~ わ・が・ま・ま ~
朝学校にやってくると、校門前で美姫先輩が立っていた。
この春から高等部へ進学してしまった美姫先輩と、
朝からこうやって会えるのはもうないと思っていただけに驚いたが
それ以上に嬉しくて、思わず駆け寄ってしまった。
俺の姿を目にした美姫先輩は笑顔を見せ、
「お誕生日おめでとう!」と、1枚の封筒を手渡してきた。
「ありがとうございます。」
「じゃぁまた放課後ね!!」
「え!?美姫先輩!?」
「なんでもいいからね~!!」
「はあ?」
朝練がある為そんなに時間は取れないが、もう少しくらい一緒にいたかった。
だが美姫先輩は俺が封筒を受け取ると、すぐさま立ち去って行ってしまった。
しかもよくわからない言葉を残して・・・・・。
なんでもいいってなんだ?
もしかすると封筒の中に何か書かれているのか・・・・?
俺は急いで部室へと行き、ロッカーの扉に隠れるようにそっと封を切ってみた。
中に入っていた便箋には俺の誕生日を祝う言葉と、その・・・・なんだ・・・・・。
あ、愛の言葉ってやつが書かれていた。
だが肝心の『なんでもいいからね~』の答えになるようなもんは何も書かれていない。
どういうことなんだ・・・?
いくら考えても答えは出ず、とりあえず着替える為に便箋を封筒へ戻そうとした時、
封筒の中にもう1枚紙が入っているのが見えた。
なんだこれは・・・?
切符ほどの小さな紙。
うっかりしていたら気づかいなかったかもしれない。
その紙を指でつまむ様に取り出してみると、なにやら文字が書いてある・・・・・。
「誕生日プレゼント。『わがまま言いたい放題券』!?」
部活後校門へ急いで行くと朝と同じ場所で美姫先輩がいて、俺に手を振っていた。
「お疲れ様!」
「・・・・・ッス。」
「ねぇ!それで何か考えた!?」
「それって・・・・・これッスか?」
掌にあの小さな紙を乗せ美姫先輩へ見せると「そうそう!」と嬉しそうに笑っている。
やっぱりそうなんだな・・・・・。
美姫先輩らしいプレゼントだと思う。
「わがままもっと言いなよ!」とよく言っていたしな・・・・。
だが「わがまま」といわれたって早々思いつかないし、
それに男が好きな女にわがままなんて・・・・・・・・・言えるかよ。
「その気持ちだけで嬉しいッスから・・・・。」
「え~!?考えてないの!?」
「いや、俺は・・・」
「今すぐ考えてわがまま言って!」
「だからその気持ちだけで・・・・」
俺の胸倉を掴み詰め寄ってくる美姫先輩は、俺の意見はまったく聞こえてないようで
「なんでもいいんだから!早く!」と声を張り上げる。
なんでそんなにわがままを言わせたいんだ?
誕生日プレゼントとして何か形に残したいという事なんだろうか?
俺は朝から美姫先輩に会え、「おめでとう」と言って貰えてそれだけで満足だったんだが・・・・。
だけどせっかくの誕生日だ。
できるならこんな怒ったような、悲しそうな顔の美姫先輩より、笑顔の美姫先輩と過ごしたい。
俺がわがままを言う事で美姫先輩が納得できるならわがままを言うべきなのか?
だがなんていうって言うんだ?
「そんな困った顔させたいわけじゃないんだけどな・・・。」
「え?いや・・・そんな・・・・」
気持ちが顔に出ていたのか、捕まれた胸元が緩み美姫先輩の目が悲しげに揺れた。
慌てて弁解しようとしたが、苦笑いを浮かべた美姫先輩を前に言葉が出ない。
「なんか・・・ごめんね?」
「謝まる必要なんて・・・・。」
「薫はさ、いつも私のわががま聞いてくれてくれるでしょ?」
「そんな事・・・・・ないッス。」
「今だって『わがまま言って!』なんて言う私のわがまま叶えようとして悩んでくれてたんでしょう?」
「それは・・・・・」
美姫先輩の願いをわがままなんて思った事はない。
今のだってわがままだなんて思ったりしてねぇ。
困るような願いもたまにはある。
それでも、美姫先輩の願いなら叶えてやりたいと思う。
それは・・・・・
「好きな女の願いなら、叶えてやりたいと思うのは当たり前ッスから・・・・。」
格好をつけるわけでもなく、ただ喜ぶ顔や嬉しそうな顔が見たい。
ただそれだけだが、自分が笑顔にしてやれるならなんだってしてやりたいと思う。
口下手で想いの半分も言葉になんてできねぇから、せめて行動で示したい。
俺の言葉を聞いた美姫先輩は俯き顔を伏せてしまったが、
しばらくしてシャツを掴んでいた手が腕の下を通り、背中へと回された。
感じる美姫先輩の温もりに心が温かくなる・・・・・・
胸に顔を埋め俺の名を呼ぶ美姫先輩が愛しくて
俺も包み込むように美姫先輩を抱きしめた。
「好きな女って私?」
「当たり前じゃないッスか!」
「ふふ。私も薫が大好き!」
「俺も好きッス・・・・。」
「じゃぁ・・・・・私のわがまま聞いて。」
「なんッスか?」
「薫のわがままが聞きたい。」
「え?」
「私だって好きな男の子の願い叶えたい!薫の願い・・・・叶えたいよ。」
俺を見つめる美姫先輩の眼差しの強さと、言い出したことは最後までやり遂げようとする頑固さに、
やっぱり美姫先輩だな・・・・・と笑いそうになる。
そんな風に言われたら断れるはずもない。
それに・・・・・・そこまでして想われているのかと思うと嬉しくないわけがない。
そっと頬に手を添えてゆっくりと顔を近づけていくと、美姫先輩の瞳が閉じられた。
叶えられるはずがない。
だけど叶えて欲しいと思う。
意地悪じゃなく、試したいわけでもない。
純粋に、今俺が願う事・・・・・・・・・・。
甘い甘いキスに乗せて・・・・・俺は始めてのわがままを口にした。
今日はこのまま・・・・・・・・・・・・・帰したくない―――――
Happy Birthday Kaoru 5.11
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薫ちゃんハッピーバースデイ!!
昨日美姫ちゃんに無理やりリクを言わせてできた夢です(笑)
「薫ちゃんのわがままを叶えたい」ってリクをもらったんですが、
もうまるまるそのまんまですね。ww
最後の薫ちゃんのお願いが、叶えられたのかどうかは美姫ちゃんのみが知る!!なんちゃって♪
皆さんご自由にご想像ください。
美姫ちゃんも今日は薫ちゃん祭りで大忙しみたいですが、めっちゃ楽しそうです!
もうガンガン愛を感じますね!
これからも仲良しでラブラブな二人でいてね!
薫ちゃんおめでとう!!
そして美姫ちゃん頑張れ!!(笑)