ええ、目的は田中圭ですが何か(笑)?

というわけで観に来ました、田中圭を。
というより栗山さん演出の田中圭をというのが正解か。

「チャイメリカ」に次いで2度目のタッグですがまず思ったのはこの役を何故圭くんにあてようと思ったのか(笑)。
ぶっちゃけめっちゃ地味で渋い作品で、役も枯れたおじさんです。
しかしながら今まで観たことのない役柄であり、こういう引き出しもあったのかと思うくらいの演技力に痺れました。
これを見せたかったのね、栗山さん。

夏の長崎が舞台。
勤めていた造船所は倒産、一人息子を亡くした後、妻は家を出ていった。
妹の借金の保証人にもなっていたが何をする気力もないまま生きている主人公の元に妹から押し付けるように娘を預かることになり、彼女と二人で暮らすことに…という話。

観たことないけど、文学座のアトリエ公演を観に来たような感じでした。
静謐で終始ヒリヒリした感覚がありました。
登場人物それぞれが抱えるものがあり、実際に話している言葉以上に彼らがどのように感じているのかがひしひしと伝わる、そういう作品でした。
圭くん演じる主人公は諦念というよりもう何も感じなくなってしまっている。
ただ、姪の優子と暮らしている時だけは少し心動かされたんじゃないかと思わせる。
最後、妻が自分の元同僚と一緒になって町を出て行く時に、「自分には本当に子供がいたんだろうか」と言い出すところは本当にぞくっとしました。
その時点で、次の勤め先で誤って指を切り落としてしまい何もかもなくなっており、すべてをもうなかったことにしたかったのか。
町を出ていこうとする妻は過去は過去として抱えながらも気持ちが晴れ晴れとしているのと対照的なのが切ない。
妻役の西田尚美さんがまた巧いんです。
悪い人ではないし、主人公に対して情は残ってはいるんですが強かなんですよね。
そして、姪役の山田杏奈ちゃんは初舞台とは思えないくらい堂々としていました。
映像でも感じていたましたが目がいい。
思春期のじれったさ、母親に振り回されながら大人にならなければいけないけれどなり切れない、そういった感情を瑞々しく演じていて存在感がありました。
そんな二人の他、色んな人物が登場するのですがやはり圭くんは受けの芝居が抜群に巧いなと感じました。
行間をきちんと読み込んでセリフにない部分を演技に落とし込んでいるんですよね。
そこがすごい。

観る前は予習していないので、夏の長崎という設定から時代設定は戦争直後なのかと勝手に勘違いしていました。
登場人物たちは携帯電話を持っていなくて、連絡は固定電話。
しかし、優子はコンビニでバイトするという設定なのでそこまで昔ではない。
プログラムを読んだら1998年の設定なのですね。
それだと確かに携帯電話はまだ持っていない人も多かった筈。
ただ、まだ被爆地であるという点、まだ戦争の影は残っているところを感じさせる空気感はありました。

2時間休憩なしなので体もつかな、また退屈しないかなと思いましたが、これは休憩入れたらダレるかもで正解でした。

終わってからじわじわくる作品でした。
また、別の作品でも栗山さんと組んで欲しいなと思いました。