石丸さんと堀内さんの久しぶり(17年ぶりだそうです)の共演というので即観に行くと決定したのはいつのことやら。
そして他の出演者も豪華!しかも森新太郎さんが演出。
そんな風にまずは出演者で選んだので内容は二の次だったのですがよくよくあらすじ見るとかなりハードそう。
あまり詳しくは予習しなかったのですがWiki斜め読みしただけでもこれは・・・。
しかし、東京での評判がものすごくて回を重ねるごとに大きなうねりを感じるようになって(それこそパレードのように)期待と重さに対する不安でいっぱいになりながら
迎えた大阪千秋楽。

前評判通り凄い作品でした。
覚悟していた程重くはなかった(いや、重いんだけどもっと重いかと思った)のは音楽の力でしょうか。
これがストプレだったらもっときつい。

舞台は1913年アメリカ南部の中心アトランタ。
そこで13才の白人少女の強姦殺人事件が起きて容疑者として少女が働いていた工場の長である北部出身のユダヤ人レオ・フランクが挙がる。
早期解決を図る検事はレオを犯人として仕立てあげて・・・という冤罪もの。
とにかく次から次へとねつ造された証言が挙がり追い詰められていくのが普通なら「これはお話だもの」と思えるところが実話であるところにより重みを感じる。
そして結末も決して明るいものではない(実話と変えていない)。
ただ本当にものすごく美しい舞台でもありました。
間違いなく今年いちばん(になる可能性大)の舞台であったと思います。

人種問題などいろんな問題をはらんだものでありますがなんといっても集団心理のおそろしさ、そして正義とはいったい何であるのか?という点を強く感じる作品でした。
決して遠い国であった100年近く前の昔話ではない、現実に通じる普遍的なものがありました。

歌が終わった後に拍手をする間を与えないのがストプレ的なところか。
ミュージカル初演出の森さんだからか元々がそうなのかわかりませんが。
シーンのつなぎがスムーズなのでぐいぐいと話に惹きこまれる。
大量の紙吹雪(最後までそれが床に散らばったまま)、ライティング、舞台の真ん中にそびえたつ大木。
全てが美しかったです。
ピクニックのシーンは本当に涙が出るほど美しくてただ結末を知っているだけに哀しいものがありました。
この事件があったからこそ、この夫婦の絆が強まったというのがまた切ない。

キャストはアンサンブル含めて皆素晴らしかった。
これだけ良く揃えたなというくらい。
新納さんと武田さんの役が少し弱いと感じたのは元々の脚本からかどうか。
やはり新納さんはこの役には少し若すぎる。

そして元四季の底力を感じました。
石丸・堀内カップルもさることながら、サカケンさんが凄かった
なんか語彙ないけど凄かったとしか言えん(笑)。
圧倒されました。
実際この話のいちばんのキーマンではあるけれどサカケン劇場だった。

石丸さんの素晴らしいところはただ歌がうまいだけではないところ。
正直コンサートではそれほど満足感を覚えたことはないのですが(うまいとは思っています。でも歌手ではないなと思う)、
役が入ると歌で表現する力がものすごい。
しかもこの難しい旋律を軽々と歌いこなし、役としての説得力があるところが素晴らしかった。
はまり役だったと思います。

そして堀内さん。
私は退団後生で観るのは(映像ではあるけれど)初めてでした。
歌だけでいったら堀内さんよりうまい人はたくさんいるでしょうが、この役は堀内さんにしかできないと思った。
おどおどしたお嬢さんなところが抜けきれない奥さんから夫の為にたたかう凛とした強さを持つ妻へと変わる様は凄味があったし、
ラストシーンでの表情は圧倒されました。

禅さんの悪役ぶりとか莉奈ちゃんの愛らしさとか色々書きたいことはあるが、特筆したいのは小野田くんがまた素晴らしかった。
最初に小野田くんの歌声で始まるのだがその一節でこの作品は良作だと確信できるくらい。

どうでもいいことですが個人的にはオカケンの役がいい人だったのがいちばん衝撃でした(笑)。
だって最初の方悪そうだったのに。
何度か舞台は観ているけれどそういえばちゃんと歌っているの生で聴いたのは初めてかもしれない。

リピートするにはしんどいけれど観ておいて良かった作品でした。
再演して欲しい。
そしてこのメンバーでCD欲しいな。