栗山民也演出版「アドルフに告ぐ」を観に行ってきました。

Studio Lifeが再演することを発表後、こちらの公演が発表されていてからずっと気になっていました。
主演が「十二夜」で気になった成河さんに「スリル・ミー」で気になった松下くん。
なんといっても同じ演目をどのように描かれるのかが気になっていました。

ただ、ためらっていたのは先に本命を観たいなと思っていたからと、
京都公演の場所が

めっちゃ遠いねん(笑)!

場所は「春秋座」。京都造形芸術大学のキャンパス内にあるホールで京都駅からだとバスで50分。

遠いわ(笑)!
出町柳駅からだとバスで15分って書いていましたが、あんまりバスに乗りたくない私は更に叡山電車に乗って2駅。そこから10分くらい歩いて行きました。
叡山電車は今もICカードが使えませんよ(プチ情報)。

もぎりも劇場案内も学生さんがやってたのが新鮮でした。

結論から申し上げますと、そんな遠いところでしたが行ってよかったです。

セットはシンプル。
足湯の様なセットは「スリル・ミー」を彷彿させましたが(笑)。
ピアノが朴さんだったというのもあるけれど。
ストーリーもほぼ原作に忠実、シンプルでわかりやすく主題を伝えていたかと思います。

さて、私の感想文はネタバレ考えずに書いていますのでここからネタバレ含みます。
違っていたのは小此木まりさん演じる少女がオリジナルキャラ。
彼女の印象がとても強く残っています。
そしていちばん違うのはラストのパレスチナのシーン。
カミルと対峙する前にカウフマンが自分の銃の弾倉を外したところ。
私も原作を読んだ時に、カウフマンがカミルを呼び出したのは彼に殺されたかったんだろうなと解釈したので私の解釈と同じだと言えば同じなんだけれど、あえてこの動作を入れたのはなぜだろうと。

パンフレットになんか載ってますかね(売り切れだったので買えず)。

1幕75分、2幕95分で2幕の方が長かったのですが、2幕の方が長さを感じなかったのは見入ってしまったから。
そこから始まるのかーい?と思うくらい最初のエピソードばっさりで1幕は駆け足感強かったからかもしれません。
1幕は原作の3分の2、2幕で3分の1くらいの量感だったかな。
2幕が密度濃かったからかもしれません。
前述通り原作に忠実で、原作でほったらかしなところもそれ以上にほったらかしかも(笑)。
三重子のその後とか、峠と由季江の子供どうなったの?とか。
由季江がどうなったのかは原作ではありますが(由季江は出産後亡くなっています)、ここではなかったですね。
長い原作だからどこを削るかというのは大変でしょうけどね。
ただ、なぜカウフマンがエリザに惹かれたかとか、峠と由季江がどのように惹かれあったのかというエピソードは欲しかったなと思いましたが。

3人のアドルフについて。
カウフマンを演じた成河さんは、以前観た時にも思ったけれど、客を惹きこむオーラというか力がある人だと感じました。
そして話をぐいぐいひっぱっていく。
段々狂った方へ向かっていく様が哀しい。
いちばん印象的だったのはお母さんに再会した時強く強く抱擁したシーン。
冷徹になってしまったけれども、ずっとお母さんを求めていたという子供の部分が残っていたのかと。
ただ、居場所を求めていてもどこにも居場所がなかった。
由季江は「新しい家族をまた作りたい」と語っているが、その中に息子であるカウフマンはいなくて過去の人になっている。
エリザは原作では最初は好意があった部分もあったが、このエリザは原作以上にカウフマンに対して冷たい。
だから「道化でござい」が余計に胸をうちました。

カミルを演じた松下くん。
彼は何色にも染まるという印象を持っています。
成河さんとはまた違った形で役に入りこむというか「松下洸平」という役者が演じている役というよりその役になってしまう人なんだなと(うまく表現できない)。
つまりはあれ?この人松下くん?って最初登場した時に思ったんですよ。
役によって印象が変わるタイプ。
カミル自体は原作でもカウフマン程細かく描かれていないのでパレスチナで唐突に人間変わったみたいに感じるのですが、それまでの気のいい青年といい豹変するところといいはまっていたと思います。
あとは関西出身じゃないのに関西弁うまかった(笑)。

ヒトラーの髙橋洋さん。
おそらく初見。
生々しく突き抜けた感じが痛くて哀しい。
寄り添うエヴァとの愛が余計に哀しい。

あとは鶴見辰吾さんの峠が狂言回しとしてしっかり軸を支えていたように思います。

戦後70年。こういった作品を上演する意義は大きいと感じました。
戦争によってどれだけ人が狂っていくのか、正義とは何か、信じるものとは何か。
終わった後はいろんなものがぐるぐるまわってなかなか心が戻ってこない。
見応えある舞台でした。

そして、それだからこそStudio Life版が余計に楽しみになってきました。
今回の舞台はどちらかというと群像劇のようでしたが、
もっとアドルフ2人にスポットを当てたようになるのかどうなのか。
そしてあの人たちがあの役をどう演じるのかと色々考えていたら本当に楽しみ。

というわけで7月~8月に新宿紀伊国屋ホールで、8月にシアタードラマシティであるんで興味がある方どうぞ(と宣伝して終わるw)。