアポロンについてです。



アポロンと双子の妹アルテミスの誕生

アポロンゼウス(もうお馴染になってきてますね)とレトとの間に生まれた子どもで、月と狩りの女神アルテミスの双子の兄妹です。
ゼウス


『レトから生まれてくる子は天空の女王たる女神ヘラの子どもたちの誰よりも輝かしい存在となるであろう』


と予言したものですから、ヘラはひどく嫉妬し、レトに対し、


『今まで一度でも陽の光の当たったことのない場所でしか出産することができないように』


と呪いをかけてしまいます。
しかしゼウスもすごいことを言いますよね…自分の妻の産んだ子より光り輝くって予言しちゃうんですから…ゼウスは後に木星で書きますが、ひどく浮気の激しい神です。

今までに一度も陽の光を浴びたことのない場所を探す破目になるのですが、一度も陽の光を浴びたことのない大地など当然あるはずもありません。そこでゼウスポセイドンという説もあります)は海底深くから浮島を引き上げて、海面に固定しました。今まで深い海底にあったのですから当然その浮島は陽の光を浴びたことはありません。
レトはようやくここでお産の準備をすることができます。

しかしヘラの妨害はまだまだ続きます。
次はお産の女神エイレイテュイアをオリンポス山頂の金色の雲の中に閉じ込め、レトの陣痛を長引かせようとしたのです。
このためレトは九日九晩、尋常ならぬお産の痛みに耐えなければなりませんでした。
これを見かねた他の神々は虹の女神エリスを天上に遣わし、女神ヘラに気づかれないように連れ出し、ようやくアポロンアルテミスの二人は生まれる事が出来ました。

さてさて、ここであげたアポロンですが、実はどういうわけか恋愛に関してはなぜか実を結ばせることができないのが実は特徴だったりします。
その中のお話をちょこっとだけ紹介してみます。


アポロンの届かぬ恋

ある日、エロス(金星でアフロディーテの子どもとちょっと触れましたが、実はギリシャ神話で一番最初に生まれた神とされています)が弓矢で遊んでいると、アポロンが、


『子どもが弓矢をおもちゃにしては危ないだろう』


とからかうようにいいます。
これに対しエロスは怒り、ある日仕返しをします。
エロスは愛の神です。
エロスは金の矢と鉛の矢の2種類の矢を持っていました。
金の矢は射抜かれると見た人を好きになってしまう矢で、鉛の矢は見た人を嫌いになってしまうと言われています。
エロスは金の矢をアポロンに射抜き、鉛の矢を川の神の娘ダプネに射かけます。
二本の矢が、二人の胸に刺さった瞬間、アポロンダプネに一目ぼれをし、一方のダプネアポロンの事を嫌いな存在となってしまいます。
一目ぼれしたアポロンダプネを追いかけますが、一方のダプネアポロンから必死に逃げます。
しかし、ダプネは逃げ切れないと思い、父である川の神に


『どうか私の姿を逃げなくてもいいように別の姿に変えて下さい』


と頼みこみます。
アポロンダプネに追いつき捕まえる事が出来たその時、ダプネは姿を変えていき、月桂樹へと姿を変えていきました。
あと一歩のところで手が届くところで月桂樹に変えられてしまったダプネの姿を見たアポロンは嘆き悲しみました。
そしてアポロンはその愛の永遠の証として、月桂樹の枝から月桂冠を作り、永遠に身につけています。



この物語は多くの芸術作品があります。

☆彫刻では☆
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作の『アポロンとダフネ』
ベルニーニはイタリアの彫刻家、建築家、画家で
『ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた』
と言われたバロック芸術の巨匠です。
またこの作品は当時のローマ中の人々がこの作品を見るために押し寄せ、口々に「これは奇跡だ」と語ったと云われています。


☆オペラでは☆
ヤコポ・ペーリ作曲『ダフネ』でこの曲は世界初のオペラとされています。


☆絵画では☆
アントニオ・デル・ポッライオーロ作『アポロとダフネ』
アントニオの作品にはほかに『ヘラクレスとヒュドラ』などがあります。
この物語についてはヘラクレスの10(あとから2個増えて12になります)の仕事の第2の仕事のお話で、後にかに座で紹介しようかと思います。

他にもまだまだこのお話を題材にした曲や絵画は数多くあります。