「さ、寒い・・・・・」
寒いならどこか暖かい場所に移動すればいいんだろうけれど・・・・。
寒空の下、コートの中を前後左右へと走り回っている仁王。
引退後久しぶりのテニスだからなのか、部活とは違うお遊び感覚だからなのか、
時折歯を見せて笑ったり、得意気にラケットを回したりと、とても楽しそう。
あんな風にはしゃぐ仁王を見るのは初めてで、なんだか可愛い。
そんな仁王をもう少し見ていたくて、寒さに耐えながらコート脇のベンチに座っている。
だけどそろそろ限界かもしれない。
手袋をしているのに冷たい指先。
鼻の頭もじんじんと痛い。
顔の周りをふわふわと漂う白い息に、なんでこんなに寒いのよ!!と、怒りをぶつけそうになる。
やっぱ校舎の中で待ってよう。
これ以上居たら凍死するな。と思った私は、横に置いたバッグを掴みベンチから立ち上がった。
そんな私の姿を捉えた仁王が慌てたように駆け寄って来る。
「帰るんか?」
「ううん。寒すぎるから校舎の中で待ってる。」
寒さで固まった頬をぎこちなく上げながら微笑んで見せる。
だけど仁王は表情を曇らせてしまた。
「すまんかったのう。大丈夫か?」
「うん。何か温かい飲み物でも飲んだらすぐに身体も温まると思う。」
だから心配しないで。と、さっき以上の笑みを見せた。
それでも仁王の表情は明るくならない。
そんなに心配してくれてるのだろうか?
それとも寒空の中座らせていた事に罪悪感を感じてる・・・?
しかし仁王の曇った表情は、そのどれでもなかったようだ。
「寒いとは思うが・・・・・・もう少しだけ見ててくれんか?」
「え?」
「お前さんが見とってくれんとヤル気がおきん。」
捨てられた子猫のように縋る目で私を見るその顔に、グッと咽が鳴った。
なんてずるいんだろう。
そんな顔でお願いされたら「嫌だ」なんて言えない。
「で、でも・・・・・」
「寒いならコートの下に俺のジャージ着とけばええ。あと俺のコートを膝掛けにしんしゃい。」
自分の着ていたジャージを脱いで私のコートのボタンを外しだす。
コートとはいえ、ボタンを外される行為に全身が燃えるように熱くなって、
慌てて「じ、自分で外すから!!」と、その手を止めた。
ニヤリと笑う仁王に、してやられたと思ったけど、反論するだけ無駄だろう。
仕方なくコートのボタンを外し、仁王のジャージを受け取った。
まだ彼の温もりが残るジャージ。
それに袖を通すのかと思うとなんだか恥ずかしい。
「『なんだか仁王に抱きしめられてるみたい・・・・』とか思っとるんじゃろ?」
「ち、違っ!!」
「ククッ。顔が真っ赤ナリ。」
冷たかったはずの顔に熱が集まる。
恥ずかしさを誤魔化すように乱暴にジャージに袖を通し、すぐにそのジャージを隠すようにコートを羽織った。
「どうじゃ?温かくなったか?」
「・・・・・・なってない。」
すっかり仁王ペースに乗せられてしまったのが悔しくて、
せめてもの抵抗のつもりで、拗ねた素振りを見せた。
だけどやっぱり私が仁王に勝てるはずなんてなかった。
「それはいかんのう。なら俺が温めてやるぜよ。」
「は?」
引き寄せられた腰。
掴まれた後頭部。
目の前には、ニヤリと笑った仁王の顔。
あっと驚く間もなく塞がれた唇。
強い力で固定され抵抗さえも出来ない。
なぞるように唇の上を滑る舌は、なにかの生き物のように口内へと入り込み、逃げる私の舌を絡みとる。
後ろで「なにやってんスかーーーー!!!!!」と、叫ぶ切原君の声が聞こえたけど、
もう私の頭は半分以上思考能力を失っていて、ただ仁王の唇を受け止めていた。
冷たい唇があっという間に熱くなり、その熱は全身へと伝わる。
息が上がり酸欠状態になりかけた時、やっと唇が離れた。
「どうじゃ?温かくなったじゃろ?」
「はぁ・・・・はぁ・・・・・・」
「もう少しで終わるから、いい子で待っときんしゃい。」
悠々と立ち去る仁王に声をかける事もできず、私はへなへなとベンチへ座り込んだ。
おかしいな・・・・。
付き合い始めは意外と恋愛に慣れてないと思ったのに、
まさかこんな人前でキスをするようになるなんて・・・・・・・
まだうつろな意識の中で、ボーっと仁王の後ろ姿を見つめていると、「あ、そうじゃ」と、仁王が振り返った。
「また凍えそうになったら言いんしゃい。俺がしっかり温めてやるぜよ。」
肌寒い日には、きみとキスを
(仁王の馬鹿と思いながらも、それが嫌だと思わなかった私も馬鹿かもしれない)
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昨日の続きデス。
若の誕生日なので若SSに変えようかと思ったけど、やっぱり仁王でww
私ここ5日ほど布団で寝てないんですよ。
ストーブの前で丸くなったまま朝を迎える日がつづいてまして・・・・。
昨日こそは・・・・と思ったのに、今朝は湯船で目が冷めました。(笑)
今晩こそは布団で寝たいデス。←
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