久しぶりに書いたよ!ユッキー夢 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

not repent



また見られてる・・・・。


ビシバシ突き刺さる視線は、『気のせい』で済ませられるほどさりげなくもなく、見るというより凝視に近い。

ってかガン見もいいところで、ドキッとかトキメキより恐怖を感じて仕方ない。



別に特別顔が良いわけでも、ずば抜けて頭がいいとか運動が出来るとかでもない。

ごくごく普通の一般女子。

自分のレベルくらい自分がよくわかってる。


ただ唯一褒めれるものがあるとしたら、たぶんそれは根性だろう。

自分で言うのもなんだけど、根性だけはその辺の男子にだって負けないつもりだ。


だけどその根性も、そろそろ折れてしまいそう・・・・・




「ねぇ、やりにくいからこっち見ないで!!」

「俺が誰を見ようと勝手だろう?」

「私が嫌だっつってんだから見るな!!」

「ふふ。そんな顔真っ赤にして・・・照れてるのかい?」

「ちっげーよ!!どうみても怒ってんだろ!!」




も~いやだ!!!

コイツどうにかして!!!


儚く、物腰柔らかそうに見えるのは本当に見た目だけで、

中身は鋼鉄だよ剛鉄!!

どんな攻撃ももろともしない!!



やつの名前は幸村精市。


テニス部の部長で、神の子と呼ばれている。

そして私の悩みの根源である。


さっきも言ったけど、私はごく普通の一般女子だ。

そんな私のどこがよかったのか、私はこの諸悪の根源に気に入られてしまったようだ。


毎日毎日穴が開きそうなほど見つめられ、呪いの言葉としか思えない口説き文句に、

セクハラで訴えてもいいほどのボディタッチ。


「あんなに想われるなんて・・・幸せじゃない。」なんて友達は言うけど、

これは「想われてる」っていうより「嫌がらせ」でしょ!?


ホント心が休まることはなく、最近じゃ幸村の顔を見るだけで拒絶反応が出る。



私は1年からテニス部のマネージャーで、幸村とはともにテニス部で過ごしてきた。

有能なマネージャーってわけでもないかもしれないけど、

あの濃い部員の中でマネージャーなんてやっていられる女子もそういないと思う。


身体全体が胃のようなヤツとか、猫みたいに放浪癖があるヤツとか、

殴ってやりたくなるくらい頭の固いヤツとか、他にも色々いたけど

そんな中で1番手を焼いていたのは幸村だった。


ホントどんな育て方されたらそうなるんだ?ってくらい我が侭気ままの偏屈やろう。

それでも言いたい事言い合いながらも部員をまとめる幸村を私は尊敬してたし、

一緒にテニス部を支えていきたいと思っていた。


それが昨年の冬に幸村が倒れた。


幸村がいないテニス部は魚のいない水槽のようで・・・

世話を焼く必要なはいけどそれが物足りなくて、テニス部にとって幸村の存在がどれだけ大きかったのかを

部員全員が感じたことだろう。


自信に満ち溢れていた瞳は色を失くし、細りゆく手足に目を背けそうになった。

このまま幸村は・・・・・そんな不安を感じたこともあったけど、

真田を筆頭にみんなが前を向いて幸村の帰りを待つって言うから、私も幸村を信じて帰りを待つ事にした。


幸村はみんなの願いどおり、戻ってきた。


あの頃と変わらない微笑を浮かべながらコートに戻ってきた時は

不覚にも熱いものが込み上げて涙を流してしまった。


その時だ。


滲む視界の中で、幸村がとんでもない爆弾発言を落とした。




「俺の為に泣いてくれてるのかい?ゾクゾクするね。もっと泣かせたくなるよ。」




私の思考も涙も一瞬にして止まったのは言うまでもない。

後ろにいた他の部員全員も、一時停止していた。


その日を境に、部長とマネージャーというだけの関係は崩れ、

私にとっては悪夢のような日々が始まった。



「また俺の為に泣けよ。」

「あ、俺の下で啼いてくれてもいいけどね。」

「ただし俺以外の前で泣くのも、啼くのも禁止だから。」


なにがどうしてこうなってしまったのか・・・・?

手術して病気は治ったがその代わりに頭がおかしくなったのだろうか・・・・?


本気でそんな心配もしたけど、どうやら幸村は病気をしたことで、
「人間、いつどうなるかわからないから、毎日悔いのないように生きよう」と、思うようになったらしい。


それは素晴らしい考えだとは思うけど・・・・それに私を巻き込むのは勘弁して欲しい。




「ひとはも素直に生きるといいよ。」

「勝手に名前で呼ばないで。」

「ずっと呼びたいと思ってたのを我慢していたんだよ。」

「そのまま我慢しててよ。」

「悔いのないように生きてるだけさ。」




また出たよそのセリフ・・・・・。

何かあるとすぐにそのセリフを言う。


『悔いのないように生きてるだけ』


なんとも便利なお言葉で・・・・



こんな感じで押して押して押しまくってくる幸村。

みんな最初はビックリしてたけど、今じゃ面白おかしく鑑賞されている。

見てないで助けて欲しいものだが、そんなチャレンジャーは誰もいない。





今週はテスト前で部活も休み。

しばらくの間幸村から離れられる。そう思ったのに・・・・


図書室で勉強していると、誰かが隣に座る気配。

ふと顔を上げれば、輝かんばかりの微笑を浮かべた幸村がいた。


見なかったことにしようと教科書に視線を戻すが、

いつもの凝視攻撃に見られている方の顔がひくひくと引き攣りだす。




「・・・・・ねぇ。なにがしたいの?本気で勉強の邪魔なんだけど。」

「ただ見ているだけだろう?」

「それが嫌なの!」

「ひとは。ここは図書室だよ?静かにしろよ。」




ムッキー!!!

お前のせいだよ!!お前の!!


ノートの脇に置いてある参考書で殴ってやろうかと思うほどに、わなわなと手が震える。


しかし幸村の言うようにここは図書室。

これ以上騒げば追い出されかねない。


気持ちを落ち着かせようと息を吐き出し、凶器にならぬよう持っていたペンを置いた。




「どうすれば消えてくれるの?」

「俺を満足させたら帰ってあげるよ。」

「はぁ・・・じゃぁどうすれば満足するの?」

「ひとはと話がしたい。」




真っ直ぐと見つめるその視線の強さに、胸がどきりとする。


そう言えば幸村から迫られるようになってから、こんな風に幸村の目を見た事があっただろうか?

『話がしたい』と言う言葉に、まともに会話さえしなくなったと気づく。




「10分だけ休憩するから。その間だけならいいよ。」

「ふふ。ありがとう。」




素直にお礼なんて言われてなんだか気まずいというか気恥ずかしい。

浮かべられた笑顔もいつもの含みある笑顔じゃなく本当に嬉しそうで、

不覚にも胸がキュンと鳴ってしまった。


そんな自分を悟られないように、「で?どんな話をすればいいの?」と、そっけなく返す。




「ひとはって今まで付き合ったヤツいないよね?」

「・・・・いないけど?」

「まぁそうだろうな。」




何が言いたい!?

私に付き合ったやつがいないのは当たり前とばかりの口調と表情にムッとする。


そんな私を幸村は嬉しそうに見つめ、「怒った顔も可愛いよ。」なんて微笑を浮かべる。




「か、からかわないで。」

「他のヤツから見たら変な顔だけどね。」

「はぁ!?喧嘩売ってんの?」

「ふふ。俺にとってはどんな顔も可愛いって事さ。」

「・・・・・・・。」




幸村は真田同様自分の心に正直だ。

思ったことをそのまま口にしてしまう。

真田はただの天然って言うか・・・「バカだこいつ。」程度で流せるけど、

幸村の場合は周りをヒヤヒヤさせる事が多い。


それはそれで迷惑だけど、そんな幸村のフォローと言うかお守りをしているうちに、

その言葉の中に仲間を信頼しているからこその甘えが混じっている事に気づいた。


大人ぶっていても、所詮幸村も中学3年生だ。

常勝立海を背負うのは容易い事ではない。

そんな中で仲間とのコミュニケーションは、幸村にとって1番心安らぐ時なのだろう。


弄り倒されている真田や赤也、それに巻き込まれるような他の部員達だけど、

それはそれでも許してもらえる、受け止めてくれる。

そんな信頼と甘えがあるからこその態度なのだ。


そう考えれば、私もそう思ってもらえてるということなんだろう。

幸村に信頼されている。それはマネージャーとして嬉しい。


でもだからこそ、私は幸村の言葉が、マネージャーとしての私への甘えなのか、

本気で異性として想いを寄せてくれているのかを計りかねている。




「なにを考えているんだい?」

「幸村はさ、私になにを求めてるの?」

「別に何も求めはしていないよ。あえて言うならその身体かな?」

「・・・・・・。」




コイツと真剣に向き合おうとするのが間違っているのか・・・?

もう溜息しか出てこない。




「ならひとはは、恋人になにを求めるんだい?」

「え?私?そうだな・・・安心とか愛情とか?」

「ふーん。」




なにさ!!その「普通だな。つまらない」とでも言いたそうな顔はよ!!

でもそんなもんでしょ!?優しさとか癒しとか・・・・そういうもんじゃないの!?


幸村は机に肘をついて私の顔を覗き込むように視線を向けながら、

今度は、「じゃぁさ、ひとはの理想のカップルは?」と、聞いてきた。


理想のカップルね・・・・。


お互い自然でいれて、素直に言葉を伝え合えたり、思い合えたり・・・

そういう信頼と尊敬を持っていられるようなカップルが理想だ。


だけど私はそれをそのまま口にはせず、さっきの仕返しとばかりに、意地の悪い答えを返した。




「ん~・・・・鼻クソつけ合ったりできるようなカップル。」

「鼻クソ?」

「そう。飾らない汚い部分も見せ合える感じ?まぁ、幸村にはムリでしょ?そんなことできるわけ―――!?」

「こうかい?ふふ。どこにつけて欲しい?」




NO――――――っっっ!!


幸村は私の『鼻クソ』発言に少し驚いた顔をしていたけど、

私が参ったかとばかりに鼻を鳴らしかけた時、スラリとしたその細い指を何の迷いもなく鼻の穴に突っ込んだ。




「ちょっと!!!なにしてんのよ!!やめてよ!」

「鼻クソ付け合うんだろ?」

「そんな突っ込まないで!!誰かに見られたらどうするの!?」

「別にどうもしないけど?」

「私が困る!!」




ファンの子が見たら泣くぞ!?

ほら!!向こう側にいた後輩らしき女の子がギョッとした顔でこっちを見てるじゃないか!!


これでもか!!ってくらい指を鼻の奥に突っ込みながら、ニコニコ笑う幸村に眩暈がする。


なんなんだコイツは?

私が言ったらなんでもやりそうで怖い。


とりあえずポケットティッシュで指を拭かせ、その間に私は教科書とノートを鞄に押し込み、

幸村の腕を引いて図書室を逃げるように後にした。





夏休みも間近。


校舎の外は夕日に赤く染まっているが気温は高く、

ムワッとした暑さが冷房で冷えた肌を一瞬にして熱くした。


校舎を抜けて裏庭の人気の少なそうな場所に行く。


誰もいないことを確かめて、私は幸村の腕を放し、

噛み付くように怒鳴り散らした。




「何考えてるの!?あんなことして!!」

「ひとはがして欲しいって言ったんだろ?」

「言ってないから!!勝手に人のせいにしないで!!」




私が強要したみたいな言い方しないで欲しい。


さっきの驚いた顔をしていた女の子の顔が頭に浮かぶ。

あの顔は私がさせたんじゃないんだから!!




「なにを怒ってるんだい?」

「怒るでしょ?普通。何考えてるのよ!」

「俺はいつだってひとはの事を考えているよ。」

「やめてよもう・・・。私は幸村のお母さんでも、幸村専用のマネージャーでもない。甘えたいなら他をあたってよ。」




思わず本音が口をついた。


しまったと思った時にはもう遅く、ハッと見上げた幸村の口端がニヤリと上がる。

慌てて後退りするが、伸びてきた腕に逃すまいと抱きとめれた。


薄いシャツから幸村の体温を感じ、全身がカーッと熱くなる。

逃げようともがいてみてもその腕は強まるばかりで離してはくれない。




「幸村・・・離して・・・・。」

「本気で嫌なら蹴飛ばしてでも逃げればいい。」

「そんなこと・・・」

「まぁそれでも離す気はないけどね。」




どっちだよオイッ!!なんて突っ込む余裕も今はない。

どこで鳴っているのかわからないほど身体のあちこちがドキドキしている。


あぁ・・・捕まってしまった。


うまく回らない思考の中で、唯一浮かんだ思いはそれだった。




「決定的な言葉がなくて不安だった?」

「知らない・・・・。」

「ふふ。困った顔をしながらも不安で瞳を揺らすひとはは可愛かったよ。」




なんてヤツだ・・・・。

幸村は最初から私の気持ちを知っていたの言うのか!?


ごく普通の一般女子の私。

マネージャーをやってるおかげで他の女の子達よりも近い存在ではあったけど、

そんな事なんの自信にもならなかった。

「マネージャーだから甘えてるだけ。だから本気じゃない。」そう思う事で、逃げ道を作っていた。


それでもどこか期待する気持も捨てきれず、言い寄られる度に不安と期待をいつも抱いていた私。




「幸村なんて大嫌い・・・。」

「そんな事を言う口は塞いでしまおうか?」

「は?何言って・・・・・」

「なら好きだって言えよ。俺が好きだと・・・・言ってみろよ。」




「言えよ」とか「言ってみろよ」とか・・・・・あんた何様ですか?

って言うか私から言うの?

この場合先に幸村が言うべきじゃないの?




「幸村から聞きたい。」

「ふーん。そんなにキスして欲しいんだ。」

「違っ・・・なんでそうなるのよ!?」

「まぁいいよ。今の俺は機嫌がいいんだ。特別俺から言ってあげるよ。」




抱きしめられていた腕が緩み、生暖かい風が2人の間を吹きぬけていく。

ウェーブした髪を風に揺らす幸村の指が私の頬に触れた。




「ひとはが好きだよ。ひとはは俺の生きる希望で、未来への光なんだ。」

「幸村・・・・・」




まさか幸村からそんな言葉が聞けるなんて・・・・。


瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。


涙で揺れる視界の中で、あの日復活してきた時と同じような微笑を浮かべた幸村は、

「やっぱり自分の為に泣いてくれるってゾクゾクするよ。」と、涙を唇で拭い取った。




「ずっとこうしたかった。」

「幸村・・・・」

「好きだよ、ひとは。」

「私も―――」

「残念。タイムオーバーだ。」




幸村の唇が私の言葉を塞ぐ。


結局幸村がキスしたかっただけなんじゃないかと思ったけど、

その口付けは全てを包み込むように優しくて・・・・とろけるほどに甘くて・・・・


私は幸村の腕の中で、止まない口付けをいつまでも受け止め続けた―――――



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ユッキーの誕生日に何もできなかったので、久々にユッキー短編を書いてみました。


誕生日とはまったく関係ないけど、ユッキーおめでとう!!


私の中でTOP3に入るキャラですからね。

何もせずに・・・ってわけにはいれませんでした。


遅れたけどお祝いできてよかった♪


ヒロインの名前はひとはさんに了承を得て使わせていただきました!

先日のユッキー誕生祭のイラストは素晴らしかったです!!


よかったら見てみてください!!


ひとはさんのブログ⇒徒然日記

ひとはさんのイラストサイト⇒呉ノ藍