ちょっとコンビニでも行こうかな?と、ラフな格好で出かけた私。
だけどこういう時に限って、知り合いに合うんだから神様は意地悪だ。
「色気もクソもない格好ッスね」
「悪かったね」
悪気なんてありませんとでも言うような、無邪気に毒を吐く後輩。
年下に『色気がない』とか言われた私って……。
とにかく買い物を済ませて店を出ると、なぜか後ろから赤也も着いて来た。
「先輩、帰るんすか?」
「帰るよ。ほかに用事なんてないもん」
「じゃあ、帰る前に俺と花火しません?」
「花火?」
赤也が自分の荷物を軽く持ち上げる。
袋から花火が覗いて見えた。
「花火か……いいね」
「でしょ?」
近くの公園に向かい、少し大きめの石の上にロウソクを立てた。
「今年初花火」
「マジっすか?先輩青春捨て過ぎッスよ」
「哀れんだ目で見てくるな!」
自分でも悲しい夏休みだってことは自覚してるんだから!
沈みかけた気持ちを盛り上げようと、花火に火をつけた。
パチパチと火花と煙が夜闇の中に浮き上がる。
綺麗……。
こういうの、彼氏としたらもっと感動するんだろうな……。
「夏って恋の季節だよね……」
周りの友達に一気に彼氏ができたせいで、今年の夏休みは寂しいものだ。
夏祭りも花火大会も、みんな彼氏と行くからと、私の誘いはことごとく断られた。
「私もキャピキャピしたい……」
我ながらなんて寂しい呟き。
「……」
「ちょっと!ここはツッコムところでしょ?余計に悲しくなるじゃない!」
「先輩、好きな奴とかいないんスか?」
「へ?」
盛大に笑い飛ばしてくれると思ったのに、まさか好きな奴はいないのかなんて聞かれるとは……。
「いないね……」
「じゃあ、俺と恋してみます?」
「は?」
なんなんだ?
今日の赤也はどうした?
ツッコムべきところではスルーで、意味のわからんところでボケですか?
「俺と恋愛したら、キャピキャピできるッスよ?」
「まあ……そうかもね」
キャピキャピっていうか、ぎゃーぎゃーって感じだけど。
「先輩の恋の相手なんて、俺しかいないと思うんスよね」
「なにそれ。私みたいなじゃじゃ馬、誰も相手してくれないって事?」
「違うッスよ。俺なら、先輩をいつでもドキドキさせてあげれるってこと」
「ハラハラの間違いで――っ!?」
赤也にドキドキさせられるってありえない。
花火に火をつけながら赤也に視線を向けた私は、ハッと息を呑んだ。
私を見つめる視線が、あまりに真剣で、息ができなくなる。
「先輩、今ドキドキしてる?」
「そ、そんなわけ……」
「顔赤いッスよ」
「それは……花火のせい……」
「じゃあ……俺の顔見てよ」
無理……。
赤也の顔なんて見れない。
俯いたままの私の頬に、赤也の手が触れる。
大きくて硬い手の感触に、胸が大きく跳ね上がる。
やだ……。
私、どうしたの!?
「先輩、すげえ可愛い顔してる」
「バ、バカじゃないの……」
「それって、俺がさせてるんスよね?」
「し、知らないよ……」
威勢のない小さな声。
でも、いつもみたいに、言い返せない。
「ねぇ、先輩」
赤也がもう1度私の名前を読んだ。
その声に、ゆっくりと視線を上げる。
子供で弟みたいな後輩だと思ってた。
だけど、今、目の前にいる赤也はまるで別人のようで……。
『男』を意識せずにはいられない。
「ドキドキ、してる?」
先と同じ質問に、今度は素直に頷いた。
「もっとドキドキさせていい?」
「こ、これ以上は……ムリ……」
「じゃあ……今はこれで我慢するッス!」
赤也の唇が素早く私の頬に触れる。
「っ!?」
「これからもっとドキドキさせるから、覚悟してくださいよ」
「の、望むところだ……」
精一杯の虚勢を張りつつも、このドキドキが恋に変わるには、そう遠くない予感を感じていた――
***************************************
なんか盛り上がりに欠ける話ですね。←
ちょっと気分転換に書いたんだけど、不完全燃焼。
夏休みもあとちょっとですね。
早く終われ~!!
最近目の疲れが半端なく、コンタクトをつけると痛いんですわ。
レーシックをしようか真剣に悩んでます。
まあ、まずは貯金だな。