4周年ありがとう企画 千代さんリク仁王SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

「仁王君脚邪魔。」

「長くてすまんのう。」

「嫌味・・・・。」



正方形のけっして大きくはないコタツ。

私1人なら十分な大きさなんだけど、2人で入るには少々小さい。

それでも脚を曲げればぶつかることはないし、暖をとるには問題ないはず。


だけどこの目の前で嫌みったらしく笑う男は、さっきからコタツの中の半分以上を陣取って、それでも足りないとばかりに私の小さく丸めた脚をコタツから押し出そうとする。

確かに彼の脚は長い。羨ましいほどにスラリとして長い。

だけどコタツの中を全て占領してしまうほどではないはずだ。




「勉強に集中できない。」

「俺は早苗と2人っきりという時点で集中なんてできんけどな。」

「っな、なに言って・・・・。」

「ククッ。顔が真っ赤じゃ。可愛ええのう。」




からかうように頬をツンツンとされてますます顔が赤くなる。

一緒に宿題する?って誘ったのは私だけど、私の部屋でしようと言ったのは仁王君だ。

彼氏を、って言うか男子を自分の部屋に入れるのは初めてで、すごくドキドキしたけど、仁王君はとくに緊張してる様子もなくて、やっぱり慣れてるのかな・・・?なんて思ってたのに。

私と2人っきりで集中できないなんて・・・・・仁王君もドキドキしてくれてたってことなのかな?


からかわれて拗ねながらも、嬉しくてちょっとにやけてしまう。

教科書でさり気なく緩んだ顔を隠してみたけど、それを仁王君が見逃すはずもなく、教科書を奪われ曝け出された赤面顔に仁王君の綺麗な顔が近づく。




「・・・・・・食べてもええ?」

「ぇっ!?」




艶を含んだ瞳が私の目を覗きこむ様に見つめる。


食べていいって・・・・それってやっぱりそういう事?

まだ付き合ったばっかりだし、いきない体を求めてくることはないだろうから、キス・・・・ってことだよね?


どんどん早く、どんどん大きくなっていく鼓動。

心臓がどこで鳴っているのかわからないくらい全身がドキドキしている。

緊張でうまく息ができなくて苦しい。


どうしよう。

ここはやっぱり目を瞑るべき?

あ、その前にたべていい?の返事をするべき?

でも目を瞑った時点でOKって事なんじゃ・・・?


一瞬の間にいろんな事が頭を駆け巡る。

ペンを握ったままの手にギュッと力を入れて、覚悟を決めたように目を瞑った。


その瞬間。

プーッと吹き出した息が顔にかかり、ケラケラと笑う声が耳に届いた。




「すまん。言葉足らずじゃったなぁ。」

「・・・え?」

「早苗の後ろにあるソレを食ってもええかと聞いたんじゃが・・・?」




仁王君の言葉に促されるように後ろを振り向けば、ベッドの上に置かれたコンビニの袋が一つ。

確か家に帰ってくる前に買った大福風のアイスが入っているはず。

ちょっと溶けかかって周りのお餅が柔らかくなった方がおしいからと、それまで置いていたんだった。


そろそろいい具合に溶けてる頃だろう。

お餅がどこまで伸びるかをきそったりするのも楽しいんだよね。

・・・・ってそうじゃないでしょ!?


コンビニの袋から視線を戻せば、ニヤニヤとした意地悪い笑みが私を見ている。

からかわれたと気づくと同時に、湯気が出そうなほど顔が熱くなる。




「なんか期待させてもうたかのう?」

「き、期待なんてしてないし!!」




ひどい。ひどすぎる!!

私のドキドキと緊張を返せ!!!


こういう男だってわかってて好きになったんだけどね!

こういう男だってわかってて付きあったんだけどね!

でもでも・・・・・くやしーーーー!!!!




「人をからかって喜ぶような人にはもうアイスあげないから!!」

「二つも食ったら太るぜよ?」

「余計なお世話!!」




腹立たしいやら恥ずかしいやらで、私はやけ食いのように大福風アイスにかぶりついた。

口の周りが白くなってるかもとか、頬が膨れてブサイクな顔になってるかもとか思ったけど、それ以上にキスだと勘違いした事の方が恥ずかしくて、羞恥を誤魔化すように必死に口を動かす。

口の中のモノがなくなる前にまたひとかぶりして、仁王君の分のアイスも食べたやった。

「あ~ぁ。ほんまに俺の分も食うてしまいよった」と言う仁王君に、ざまぁみろと少しだけスッキリする。




「ククッ。今ざまぁみろと思ったじゃろ?」

「!?」

「ほんまにお前さんはからかいがえがあって可愛ええのう。」




仕返しのつもりだったのに、全て読まれてるし!!

からかいがいがあって可愛いなんて、全然褒め言葉じゃない!

いつもからかわれてばかりなのは悔しいし、文句の一つでも言ってやろうと必死でもぐもぐと口を動かして、アイスを飲み込む。

だけどやっぱり私は、どう頑張っても仁王君には勝てないようだ。


口を開く前に塞がれた唇。

もちろん塞いだのは、仁王君の唇。




「ん。甘い。」

「なっ・・・・・なっ・・・・・」

「ごちそうさん。」

「~~~っ!?」




コタツなんていらないほどに体温が上昇したのはいうまでもなく、仁王君はのびのびと脚を伸ばしてしたり顔で私を見ていた。



上手な彼

(今の『ごちそうさん』はアイスと唇を頂いた礼じゃから)

(いちいち言わなくていいよ!!)


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我が家にコタツはないのです。

コタツって1度入ると動きたくなくなっちゃうからね・・・。


千代さん遅くなりましてすみません。

リクありがとうございました!!