笑顔を届けたい企画!! 丸井SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

未来設定・遠距離恋愛です。




なにも予定のない週末。

天気は良好。気分も上上。


天気も気分もいいし、こんな日は布団を乾して、部屋の片付けでもしようかな・・・・?なんて思いながら開けた冷蔵庫の中は空っぽ。


最近仕事が忙しくて外食ばかりだったしな・・・・。

今日は久々に料理でもしよう。




「よし、まずは買出しに行くか。」




散歩がてら隣町の大型スーパーに行ってみようかな。

ただの買い出しだけど、ちょっとだけお洒落をして、この間買ったワンピース着ちゃおうっと。

あのワンピなら、靴はあれかな?バッグはあれにして・・・・・久々に髪も巻いちゃうんだ。


春の日差しが部屋の中を淡いオレンジ色に染める。

私の心の中も、オレンジ色に染まる。


準備を整え鏡の前でくるりと1回転。

ワクワクとした気持ちで部屋を飛び出し、いつも通う駅へと続く道とは反対方向へ足を向けた。



柔らかな風がワンピースの裾を翻し、優しく肌を撫でていく。

すーっと大きく息を吸い込むと、春の香りが花をくすぐる。

可愛らしい小鳥のさえずりに誘われるように空を見上げれば、ピンク色の世界が視界一杯に広がった。




「うわ・・・・桜だ。」




遊歩道に沿って桜並木がどこまでも続いている。

神奈川を出て、この町に住むようになって数年になるけど、こんな桜並木があるなんて知らなかった。


ヒラヒラと舞う花びらに誘われるように、桜のトンネルを潜った。


犬の散歩やウォーキングをしている人達の中をのんびりとした歩調で歩いて行く。

今が満開なのだろう。足元にはすでに散った花びらが歩道に落ちて小さな斑点を作っていた。



『咲き誇った花も綺麗だけど、こんな風に散って地面に広がる光景も綺麗だね。』

『そうか?俺はやっぱ木を覆いつくすくらいに咲き乱れた桜の方がいいけどな。』



不意に彼との会話がリフレインする。

桜の下でニカッと笑った笑顔も一緒に思い浮かんで、ふふっと口元に笑みが浮かんだ。


神奈川も桜が咲いているだろうか?

向こうはまだ七部咲くらいかもしれない。

ブン太もこうして桜を見上げているかな?

そして私を思い出してくれるかな・・・?


バッグから携帯を取り出して、遊歩道に広がる斑点模様をフレームに収める。

それをメールに添付して送信ボタンを押した。


ブブッ・・・・


送ってすぐにメールを受信して携帯が震える。

あれ?もしかして送り返された?


おかしいなとボタンを押して表示させれば、送信者名にブン太の文字。


メールを開封してみると、「すごいだろぃ」の一言と桜の花を写した添付画像。

同じ時に桜を見て、同時にお互いにメールを送っていたなんて・・・・。




「あはは。すごい偶然。」




すぐに桜の画像が、着信画面に変わる。

そこに書かれた名前に胸が高鳴る。




「もしもしブン太?」

「よう。サクラも桜見てたのかよ?」

「うん。すごい偶然だね。」




久々の電話なのに、全然そんな事を感じさせないブン太の声。

寂しいって思ってるのは私だけなのかな?なんて不安になった事もあるけど、

それは私を心配させないための彼の優しさだって今は知ってるから・・・。


久しぶり。元気?なんて言葉じゃなく、いつも傍にいた時と変わらない会話を始める。




「画像届いた?」

「お前桜っつったら花撮るだろ普通?」

「だってブン太、花だったらなにも言わなくても見るだろうけど、散った花は見ないでしょ?」

「俺じゃなくても見ないっつーの。」

「綺麗なのに・・・・。」




携帯を耳に当てながら歩き始める。

すぐ傍で聞こえる声に、隣にブン太がいるような気になる。




「花見してぇな・・・・。」

「いいね。あ、でもブン太とお花見するならお弁当作りが大変だからな・・・」

「なんだよ。俺の為に苦労しやがれ。」

「うわ。そんな事言っちゃうんだ。」

「うそうそ。俺のために弁当作ってくださいサクラ様!!」




いたずらっぽい笑顔で、ウインクしながら手を合わせるブン太が想像できて笑いが漏れる。

いつもブン太のその可愛いお願いに負けちゃうんだよね・・・。




「でもブン太お弁当作って行ったらお弁当ばっかりで花見そっちのけじゃん?」

「花見は弁当食うためのもんだろぃ?」

「お弁当ばっかりじゃなく、桜とか・・・・・たまには私も見て欲しいんだけどな・・・・。」

「バ、バーカ!俺はいつでもお前の事見てるっつーの!」

「本当かな・・・・?」

「おう!桜の下で見るサクラは一段と綺麗だぜ?」

「全然心が篭ってない。」

「だぁ~!!そんなハズイことマジで言えるかってーの!!」




お互いの笑い声が受話器越しに聞こえる。

ブン太との会話はすごく楽しいけど・・・・・何か物足りない。



ブン太が隣にいない寂しさを紛らわせる事はうまくなったけど、慣れる事はない。

ブン太の声を聞くだけで心の充電は出来るけど、満タンにはならない。



逢いたいなぁ。

逢って、生のブン太の声を聞いて、笑顔を見て、ブン太の体温を感じたいよ・・・・・。




「ブン太。」

「ん?」

「花見しよっか?」

「だから今その話してたんじゃねーの?」

「違うよ。本当の花見。」

「はぁ?」




天気は快晴。気分は上上。

こんな日は・・・・・・大胆に動いてみるのもいいかもしれない。



歩いてきた桜並木を戻っていく。

来た時よりも早いスピードで。




「お弁当もお菓子もないけど・・・・・」

「サクラ・・・?」

「私がいればいいよね?」




髪に桜の花びらをつけたまま、私は電車に飛び乗った。



桜前線上昇中

(駅のホームに降り立った私を、ブン太の満開の笑顔が迎えてくれた)


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ブンちゃんハッピーバースデイ!


藍ちゃんリクのブンちゃんSS.

せっかくなので誕生日にUPしてみました。

もう桜散っちゃったけどね。(苦笑)