この話のみでも読めますが、幸村夢『Prologue 』と話がリンクしております。
先にお読みいただいた方がわかり易いかと・・・。
*未来設定が苦手な方はご遠慮ください。
A g a i n
ワイワイと盛り上がる二次会会場には、懐かしい顔があちらこちらに見える。
見た目はあの頃とは違うけど、楽しそうに騒ぐ姿は昔のままだ。
懐かしい光景に目を細めていると、「久しぶり」と肩を叩かれた。
「うわ。ひとはじゃん。」
「あはは。すぐにわかってもらえてよかった。」
「ひとは全然変わってないし。」
「そう?そう言う雪も変わってないし。」
「えー?綺麗になったでしょ?」
「もう。そういうこと自分で言う?」
中高と同じ立海だった私達。
ひとはは高校卒業後立海とは違う専門学校に進んでしまい、その後会う事も連絡を取り合う事もなかった。
そんなひとはの名前を久しぶりに耳にしたのは、二次会会場に着いてすぐの事。
「二次会にひとはも来るから。」
「ひとはって那木ひとは?」
「ああ。俺達婚約したんだ。」
満面の笑顔でそう告げた幸村に、どれほど驚いたことだろう。
真田が結婚したって事以上の驚きだったかもしれない。
「そういや、幸村と婚約したんだって?」
「まぁ・・・そういうことになるのかな?」
「まさかひとはと幸村がね・・・。」
「そういう雪はどうなの?」
「え?」
「まだ仁王君とは続いてるの?」
『まだ仁王君と続いてるの?』
同じ質問を今まで何度聞いたことだろう。
雅治とはじめて付き合ったあの中学1年の夏から今日まで、幾度となく質問されてきた。
またか。と言う気持ちあるけど、そう聞きたくなる状況を作っているのは私達だから文句を言える立場にはない。
「ううん。今日2年ぶりくらいに会ったかも。」
「そうなの?」
「うん。今回こそ本当に終わりだと思う。」
「そうなんだ・・・。」
丸井と赤也の横でシャンパングラスを傾ける雅治は2年前とあまり変わった様子はない。
だけど私の知らない2年が確かにあって、私にも雅治の知らない2年があって・・・。
その2年は私にとってとても長く、心から雅治を消してしまうには十分過ぎる時間だった。
「今日がきっかけでまたもとさやになるかもよ?」
「ないない。さすがにもうないって。」
「わかんないじゃん。」
「私今彼氏いるし。」
「そうなの?なんだ・・・・残念。」
「なに残念がってんのよ。」
クスクスと笑いながらもう1度雅治を見れば、偶然にも雅治もこっちを見て、視線が重なり合った。
「こっち見てるんじゃない?」なんて興奮気味のひとはに苦笑いを浮かべながらひらひらと手を振れば、雅治はふっと口元に笑みを浮かべ目を細めた。
あぁ、この顔。
悔しいくらいに何度もドキドキさせられたな・・・。
そしてその度に『好きだ』って感じたものだ。
雅治との出会いは中学1年の頃。
小学校から仲のよかった友達と同じクラスだった雅治が、友達に会いに通っていた私に話しかけてきたのがきっかけでよく話すようになった。
と言っても、友達を交えてたわいない話をするだけで、二人っきりで話した事も、学校以外で会った事もなかった。
そんな関係が一転したのは夏休みが開けてすぐのこと。
「はぁ~スッキリスッキリ。」
濡れた手をブンブン振りながらトイレから出てくれば、目の前に雅治が立っていた。
一瞬ギョッと驚く。
「ちぃと話があるんじゃけど?」
「なに?」
「俺と付き合わんか?」
「は?」
「どうやら俺は、お前さんに惚れとるみたいでのう。」
「なにその他人事みたいな告白。それになんで今なの?もっと場所選んでよ。」
女子トイレの前で告白って・・・ムードもクソもありゃしない!
初めての告白なのに・・・・。
「細かいヤツじゃな。」
「悪かったわね!」
告白を受けているはずなのになんだろうこの緊張感のなさは。
こう言う場面ってもっとキラキラ~ドキドキ~ってなるんじゃないの?
やっぱり漫画のようにはいかないのかな・・・・。
まだまだ夢見がちな私は、思い描いていた告白との違いに肩を落とす。
そんな私に雅治が1歩1歩と近づいてきた。
「萌木が好きじゃ。付きおうてくれんか?」
ちょっと前屈みの体勢で、上目づかいに私の返事を待つその顔に、ドキンと胸が跳ね上がる。
あれ?あれれ?
なんだか心臓が急激に早くなっていくような・・・・。
顔もすごく熱くて、仁王の顔を真っ直ぐ見れない。
なんだろう。
すごくドキドキする。
「・・・・・・べつに・・・・いいけど・・・・・」
「ククッ。ツンデレか?」
「うるさい!!」
特別意識した事もない雅治が、この時からすごく気になる人へと変わり、そしてそれが『好きな人』に変わるのは、そう時間はかからなかった。
これが私と雅治の、全ての始まりである。
最初の交際は1ヶ月という短さで終わってしまった。
『好き』と気づいてうまく雅治と話せなくなった事が原因だ。
「俺とおってもつまらなさそうじゃのう。」
そう言われて、言わせたのは自分なのに無性に悲しくて、私から別れを切り出した。
まだまだ可愛い恋愛ごっこ時代。
中学2年になって、何の因果か雅治と同じクラスになってしまった。
気まずさMAXの私に雅治は以前と変わらぬ態度で接してくれた。
それが嬉しくて、私の中に燻っていた『好き』に一気に火が着いた。
それからすぐに私から告白して、2度目の交際が始まる。
だけどそれもクリスマスを前に終わってしまった。
部活が忙しくすれ違う毎日。唯一一緒に過ごせる教室では寝てばかり。
そんな中幸村が倒れ、さらに部活一色になった雅治に、「もう耐えれない」と別れを告げた。
3度目の交際が始まったのは中学3年の冬。
「今日俺誕生日なんじゃけど、祝ってくれんのか?」
「私が祝う理由なんてないし・・・」
「お前さんにいわって欲しいんじゃけど・・・?」
「・・・・・なんで?」
「好きじゃから。」
と、まぁこんな感じで再び付きあう事になった。
3度目はけっこう続いて高校2年の春まで続いた。
別れの理由は雅治の浮気。
倦怠期中で刺激が欲しかったのだろう。
お互い少し冷めていた時期でもあって、そうもめる事もなく終わったように思う。
4度目は短大時代。
高校卒業後まったく連絡がなかった雅治から突然電話がかかってきて、「飯でもいかんか?」と誘われた。
たぶんまた付き合うようになるだろうという予感を感じながらもOKの返事を出したのは、私もそうなる事を望んでいたからかもしれない。
別れは以外と早かった。
確か喧嘩が原因だったように思う。
だけどなにが原因で喧嘩になったのかは忘れてしまった。
くだらない事で喧嘩したような気がする。
こんな風に何度も別れを迎え、その間に違う相手と付き合ったりしながらも、なぜか何かが引き合うようにまた付き合い出した私達。
最後の別れを告げた2年前までに、私達は7度の交際と7度の別れを経験した。
別れても友達のように戻る事もあったり、まったく連絡を取らず数ヶ月経って突然電話がかかってきたりと、その時々で色々だったけど、
半年以上も連絡がなかった事はなく、1年をちょっと過ぎた頃「今度こそ本当に終わりなんだ」と全てを思い出に変えた。
「その彼と、結婚するの?」
「まだそこまで考えてないよ。」
「でも私達ももう25だよ?」
「ま・だ、25です。」
「雪は結婚早いと思ったけどな・・・。」
「あまり結婚願望が湧かないんだよね・・・。」
今の彼は、雅治とはまったく違うタイプの人だ。
誠実で真面目で、私を丸ごと包んでくれるような包容力のある優しい人。
雅治と付き合っていた時のようなハラハラドキドキするような事はないけれど、結婚するなら彼のような人とするのが幸せなんだろうなと最近よく思う。
そう思うんだけど、それと結婚願望は別らしい。
彼と結婚したいとかいう感情は今のところ持った事がない。
「結婚式とかに行くと結婚願望が高まるらしいよ。」
友達の二次会に行ってくると言った私に、彼はコーヒーカップに口付けながらそう言った。
彼が私との結婚を考えてくれているのだという事は前々から気づいていた。
結婚を匂わす話も何度か出た事がある。
その度にのらりくらりと交わしてきたのだけど・・・・そろそろ限界かもしれない。
彼からのプロポーズを拒否する理由なんてなに一つない。
彼となら幸せな結婚生活をおくれるはず。
なのに結婚に踏み切れないのはどうしてだろう?
ウキウキと心弾まないのはどうしてなんだろう?
実感がないからだろうか?
実際にプロポーズを受けると気持ちは変わるのだろうか?
真田の隣で幸せそうに微笑む花嫁を見つめながら、彼の隣で私はあんな風に笑えるのだろうかと思った。
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久々にガッツリ書いてみたくて頑張ってみました。
以前の様に一気に書く事はできないけど、のんびり書き進めてます。
やっぱ夢を書くのって楽しい♪