今回の遠征の目的はこれ。

舞台の出来には絶対的信頼感を寄せている加藤健一事務所公演に芳樹さんの客演、これが決め手。
私が最初に芳樹さんを観たのも劇団本公演ではなくカトケンさんの舞台でした。

今回の演目は再演(初演は芳樹さんは出演していない)なのですが、初演は芸文でも公演があったためチケットを取っていました。
ただ、ちょうど台風で電車が動くか動かないかというので行けなかった舞台である意味リベンジ。

劇場はカトケンさんの東京公演はほぼここという下北沢の本多劇場。
下北沢駅が工事で色々変わったということですが前回行った時よりは迷わず行けました。
そして結構ええ年の自分がかなりの若手に感じる客層(笑)。
盲導犬を連れた方もたくさんいらっしゃいました。
目の不自由な方も楽しめるようにという試みを定期的に行っているようです。
色んな方が演劇を楽しめるのは素敵だなと感じます。

ちなみに今回竹下景子さんが出演されていたのでスタンド花を贈っているお名前が錚々たるメンバーだった。
いちばん目立つところに首相夫人のお名前が(笑)。

ストーリーは初日を間近に控えた舞台俳優が突然いなくなり、その代役としてかつての名優に白羽の矢が立つ。
しかし、彼は酒浸りで落ちぶれていた。果たして幕は開くのかというバックステージもの。
とはいうものの思っていたバックステージもの(幕は果たして開くのかというドタバタはあれど)とは違って、
メインキャスト3人の心理描写に絞った作品だったと思います。
思った以上に刺さる舞台でした。

虚言で体裁を取り繕うしかないかつての名優に巻き込まれる妻と演出家のほぼ3人芝居。
主人公もさることながらそれでも献身的に支えるしかない妻と主人公の才能を信じ続ける演出家にそれぞれの業を感じました。
ネタバレになりますが、初めは夫もだけど妻も病んでいるのかと思っていました(終わってみて良く考えると実は妻も共依存ではないかとも思うが)。
段々話が進むにつれてそれが全部夫の嘘だということがわかってきたのですが、なぜその嘘が演出家に見抜けないのか?

また妻も夫が嘘をついているから演出家の誤解を招いているのがわからないのか?
それぞれのすれ違いがこの舞台の肝であったように思います。
嘘が全部ばれてからがまた見ごたえのある芝居で演劇の良さを堪能できました。
ただ、こんな男は周りにいたら絶対嫌だけど(笑)。

そのズルいんだけど妻が見捨てることができない男を演じる加藤さんが本当に巧い、
そしてこの芝居は妻役の竹下さんありきだと思いました。
その夫婦に絡む演出家小須田さんと3人のバランスが絶妙。
初演はこの役を山路和弘さんが演じていたということで彼も観てみたかったな。

で、本命の芳樹さん。出番は少ないと聞いていましたが、聞いてから想像した以上にも出番が少なかった(笑)。
芳樹さんは舞台上の舞台の劇作家の役。
出番は少ないけれどもいいスパイスにはなっていたと思います。
軽やかでフレッシュな役は本公演ではなかなか求められない役割だと思うので新鮮でした。
ええ、完全に若手枠でしたよ(笑)。
でも本当の若手では出来ない味わいかな。

タイプライター叩きながらジョージ―(竹下さんの役)と話すシーンがほのぼのとして好きでした。
しかし、芳樹さんの役のキャラ設定が時々わからないところあり。それは元々の脚本からなのか芳樹さんだからか(笑)。

3時間近くと意外に長丁場な舞台でしたが見ごたえあって良かったです。