七夕企画 織姫をさがせ!! Vol.1 (立海逆ハー夢) | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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続き物です。先にこちらからお読みください。⇒ プロローグ








織姫をさがせ!! ー Vol.1 ー







夕方17時。


赤也君からのメール通りに、七夕祭りのやっている神社の前までやってきた。


17時くらいじゃまだまだ空は明るく、灯り始めたちょうちんの明かりも滲んで見える。


それでも、屋台からの掛け声や、漂うおいしそうな匂い。

祭りを感じさせるその雰囲気に、少しづつテンションも上がってきた。


赤也君まだかな・・・・?


手の持った輪柄の籠バックの中から携帯を取り出し時計を見ようとすると、

「お待たせしました。」と、どこかで聞いた事がある声が聞こえた。




「あれ?・・・・柳生君?」




声の方へ顔を上げると、夕陽を眼鏡に映した柳生君がすぐ隣に立っていた。




「女性を待たせてしまうとは・・・・申しわけありません。」

「え?いや・・・・私柳生君と待ち合わせしてたっけ?」

「忘れてしまわれたのですか!?」




反射して眼鏡の奥の瞳は見えないけど、クワッ!!と見開かれているような気がして

ビクッと少し後退ってしまった。


忘れてしまったのですか!?って・・・・・・。

私の今日の待ち合わせの相手は赤也君で、柳生君ではないはずなんだけど・・・・・




「柳生君。私誰かわかってる?」

「ええ。原さんを私が間違えるはずなどありません。」




自信満々にそんな胸張られても・・・・。

でも、私を誰かと間違っているわけではないとすると・・・・これはいったいどういうことだ?




「ごめん柳生君。私柳生君と約束した覚えがないんだけど・・・。」

「そんな事を言って私を焦らすのですか?」

「いやいや。焦らしてないし。」

「そうですか・・・・。あなたがそう出るのなら、私にも考えがあります。」

「え?」




意味のわかんない事を言う柳生君に戸惑っていると、

私が背にしていた壁に両手を着いて、その間に私を挟み込むようにし、

息がかかるほどにまで顔を近づけてきた。




「柳生君!?」

「これでも思い出せませんか・・・・?」

「お、思い出すも何も・・・・・」

「では・・・・・これならどうですか・・・・?」




壁に着いていた右手を自分の目元まで持っていき、

長い指で眼鏡のフレームを摘むと、ゆっくりと目を覆っていた眼鏡を外しだした。


まるでスロ-モーションのように外されていく眼鏡と、

その向こうから姿を現した裸眼に、私は目が離せない・・・・・。


初めて見た柳生君の瞳は吸い込まれそうなほどに深い漆黒の瞳で、

普段の柳生君とは違う艶を感じさせるその色と瞳の力強さに飲み込まれてしまいそう・・・・。




「どうです?思いだしてくださいましたか?」

「やぎゅ・・・・・くん・・・・。」

「クス。どうしましたか?顔が赤いようですよ?」

「や・・・・・あの・・・・・」




なんなんだこの状況はぁぁぁぁぁぁ!?


眼鏡を外した柳生君はなんだか別人のようだし、

クスリと笑ったその顔が、めちゃくちゃ意地悪そうなんですけど~!?


このままじゃヤバイ!!


そう思って押しのけようとした時、耳の横辺りでボスッ!と、何かが壁に当たる音がした。




「少しおふざけが過ぎたようですね。」

「へ?」




眼鏡を掛けなおしながら私から身体を離していく柳生君の足元に

なぜか黄色いテニスボールが押転がっていた。


今のって・・・・・・このボールが壁に当たった音・・・・?




「柳生くん・・・・・。」

「切原君は遅れるそうです。彼が来るまで私達テニス部が原さんをエスコートいたしますよ。」

「はぃ~!?なにそれ!?そんな話聞いてないよ!?」

「先ほど決まったばかりですからね。」




いやいやいやいや!!!

なんだそれは!?


赤也君が遅れるってどういう事?

そして何でそれでテニス部メンバーがエスコートする事になるの!?


先ほど決まったばかりってなんだ!?

テニス部がエスコートってなんなんだぁ~!?


ちょっとまってよ・・・。

って事は・・・・今は柳生君だけだけど、そのうち他のメンバーとも合流する事になるって事・・・?


今すぐ赤也君に連絡したいところだけど、おそらく電話は通じないだろう。
なぜならこの背後に、精市君の黒い影を感じずにはいられないから!!




「そんな心配そうな顔をされなくても、切原君は必ず来ますよ。」

「けど・・・・・。」

「それまでただボーっと待っているのはもったいないでしょ?私と楽しみませんか?」




そう言いながら私に手を差し伸べる柳生君。


精市君が何を考え何をしようとしてるのかはわからないけど

どうせここで逆らったって無駄だということくらいはわかる。


私は諦めたように溜息を落とし、柳生君の手を取った。




「ではどうぞよろしく。」

「仰せのままに。・・・・私の織姫。」




織姫!?

今織姫って言った!?

しかも『私の』とかサラッと言ったよね?




「柳生君熱あるの?」

「あるとしたら、それは原さんへの想いに体が焼け付くように熱くなっているからでしょう。」

「ふーん。すごいね・・・・・。」




今夜の柳生君はずいぶんと壊れているみたいだ。

一々相手にしてたらこっちが疲れてしまう。

もう簡単に流してしまおう。




「じゃぁ行こうか?」




何か言いたげな顔をしていた柳生君にニカッと、笑顔を向けて、

屋台の並ぶ神社の鳥居をくぐった。








「ねぇ。他のメンバーはどこにいるの?」

「さぁ?私にもわかりません。」

「えぇ!?」

「ですがそのうちあなたをさらいに来るでしょう。」

「さらわれるんだ私・・・・。」




どういう設定だよ!?


とりあえず他のメンバーはそのうちやって来るようだ。

そうなると・・・今のうちに力つけといた方がいいかな・・・・?




「柳生君。何か食べない?」

「そうですね。私もおなかがすきました。」

「何がいいかな・・・?」




境内ずらりと並ぶ屋台からはいい匂いが漂ってきて、あれもこれもと目移りしてしまう。




「クレープ食べたいな・・・・。」

「それはデザートですよ。」

「こういう時は何から食べたっていいじゃん。」

「いけません。先にちゃんとした食事を取らないと。」

「こんな屋台でちゃんとした食事も何もないんじゃ・・・・?」

「何かおっしゃいましたか!?」

「いいえ。な~んにも!」




今日の柳生君は壊れてると思ったけど、こういうところはやっぱり柳生君だ。


仕方なく私はじゃがバターと焼き鳥を買い、設けられていたベンチへと腰掛けた。




「柳生君何買ったの?」

「たこ焼きです。」

「えー!?それだっておやつみたいなもんじゃん!ちゃんとした食事じゃないし!」

「私はおやつでたこ焼きは食べません。」




こに屁理屈男め!!


い~っと鼻に皺を寄せて見せた後、じゃがバターを食べようと口を開けかけると

「あ、ちょっと待ってください。」という声と共に、サッと膝の上に綺麗なハンカチが広げられた。




「せっかくの浴衣が汚れてしまっては困るでしょう?」

「あ・・・・・・・ありがとう・・・・。」

「いえ。あまりに綺麗で、タイミングを逃してしまいましたが・・・・・」

「え?」

「浴衣。よく似合ってますよ。」




あぁ・・・・・・不意打ちだ。



こんな風にさりげなく優しくされて、しかもそんな褒め言葉と優しい笑顔を向けられて、

ときめかない女がいるなら会ってみたい!!



急激に上昇した体温と、胸を打つ早い鼓動。



それはきっと、この熱々のじゃがバターのせいだと誤魔化すように

私は口いっぱいにじゃがバターを放り込んだ。









頬を掠める風が、少しだけ冷たくなったような気がした午後17時30分ちょっと前――




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柳生編でした。


今回も暴走柳生。

最後はちょっぴり紳士に・・・。ww