初演が評判良かったらしい、演出がKERAさんというだけで決めました。
ヒロインが奥様の緒川たまきさんというのもあったけど。
なので活動写真の話なのかというくらいで全く予習はしていきませんでしたが、幕間でパンフを読むとほんのりネタバレが(笑)。
やはりパンフは終わってから観るものだな。
舞台は昭和11年ある小さな島にあるたった1つしかない映画館。
常連客であるハルコは映画を観ることだけが唯一の楽しみで何度も同じ映画を繰り返して観ている。
そんなある日、いつものごとく何度も観ている娯楽時代劇の中から映画の登場人物「寅蔵」がスクリーンから飛び出してハルコを誘う。
映画の中は大混乱、観客も大騒ぎ。それに加えて「寅蔵」を演じている高助が島へロケに訪れていたため自分の分身を探す羽目に。
さてどうなる?という話。
ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」という映画の骨格をそのまま借りたものということなのでこの映画を知っていたら結末はわかったのかな。
甘いハッピーエンドではなくほろ苦いラストでしたが、夢は夢、現実は現実。
でも甘い夢を見られたからこそ現実に立ち向かえるんだという前向きな終わり方だったと思います。
大人のファンタジーコメディ。しゃれているけれども大笑いもしてきゅんともする。
映画の世界と現実の世界が映像を使って交叉するのが本当に巧い。
巧いといえば、オープニング含めてところどころ使われるプロジェクションマッピングが絶妙。
映画を観ているか演劇を観ているかわからなくなることもありましたが、演劇ならではの表現だったと思います。
場面の転換も役者たちがやっているのですが、その転換の方法もこれまたしゃれている。
緒川さん以外はみんな何役もやっているのですがそれがまた楽しかったです。
登場人物がみんな本当に愛しい。
ハルコのDV夫電二郎や、鼻持ちならないスター俳優嵐山でさえもどこか憎めない可愛げがある。
そしてとにかくハルコのキャラクターが濃い(笑)。
下手にやるとこのハルコ本当にうざいだけになりそうなのだが、そうならないのは緒川さんの個性だからか。
全員同じキャストという奇跡的な再演だということだが、どのキャラクターも欠かせないけれど緒川さんありきの舞台だなと感じた。
妻夫木くんは高助と寅蔵の2役を魅力的に演じていた。
高助と寅蔵が同じシーンの時に代役の人がお面をかぶっていたので「雑!」と大笑いしたのだが、その後の入れ替わりが鮮やかであえてそこは雑だったなんだなと感じてしゃれている。
ともさかりえさん演じる妹ミチルも憎めない可愛さだったし、嵐山役の橋本淳くんも良かった。
橋本くんはTV放送で観た「クレシダ」(生では観られなかった)で非常に印象的だったので気になっていたのですが、嵐山と劇中役の「半次郎」どちらもまた愛しい。
1幕95分2幕95分と長丁場でしたが、長さを感じずこの世界に惹きこまれました。
きっとこの島の映画館では今でもいつも何かが上映されていてみんなを楽しませているんだろうなと温かい気持ちになって劇場を出ました。
面白かった。