「ゲージ460、閉塞進行!左安全!」

ボクが北九州に10年以上ぶりに帰ってきたのが2007年。
今年で3度目の冬を迎える。

むかし、赤い路面電車が下の大通りに走っていまして、今でもボクとかはその道を「旧電車通り」と呼んでいます。

ボクは少々方向音痴なときがあり、右に曲がったり、左にそれたりするバスが苦手で、
単純な直線上をいったりきたりする路面電車をこよなく愛用していたの。

黒崎へ、友だちに会いに行くとき左へ向かう電車を待ちわびて、
冬が来て、小倉で花火があがるのと、みんなで右に進む電車に飛び乗った。

路面電車から眺めた、打ち上げ花火は格別な思い出。

雪文の店内にはその路面電車の「ワンマン出口」の標札が一枚ある。

これは旧姓N氏が、

西鉄北九州線廃止にともない 「さよなら電車」 と名付けられた
一台の車両が無料で乗り放題なった最終日に、格納される車庫にまで忍び込んで、

「こらーーっ」 って 怒られながらも奪取してきた盗品であります。

旧姓N氏曰く、「みんな色々もぎ取っていて、私も何か欲しかったの」

まあ私が手を染めたわけではないですし、当時のそんな光景も有りかとも思いますけど、
特に使い道のなかったその「ワンマン出口」標札が、今は雪文の店内にぽつりと置かれて、いるわけだ。

先日、ボクがこちらに帰ってきて以来の友人A氏と店頭に立つ旧姓N氏が、妙にざわついていたので

「どうしたんだい?」 と 訪ねてみると、友人A氏がワンマン出口を目にするや

「わたしワンマン入口持っています」 と 言ったらしい。

最近秘密の会議室を作るのだと、部屋を大掃除していたA氏は、
自分がさよなら電車の 「ワンマン入口」 を のり で強奪していたことを忘れており、
コロンと部屋の隅から出てきたものだから、
その時はじめて雪文に飾ってある 「ワンマン出口」 に気がついた。

もうお互い同士がこの店で知り合って2年以上が経つ。
そんな月日が旧姓N氏をボクのお嫁に変化させ、友人A氏はますにマスマス肥えていく。

平成4年(1992年)10月25日 砂津 - 黒崎駅前間ヒゲ廃止

当時、顔も知らぬN氏とA氏は同じ路面電車から一枚の標札を抜き取った。

「ワンマン入口」、「ワンマン出口」。

華麗なるチンチン電車の引き際を賑わした二人の悪童が、つい先日雪文で再び、出会った。

「圧ヨシ、ゲージ500、左安全オーライ!1番出発進行!」 カンカン

今日もユキモン電車が快調に走る。


【業務報告】

本日は午後3時から午後8時半ごろまで営業いたしますが、
アイスの在庫がほとんどありません。
ソフトクリームの機械も壊れたままです。
残り僅かになったアイスを回復すべく努めて参りますが、予めご了承いただければ幸いです。