木漏れ日の下でベンチに腰掛ける姿を見つけ、私は笑みを浮かべた。
ウェーブのかかった髪が風に静かに揺れて、長い睫が白い頬に影を落とす。
コートの中じゃたくましく見えるけど、こうしていると女性と言っても通るんじゃないかと思う。
絵に描いたような光景に、しばらく見惚れていたけど、
「そんなに見つめられると照れてしまうよ。」と穏やかな声と共に彼の視線がこちらに向いた。
「気づいてたの?」
「俺がお前に気づかないはずがないだろう?」
それはそれで嬉しいような・・・怖いような・・・。
にこりと微笑む精市に、あははと笑って見せて、私は彼の隣に腰掛けた。
「もう委員は終わったのかい?」
「うん。待たせちゃってごめんね?」
「待つ時間も嫌いじゃないよ。」
そう言いながらそっと私の顔へ手を伸ばし、風に吹かれて顔にかかった髪を耳にかけてくれた。
くすぐったくて首を窄めると、指先が頬に触れた。
「精市の指冷たい。」
自分の両手で精市の手を包む。
動いていればそんなに寒さを感じはしないが、じっと座ったままだと寒かったのかもしれない。
「寒かったんじゃない?」
「いや。寒くはないよ。」
「でも手冷たいし・・・。室内に移動しようよ。」
もし風邪でもひいてしまったら大変だ。
そう思って立ち上がり、精市の手を引いて立ち上がらせようとしたのだけど、
逆に手を引かれ、そのまま腕の中へと閉じ込められた。
腰に巻きつく腕と、背中には精市の温もり。
すっぽりとおさまった精市の膝の間。
「こうすれば寒くない。」
確かにこれは寒くない。
でも寒いのは私じゃない。
「これじゃぁ私は寒くないけど精市は寒いままじゃない。」
「だから俺は寒くないって。それにこの温もりがあれば十分だしね。」
そういって私の首元に顔を埋めた。
精市の吐息が首にかかり、抱きしめる腕が強くなる。
甘えられてるんだと思うと嬉しくて、だけどまだ少し恥ずかしい。
「体温上がった。」
「そう簡単には上がりません。」
「ふふ。そういう事にしてやるよ。」
赤く染まった顔を隠すように俯く。
静かで他に誰の姿も見えないけど、ここは一応校内。
いつ誰が来るかわからない。
そう思うと落ち着かなくて、「精市。やっぱり中に入ろうよ。」と、言ってみたのだけど・・・
「そんなに俺と二人でいるのがいやなのかい?」
「そうじゃなくて・・・」
「それとも室内で二人っきりになれるところがいいって事?」
「なっ!?」
「ふふ。大胆なお誘いだなぁ。」
人が心配してるのに!!
からかってばかりの精市を背中越しに睨み上げると、ますます笑われてしまった。
「もう!」
「嘘だよ。心配してくれてるんだろう?ありがとう。」
「じゃぁ・・・」
「でも・・・・・もう少し。」
「え?」
「もう少しここでお前と二人こうしていたい。」
普段の意地悪な笑みと違って、とても穏やかで優しい微笑。
秋風にそっと瞳を閉じる。
包み込むような優しい腕と、精市の温もりに、心が穏やかになっていく・・・・
こんな放課後もたまには悪くない。
もう少し。もう少しだけなんだから・・・・・・
そう思いながら、精市の背中に身を預けた。
秋風の中で
(やっぱりこれだけじゃ暖かくならないな・・・)
(だから部屋に・・・)
(素肌じゃないからかな?)
(っ!?)
(じゃぁ、温もりに行こうか?)
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白いんじゃない?
白じゃないにしても灰色くらいでしょ!?
たまにはこういうユッキーも悪くないよね?ww
え?普通に黒いって?
私にはこれくらい全然黒じゃないですからー!!!←
拍手用SS。秋の恋人シリーズはこれにておしまい。