毎日毎日、面白い。
雪文には、ときおりかわったもお客様もご来店いたします。
幻の四星球一つ 少年のありし辺 宙に残って 消えずに面影に立つ
もう1年以上前の話になるだろうか。
大人になって初めてといってよいほどの
味わったことのない奇妙な焦りに、おそわれたあの日。
それは正午過ぎの出来事だったと記憶しているよ。
ドラゴンレーダーを持たないその少年は突然やってきた。
息を大きくはきながら、店のドアを開けて入ってきたのだ。
小学生、低学年くらいであろうか。
青いキャップ帽を目深にかぶり、
やたら丁寧な口調ではあるが、ひどく興奮した様子で
私に話しかけ、こう言い放った。
「あの……」
「ドラゴンボールを探しているんですが、ここにあると思うんです。絶対!!」
ん!?……ぐ
ヒゲっ。
私は危うく意味もわからず悶絶する、一歩手前であった。
飲み込めたようで、飲み込めていなかった私をみかねたのか、
店外で見守っていた、その子の母親が少し恥ずかしそうに、
控えめにドアを開けて店内に入ってきた。
そして丁寧に事情を説明してくれたので、用件は了解できた。
母親は理由を述べた後、また店外へと出、
全く本気の少年と情けない大人の私とが店内にただ二人残された。
許可を得られた少年が、
狭い客席の隅々から物陰を、地面に這いつくばって探し回るのを、
私はもの凄くやるせない気分で見守っていた。
あの時ほど、君の探しているものは
「ほらこれかい?」
と言って取り出せる、ドラゴンボールの持ち合わせがないことを悔やんだことはない。
自分が少年だった頃、
もしも本気で探していれば、
ひとつくらいは持てていたのであろうか?
ごっごではない鬼気迫るほど真剣な、
少年のその行動が、私にそんな錯覚すらおぼえさせたのである。
捜索の結果、
残念なことに雪文にはドラゴンボールは落ちていなかった。
母親によると、小学校の野外教育の一環で
地域のお店を取材して回るという授業があり、
何日か前、雪文にクラスメートと訪れたのだという。
どうもその日に、彼は持っていたドラゴンボールをなくしたらしいのである。
あれから少年は雪文にやってきていない、と思う。
もしかすれば、取材で回った別の場所で、彼は彼の四星球をみつけたのかもしれない。
もしかすると、その四星球は今も雪文の客席の片隅に
ひっそりと隠れているのかもしれないが、
きっとその可能性は低いのであろうと私は思ってる。
だって、こないだの日食の日に
神龍(シェンロン)が現れて、
私は危うく目を潰されるところだったけど、
イーシンチュウからチーシンチュウまで七つの星球集めた強者が、
願いを叶えてもらっていた気がするから。
雪文には、ときおりかわったもお客様もご来店いたします。
幻の四星球一つ 少年のありし辺 宙に残って 消えずに面影に立つ
もう1年以上前の話になるだろうか。
大人になって初めてといってよいほどの
味わったことのない奇妙な焦りに、おそわれたあの日。
それは正午過ぎの出来事だったと記憶しているよ。
ドラゴンレーダーを持たないその少年は突然やってきた。
息を大きくはきながら、店のドアを開けて入ってきたのだ。
小学生、低学年くらいであろうか。
青いキャップ帽を目深にかぶり、
やたら丁寧な口調ではあるが、ひどく興奮した様子で
私に話しかけ、こう言い放った。
「あの……」
「ドラゴンボールを探しているんですが、ここにあると思うんです。絶対!!」
ん!?……ぐ
ヒゲっ。
私は危うく意味もわからず悶絶する、一歩手前であった。
飲み込めたようで、飲み込めていなかった私をみかねたのか、
店外で見守っていた、その子の母親が少し恥ずかしそうに、
控えめにドアを開けて店内に入ってきた。
そして丁寧に事情を説明してくれたので、用件は了解できた。
母親は理由を述べた後、また店外へと出、
全く本気の少年と情けない大人の私とが店内にただ二人残された。
許可を得られた少年が、
狭い客席の隅々から物陰を、地面に這いつくばって探し回るのを、
私はもの凄くやるせない気分で見守っていた。
あの時ほど、君の探しているものは
「ほらこれかい?」
と言って取り出せる、ドラゴンボールの持ち合わせがないことを悔やんだことはない。
自分が少年だった頃、
もしも本気で探していれば、
ひとつくらいは持てていたのであろうか?
ごっごではない鬼気迫るほど真剣な、
少年のその行動が、私にそんな錯覚すらおぼえさせたのである。
捜索の結果、
残念なことに雪文にはドラゴンボールは落ちていなかった。
母親によると、小学校の野外教育の一環で
地域のお店を取材して回るという授業があり、
何日か前、雪文にクラスメートと訪れたのだという。
どうもその日に、彼は持っていたドラゴンボールをなくしたらしいのである。
あれから少年は雪文にやってきていない、と思う。
もしかすれば、取材で回った別の場所で、彼は彼の四星球をみつけたのかもしれない。
もしかすると、その四星球は今も雪文の客席の片隅に
ひっそりと隠れているのかもしれないが、
きっとその可能性は低いのであろうと私は思ってる。
だって、こないだの日食の日に
神龍(シェンロン)が現れて、
私は危うく目を潰されるところだったけど、
イーシンチュウからチーシンチュウまで七つの星球集めた強者が、
願いを叶えてもらっていた気がするから。