日本初上演「Violet」観劇。
場所はラゾーナ川崎プラザソル。

人生初川崎。
駅直結のショッピングモールの一角にある劇場でした。
なかなか誘惑が多そうな場所です(笑)。

「Violet」とはサットン・フォスターがトニー賞にノミネートされたことがあるブロードウェイミュージカル。
子供の頃飛んできた父親の斧が顔に刺さって一生治らない傷を負ってしまったヴァイオレットが、奇蹟を起こす牧師をテレビで見て彼に顔を治してもらおうと旅に出る話。
ヒロインヴァイオレットと少女時代のヴァイオレットをそれぞれトリプルキャスト(組み合わせは固定)、彼女が道中で出会う2人の軍人役を3人でまわすという面白いキャスト編成となっています。
但し、田村くんは全公演でどちらかの役で出演していたためいちばん大変だったのでは?
なのでもう一人のキャスト溝渕さんといっちーの組み合わせはなかったので溝渕さんは未見。

1日3公演の場合マチマチというべきかマチソワというべきか。
私が観たのは1回目と2回目の公演になります。

キャスト(敬称略)

1回目
ヴァイオレット:三森千愛
ヤングヴァイオレット:齊藤茉優
フリック:田村良太
モンティ:一和洋輔

2回目
ヴァイオレット:谷口あかり
ヤングヴァイオレット:小林あずみ
フリック:一和洋輔
モンティ:田村良太

2回目を観たら終わるのがとても中途半端な時間で他の演目のソワレを観ようと思っても観られないのでどうしようかと思ったのですが、やはりせっかく来たんだから2役観たいと思って両方チケット購入。
そしてそれが正解でした。
モンティも悪くなかったけれどフリックが抜群に良かった。
あまり予習をしない私はどちらがどういう役なのかわからずに来ていたのですが、役的にも歌的にもフリックの方が比重大きい。
キャラ的にもフリックの方が演じやすそうでした。

フリックモンティのやりとりや掛け合いも2回目の方がうけていました。
2人の演技を受けるあかりちゃんがコミカルな演技がうまいというのもあるけれども。
畠中さん演じるパパとのクライマックスシーンでは三森さんの方が泣けたな。

ヴァイオレットの2人は個性も役のアプローチも違うのでまた全然違っていたのが面白かったです。
衣装も違うのねとまずは思いましたが。
三森ヴァイオレットは少しずつ心を開き一歩ずつ進んでいく感じ、谷口ヴァイオレットは猪突猛進な感じがしました。
未見の千田ヴァイオレットがどんなのかも観てみたかったです。
そしてヤングヴァイオレットとの組み合わせはそれぞれ合った組み合わせだったんだろうなと思います。

ヴァイオレットの傷を特殊メイクで表現しないというのはブロードウェイ版と同じなのですが、黒人白人の区別もドーランを塗ったりせずに表現するというのでどういう手法取るのかなと思っていたらああこういうことなのか。

公演が終わっているためネタバレしますが、手首に巻きつけているリボンの色で黒人白人の区別をしていました。
そしてヴァイオレットはただ一人赤いリボン。
最初、ヴァイオレットの手首に巻きつけられた白いリボンが傷を負ったことによって赤に変わるというシーンでこういうやり方があったのかと理解。
ラストシーンも美しくてとても好きなのですが、アメリカでは絶対できない手法なのでBWではどのように終わらせたんだろうと気になる。
どの人種にもなれる日本ならではの演出。
ただ、この手法は小さい劇場だから出来るのであって大きいところでは難しいな。
遠くからは見えないだろうから。

アンサンブルはシーンごとで黒人になったり白人になったりしていたのかな。
あまりチェックできていないもので。
人種差別の部分は少しは描かれていたがあえて強調しない意図だったのかと感じました。
黒人と白人が同じバスに乗ることを禁じられていた時代からすぐの時代だろうに、バスの乗客は特に気にしてなさそうだし、ゴスペル隊も黒人白人ごちゃ混ぜだった。
描きたいのはそこではないのかな。

また「奇蹟」が起きた(傷が治った)と信じるヴァイオレットに対して他の乗客が普通に接していたところも気になった。
あれは傷を癒せるのはヴァイオレットの心持ち次第という意図だったのかな。
だからこそあのラストシーンに繋がるのかと感じました。

ないものをあることにはできるけど、あるものをないことにはできないというくだりが凄く印象に残りました。 そのセリフをしゃべっているのはペテン師牧師なのにそこだけは真実だったんだろうか。

後から色々とじわじわくる。
そして、そういったじわじわくる作品にいっちーが出ているというのがとても嬉しい。

いっちーが演じた2役について。
フリックは黒人兵士、モンティはその友達のチャラい白人兵士。
ただ、モンティもチャラいだけじゃなく闇抱えてそう。
ヴァイオレットに冗談交じりに語った話は、「面白くない」と一蹴されたけれどあれは実話だったのかも。
そして彼は彼なりにヴァイオレットの方が好きだったんだろう、実はフリックよりも不器用なのかもと思わせるものがあった。
そのバランスが難しい役だなと思いました。
正直いっちーも田村くんもフリックの方が合っていた。

まあ、そのチャラさがあんまり他では見ない役なので面白かったですけれどね。
可愛かったし。
やることやった後、ぐーぐーとヴァイオレットに膝枕してもらって寝るっていうのなんてほんまに酷い男だけど可愛いからいいや(急に甘くなる)。
終わってから「初めてじゃなかったんだな」とつぶやくところなんてチャラい、チャラいよ!
可愛かったし(終始それで通す)。
というか、彼のベッドシーン見たのめざめの時以来かもしれない。

今回お尻は出してませんけど(どうでもいい)。
とはいえ、あまり歌の聴かせどころは少なかったので消化不良だったのですがフリックで満たされた。

1回目、田村くんが歌っているのを聴いてこの曲いいな、次の回で聴けるの楽しみとぼんやり思っていたのですが、
実際聴いてがつんときた!
「Let it Sing」というソロナンバーだったのですが、贔屓目だろうかなんだろうがいちばん魂震えたのはこの歌だった。
フリックの心情を丁寧に綴りかつ熱い歌声、そして最後の高音に震えた。
来て良かったわ(しみじみ)。
もう1回聴きたかった。

演技面でもフリックの方が演じやすいだろうなとは思いましたが、彼の抱えるコンプレックス、ヴァイオレットへの想いなど丁寧に演じていて伝わるものがありました。

しかし、カテコであかりちゃんといっちーが並んでセンターに立っているのを見て色々感慨深いものがありました。

在団時代は相手役やってないから。

私が観たのは常にソフィとペッパーだから(笑)。

ベンドラとメルヒ、リーズルとロルフは演じているけれど共演はしてませんからね。
なんか不思議な感じ。

テーマは重いですが、キャッチーな曲とテンポの良さで見やすくてしかも考えさせられるいい作品でした。
ゴスペル、ブルース、カントリーなどアメリカンな曲多かったな。
後味が爽やかなのも良かったです。