2020年観劇好きな私が劇場に行けたのは片手で数えるくらい。
今までだったら劇場に行かないと観られなかった舞台が配信で観られるのは嬉しかったけどやはり物足りない日々でした。
そんな今年の秋に思い切りはまってしまったものがありました。
それはドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」通称「チェリまほ」。
この通称がうまいなと思います。
実際いまだに私、正式タイトルが口に出せない(笑)。
タイトル通り、童貞のまま30歳を迎えた主人公が突然、人の心の声が聞こえてしまう魔法を手に入れてしまったという話です。
そしてふとしたきっかけで仕事ができる会社のエースで誰もが羨むイケメン同期社員が自分に惚れているとわかってしまうことから巻き起こるラブコメディー。
BL漫画が原作ということでしたが、私はそもそもBLを読まないので知らなかったです。
このドラマを観たきっかけは初回を観た人の熱い感想がTLに流れてきたことから。
そして初回がまるまるYouTubeで配信(それも公式チャンネルで)しているということで何気なく観たところ面白くてはまってしまい久しぶりに繰り返して観るドラマに出会ってしまいました。
どこから見てももてなさそうなもっさりした主人公安達にどこから見ても完璧で非の打ちどころない二次元から出てきたような美しい同僚黒沢が妄想しているというギャップ、そしてその妄想上の安達がびっくりするくらい別人のようなきらきらとした可愛さ。
初回ではまずここではまりました。
そして全話通じていちばん好きなシーンである、黒沢が安達にマフラーをかけてあげるシーン。
「俺なんて」と自己評価低い安達に対して、彼のいいところを心の声で列挙している黒沢、そしてそんな黒沢の心の声に泣きそうになる安達。
この時に無意識ながら安達は黒沢に恋したのでしょうね。
演じる赤楚くんもインタビューですべての始まりのシーンでいちばん好きだと語っていたのがわかります。
そんな1話で心つかまれて2話からは録画しました。
何せ25時開始ですもの、起きてられないわと言いながらリアタイにこだわりはじめたのはいつからだろう。
終わった後も何度も見て、朝起きてからも見てと繰り返し金曜日は寝不足という日が続きました(笑)。
原作は、無料公開部分をドラマ途中から読み始めたのですが面白かったので有料部分も読みたいと思い、5巻一気に電子書籍で購入。BL漫画買ったの初めてだよ(笑)。
原作がまだ完結していない、5巻の時点ではまだキスまでなのでどのようにドラマでは終わらせるのかとずっと気になりながら観ていました。
全話通して観た感想は原作部分、また原作を踏襲して膨らました部分に関してはとても丁寧に描かれていたと思いますが、オリジナル部分はやはり弱いと感じました。
心にぐっときたシーンやセリフはほとんど原作にあるところだったから。
7話までが「つきあうまで」で、ほぼ原作を踏襲しているのですが、設定が微妙に変わっていてもエピソードの順番を色々入れ替えていても不自然ではなく逆に巧くつなげていたと思います。そしてセクハラアルハラパワハラなどハラスメントの問題も然り。「童貞だろう?」とからかう先輩に「それ、セクハラですよ」と言える安達。
また、「王様ゲーム」のところで「時代錯誤」とばっさり斬り捨てる六角の存在が小気味よかったです。
7話では、これは原作にもあるのですが女性から男性へのセクハラ(パワハラ含む)を描いているのも斬新だなと感じました。
他にも2話での安達が自分のことを好きだと知った黒沢に誘われて泊まることになった時に「襲われるかも」「いや、それは黒沢に失礼だ」というモノローグはいろいろ配慮されていると思いましたし、4話での「恋愛には興味ないけれど興味あるふりしないと普通に見られない」藤崎さん(アセクシュアルと断言されてはいない)の生きづらさなど今まであまり描かれていない部分を入れながらも、基本は「原作以上に様子のおかしいイケメン」(原作者談)に振り回されてあたふたするコメディ部分と、「同期でいい」「好きになってごめん」という切なさに心動かされるラブ部分のバランスが絶妙で特に7話まではどのシーンを切り取っても何度も見てしまう面白さがありました。
観ていていちばん楽しかったのは2話です。
あのお泊りシーンはどの部分もおかしくて何度も見てしまうし(「眼福間違いな(ここで切られるのが絶妙w)」「もったいない!」「なんか、うん植物」「ごめん、寝たふりです」の言い方が絶妙に面白い)、後半の「そばにいられるなら同期でいい」という切なさのバランスがいちばんよくて何度も見てしまいます。
そしておそらく満場一致だろうがいちばん傑作なのは7話。
唯一ほとんど黒沢視点の話であり、原作者の方が「今まで作者である自分がいちばん黒沢のことを理解していると思っていたが町田さんはそれ以上だった」と絶賛するくらい黒沢の心情が丁寧に描かれている話だったと思います。
この回では前述の女性から男性へのパワハラ、そして見た目で判断されるルッキズムという問題も包含しています。
もちろん本人ではないですし、このドラマで初めてちゃんと演技を見たわけですのでわからないですけれど、黒沢と同じくおそらく「顔だけ」と揶揄されたことがあるのではないかと思います。
そして、ルックスでちやほやされるのを悩みだと言ったら嫌味になってしまうという悩みは、あれだけ完璧に整ったルックスなのですから演者自身もあるだろうと。
だからこそ、よりみんなが求めている自分でいなければ、完璧でなければというのは実は町田くん自身のインタビューでも彷彿させるところがありました。
そしてその完璧さが崩れたところを「なんかいいな」とナチュラルに言ってくれる安達に心惹かれるというのが説得力あり、心うたれました。
この夜の公園のシーンは本当に絵になるくらい美しい。
また、このシーンがクランクアップだったというのが非常にエモいなと思いました。
時系列では最初なシーンが最後に撮影という点で。
それから過去を回想する黒沢から現実の安達へのモノローグにつなげる編集が巧い。
安達が下を向いて今まで黒沢に優しくしてもらったことを思い出しながら「全部全部離れない!」と上げる顔が本当に美しい。
安達からの告白で好きなのは「俺も黒沢が好きだ」ではなく、「俺、黒沢が好きだ」というところ。
「も」じゃないのが安達の自主性を感じる。
そして原作でもいちばん好きだった「俺はこいつ(原作では「黒沢」)の心に触れるために魔法使いになったのかもしれない」というセリフが本当に好きだったので全話観て思ったのはここのセリフも後半生かせなかったのかな。
7話はとにかく本当に全部のシーンが見どころでいちばん良かったのはメインキャストのうち安達と黒沢だけしか出てこなかったところ。
普通の男女の恋愛ドラマだったら意外に2人だけしか出ないというのがないかも。
だからより純度の高さを感じた。
いちばん官能的だったのは6話。
ベッドドン、壁ぎぎぎー(観た人しかわからん表現w)。
そして、寝ている安達の頬を触ろうとして触れなくて気持ち落ち着かせようとして「何やってるんだ、俺」と悶えるのれん越しの黒沢。
最後の「俺、お前のこと好きなんだ」と震えながらの告白。どれもこれもどきどきするくらい官能的でした。
さて、8話からは付き合いだしてからの話でほぼオリジナル。
イチャイチャが本当に楽しくて(「デートの練習」未公開動画と黒沢ポエムと朝の撮影会は最高だw)好きなシーンも多いのですが、最終話まで観ると8~10話はもう少しコンパクトに2話分くらいにまとめて、10話でコンペの話を終わらせて11話からじっくりと2人の話を描いてほしかったと感じました。
それくらい最終回は駆け足で観ている方の気持ちがついていかなかった。
本来なら安達に自信を持たせるためのコンペが逆に魔法を使ったことにより自己嫌悪+どん底までに自信をなくさせるものになったのは好き嫌いあれど巧い脚本だなと思います。
ただ、あそこまで自己肯定感がゼロどころかマイナスになった安達をひきあげるには、柘植や藤崎さんの後押しでは弱いと思うのです。
11話はしんどい話だったけれども、特に後半の二人芝居は見入ってしまいました。
久しぶりに1本の上質な舞台を観ているかのような生っぽい感覚を味わいました。
このシーン、数えたら8分半あるのです。
ドラマ全編通してキャリアのある町田くんの演技に赤楚くんが引っ張られている感なのですが、このシーンだけは赤楚くんの演技に町田くんが引きずられているのが印象的でした。
キス待ちから黒沢をつきとばしてしまうシーンでの心の声の掛け合いと赤楚くんの瞳の細かい演技がすごくて何度も見返してしまう。
「ここでやめておこうか」と震えながら言う町田くんとそのセリフを受けて赤楚くんが流す一粒の涙が大粒で観ている方も震えた。
全身からお互いがお互いのことを「大好きだ」というのが伝わってくる演技が凄まじかったように思います。
ハッピーエンドなのはわかっていたけれど、この11話を受けて最終回どのようになるのかと期待しかなかったのですが、最終回だけが残念でした。
まずは、黒沢が全編通してあんなに「安達の初めて」にこだわっていたのにそれが全く描かれていなかったところ。
私もあんまり説明しすぎる話は好きじゃないです、「余白」は大事。
でも、肝になるところを省略することは「余白」じゃない。
2話の安達のパジャマ姿を見てフリーズした黒沢の心の声を聞かせないのは「余白」、9話でナチュラルに一緒に朝ごはん食べているけどえっお泊りしたの?いつの間に?と思わせるのも「余白」(笑)。
ただ、ファーストキスを描かないのは「余白」じゃない、それは「怠慢」だ。
作り手はベタなのを避けたのでしょうか?
ベタでもここはアントンビルでキスでしょう?実際キスするタイミングはいくらでもあった。
だからえっここでしないの?あれここでもしないの?結局しないんかーい!とずっこけましたよ(苦笑)。
エレベーターから始まりエレベーターで終わる、ラストのエレベーターキスは映画のようで素敵でしたよ。
それは認める。
ただ、そのラストシーンを見せたいという作り手の想いが強すぎたように思います。
そして、安達が手馴れすぎてた(笑)。何、あの色気?
ファーストキスでドキドキする安達(と黒沢)を見たかったのです。
このシーンで唇がくっついていたとしてもファーストキスまでの過程が省かれていたらやはりカタルシスはなかったな。
そしてもう一つ思ったのは登場人物のキャラがぶれすぎだということ。
特に感じたのは藤崎さん。あそこまで2人に介入してくるとは思わなかった。
介入しないと花火につながらないからかもしれないけれど、
ただでさえ短い時間なのだから藤崎さんパート長いわと思った。
それを言ったら黒沢が藤崎さんに相談するのも違和感あったのだけど。
黒沢はなぜ藤崎さんに相談したのか、今までそこまで仲良くなかったですし、
7年間ずっと秘めていたのにペラペラしゃべっているのが違和感ありすぎ。
今まで丁寧に登場人物の心情を描いていたのに、作り手側の「このエピソードをやりたい」「これがやりたい」というのが優先されていて登場人物が駒のように感じました。
だからか、屋上の告白シーンも7話の告白シーンのように胸に迫るものがなかったのです。
周りの人たちがこれだけ2人のことを想ってくれているというのを表現したかったんだろうけど、肝心のメイン2人をちゃんと描いてくれないと本末転倒だろうと思うのです。
そして安達はキスだけであんなにビビっていたのに、一気に進んでいたのに違和感。
「黒沢がいれば魔法なんて要らない」と屋上で話していたけれどその境地に至るまでが弱いなと思った。
そっか、いちばん不満なのは屋上のシーンなのか。
あそこをちゃんと描いてくれていたらそこまで消化不良にならなかったのに。
朝チュンがランニングシャツであろうとも(何回も観たらあれはあれで生々しいなと思えるようになったが、初めてのはずの安達が余裕すぎるw)。
いちばんキャラがぶれていなかったのは柘植と六角だったと思います。
柘植が安達の背中を押すところは好きでした。独特の言い回しだけども本当に安達を大事に思っているところが伝わっていい友達だなと素直に感じられた。
六角は藤崎さんに花火を誘われても「気があるな」と全く思ってなくてただただ花火を楽しんでいるところがすごく好き(笑)。
いい意味で空気をよめないキャラがすごくよかったです。
原作の「魔法が黒沢にわかってからのキス」と「安達からのキスで始まるベッドイン」が本当に素敵だっただけに残念でした。
同じシチュエーションじゃなくてももっと素敵なシーンを用意していたら、この2人ならもっと素敵に演じられただろうに残念です。
魔法がなくなってしまったので、おそらく続編はないだろうからただただもったいないな。
正直初見では話が進むにつれてどんどん冷めていく自分にびっくりしました。
これが「魔法が解ける」ということかなとも思った。
何回か見直して素敵だなと感じたところはあったけれども、今まで観てきた時の高揚感がもう味わえないと思ったら残念で仕方なかったです。
そのあと観たスピンオフは楽しかったですけどね、こういうのを求めていたのだと感じました。
続編は無理でもスピンオフとかスペシャルだったらできないかな、観たいわ。
魔法を安達よりも使いこなす黒沢も観たかった(笑)。
Blu-rayのメイキングは30分じゃ足りないので300分にしましよう。
「あだちぃ」「くろさわぁ」ごっこも見たいし、撮影でもなんでもないのに壁ドンされる赤楚くんやカットがかかってもウィンクが止まらない町田くんや、ペットボトルチャレンジで抱き合っている姿やら、バスローブシーンやら、遊園地デート(の練習)動画すべてとか全部見せてくれ(笑)!
ラストシーンはエレベーターが閉まるタイミングと合わせて何テイクもやっているはずだからそれも全部全部全部(笑)!
ただ色々書きましたが、この3ヶ月すごく楽しかった。
本当にこれほど心動かされたのは久しぶりで、素敵な優しい作品だったと思います。
公式の「嬉しいお知らせ」更新も色々オフショット満載で楽しかった。
ありがとうございます。
最後に主役のお二人について。
特撮は全くわからないので赤楚くんは「美食探偵」のギャルソン役で初めて知りました。
本編では特に印象になかったのですが、裏メニュー編で(本当はHuluだけだったのが撮影ストップしたからストックないので裏メニュー編も地上波放送された)全編通してもいちばんかわいそうな殺され方をしていたのが印象的でした。
ただ、初回観た時はこの時と同じ人?とも思いました。
なんといっても初回の現実と妄想の安達の違いにまずはびっくり。
そして現実の安達が黒沢に愛され自信を持ち始めるとだんだん妄想の安達を超えるくらいに可愛くなってきたのがすごい。
もちろんもともと愛らしいのですが「可愛さ」を演技で表現できるところ、生き生きとした目の演技、そしてどういった顔にもなれるのが役者としての強みかとも思います。
左と右の顔の作りが違うと指摘されていた人がいたのでなるほどとも思った。
あとはコメディの間合いが巧い、「近いな」とか「寝たふりです」とか。
まだ拙い部分(特にセリフ回しなど)はあるけれども、憑依した時の爆発力とかすごく感じるのでこれからが楽しみです。
町田くんについては今更ながら、こんな完璧な美貌の俳優を今まで知らなかったなんて不覚だ、と思いましたがよくよく考えると映像作品を私がほとんど見ていなかったからです。
EXILEに興味がなかったというのもあるけれど。
顔だけじゃなく演技力もあり、品があり、真面目なだけでなく茶目っ気もあると最強やん。
なんでこれまでブレイクしてなかったのか不思議なくらい。
過去作品を調べると意外に正統派な相手役がそんなにないのは、あまりにも端正すぎるからなのでしょうか。
そして結構様子のおかしい役も多い(笑)。
瞳と吐息、そして全身で感情を表現する様がいちばんすごいなと感じたのは、6話最後から7話ですね。
全編何度見ても色々発見するくらい繊細な演技に震えるのですが、安達へ告白してから(これは息遣いが聞こえる6話最後のテイクがいい)立ち去った後安達から見えなくなったところで大きく息を吐くという流れがあまりにも繊細で美しくて震える。
それでいて黒沢本人は笑わせる気がないのにみんなが笑ってしまうという「様子のおかしさ」は天才的ですね。
前述したとおり、お二人のことはほとんど知らなかったのでインタビューを読んだりしましたが、どちらも演技に対して本当に真摯であり、知的で穏やかなところが相性良かったのではないのかなと思いました。
敢えて距離を縮める努力はされていたかと思いますが、見ていても無理ない。
インスタライブの時もスピンオフの副音声もほのぼのとしていて癒されました。
同い年の役だけど実年齢が4つ離れているというのも意外にやりやすかったのかもしれません。知れば知るほど人間的にも魅力を感じたので写真集買ってしまった(笑)。
これから過去作品もさかのぼって見たいし、また新しい作品も楽しみです。
購入したもの。
1話のマフラー
写真集(笑)