むちゃぶり企画⑧ 煕爾ちゃんリク 大石SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

もうすぐ部活が始まる・・・・

早く行って着替えなきゃ間に合わない。


わかってはいるけど、どうしても動く気になれない。



冬の屋上は寒い。


スカートから覗く脚やフェンスを掴む手が、凍ってしまうんじゃないかと思うくらいに冷たくなってきた。




「煕爾?」

「大石先輩!?」




フェンスの向こうに見える街を見下ろしていると

後ろから優しく名前を呼ぶ声・・・・。


弾かれたように振り向くと、心配そうに私を見る多いし先輩が立っていた。




「どうしてここが・・・・?」

「どうしてかな?なんとなく煕爾がここにいる気がして・・・・」




ゆっくりと近づいてきた大石先輩は、私の横に並び同じように街を見下ろした。


誰にも言わずに来たのに・・・・

どうしてわかってしまったんだろう・・・・?


大石先輩の横顔をじっと見つめていると、街を見ていた視線が私の方へと向いた。




「俺、屋上って初めて来たよ。けっこう景色がいいんだな。」

「そうですね・・・・。」

「煕爾はよく来るのかい?」

「いえ、私も今日初めてです。」




基本的に屋上への立ち入りは禁止されている。


だから真面目な大石先輩が私を探してここまできてくれた事に

驚いたと同時に少しだけ嬉しく思った。




「だけど、景色はいいが寒いな・・・・。煕爾は寒くないか?」

「平気です・・・・。」

「平気じゃないだろう?ほら、指先がこんなに青白くなってる。」




大石先輩はそう言いながら、フェンスにかけた私の手を取って、

両手で包み込むように握り締めてくれた。


大石先輩の優しい温もりが、ジワジワと手を通して心にまで伝わってくる。

その温もりになぜか涙が零れそうになった。




「このままじゃ風邪を引いてしまう。中に入ろう?」

「・・・・・私はもう少しここにいます。」




せっかく探してここまできてくれたのに・・・・・

なんて可愛くないんだろう。


でも今先輩と一緒にいたら、本当に泣いてしまいそうで、

心の乱れがおさまるまで、もう少しここにいたかった。



大石先輩の困った顔をそれ以上見ていられなくて、

握られた手をするりと解き、さっきと同じようにフェンスに手を置いて街に視線を落とした。



先輩が動く気配を感じる。

呆れて帰ってしまったのだろう。



そう思ったのに、その気配は遠ざかる事はなく、

それどころか私を後ろから抱きしめてきた。



背中に感じる温もり。

風に混じる大石先輩の香り・・・・




「煕爾。俺はそんなに頼りない?」

「え・・・?」

「その悩みを打ち明けられないほど、俺は情けない男かい?」




抱きしめられた腕に力がこもる。


その腕の力が先輩の苦しみを伝えているようで、

「ごめんなさい」と、涙を零した。


先輩を苦しめたいわけじゃないのに・・・・・

こんなに優しい先輩を苦しめることしかできない自分が情けなくて涙が止まらない。




「違うんです。先輩はとても頼りがいのある先輩です。」

「ならどうして・・・・・」

「だって・・・・こんな悩み先輩に打ち明けたら、もっと困らせてしまう。」




悩んだって、泣いたって、どうしようもない事。

そんな事は頭ではわかっている。

それでも心がその事実を受け止めきれない。




「喜びや悲しみは、共に分かち合いたいと思ってる。」

「え・・・・?」

「だから煕爾の苦しみや悩みも、俺に分けてくれないか?」

「大石先輩・・・・・。」

「困ったりなんてしない。俺の知らないところでこうして泣いてるのかと思う方が苦しいよ。」




先輩のその言葉に、崩れ泣きそうになって、

私は先輩の腕の中でクルリと身体を回転させその胸に縋りついた。


ただ泣き声を上げる私を、先輩はただ抱きしめ

私自身が自分で思いを打つ明けるのを、じっと待っていてくれた。




「先輩の外部受験・・・・応援したい気持ちがあるのは嘘じゃないです。」

「うん。」

「でも・・・・もう先輩が青学にいないと思うと苦しくて・・・・」




先輩はこの春に中学を卒業する。


そして卒業後は・・・・青学高等部には進まず、外部へ受験をする事が決まっている。


学年の差は埋められない。

それでも1年我慢すればまた同じ校舎で過ごせると思っていた。


だから外部へ行くと聞かされた時は、頭が真っ白になった。


無理やりにでも、どうにか自分を納得させてきたのだけど、

先輩の受験が近づくにつれ、支えがなくなったように心が歪みだした。


このまま時が止まればいいのにとか、

受験に落ちたら青学に残ってくれるのかな?とか・・・・・

そんな事ばかり考えてしまう。


素直に応援できない自分が嫌だ・・・・。

でも先輩がいなくなってしまうのも嫌だ・・・・・




「ごめんなさい・・・・。」

「どうして謝るんだい?」

「・・・・こんな子供っぽくて、自分勝手で・・・・彼女失格ですよね・・・。」

「それを言うなら・・・・煕爾をこんなに苦しめていながら言われるまで気づかなかった俺の方こそ彼氏失格だな。」

「そんな事ないです!!」




俯いていた顔を上げ、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま先輩を見上げると、

優しい微笑を浮かべた大石先輩が、指で目尻の涙を拭ってくれる。

そしてよしよしと子供をあやす様に頭を撫でてくれた。




「確かに学校が違うと今までのようには会えないだろう。」

「はい・・・」

「でも、会えない分会えた時は嬉しいし、会える喜びを感じあえるんじゃないかな?」




先輩が言うことはよくわかる。

だけどやっぱり・・・・・・・・・・




「寂しい思いをさせないとは断言できない。でも、それは俺の愛で埋めてみせるよ。」

「え・・・・?」

「なんて・・・・ちょっとクサイかな?」





恥ずかしげに笑う先輩の顔はこの寒空の下で真っ赤になっている。


『愛』なんて聞きなれない言葉に、先輩と同じように私まで恥ずかしくなって、

顔が赤くなっていくのを感じた。




「無理に納得してくれとは言わないよ。不安な時は不安だと、苦しい時は苦しいと・・・・

その度にちゃんと気持ちを伝えてくれないか?そうしたら、俺がその度その不安や苦しみを消してみせるから・・・・」




「またクサかったかな?」と、頭を掻く先輩に、私はポロポロと涙を零しながらも、

嬉しさを伝えるように微笑んで見せた。



きっとまたこうして悩んで泣いて・・・苦しんで・・・・

不安に心が押し潰されそうになる時があると思う。


それでも大石先輩となら・・・・きっと2人で乗り越えていけるだろ―――――



Now And Forever
(想い合う気持ちが大切なんだと、貴方が教えてくれたこの日を忘れない――――)

*******************************************


煕爾ちゃんリク大石SS.。


これまた初書きキャラ!!

大石って焼肉奉行のイメージしか頭に沸かなくて

原作読み直してきましたよ!!ww


でもやっぱわかんねぇ・・・・・

ちゃんと大石になってますかー!?


ちょいシリアスチックになったけど・・・・こんな感じでいかがかな?



リクどうもありがとう!!