~ 私の欲しいプレゼント ~
最近の真田は様子がおかしい。
私をチラチラと見たり、何か言いたそうに口を開いては閉じてを繰り返す。
正直見ててイライラする。
言いたい事があるならはっきり言えばいい。
男がもじもじするな!!
だけどいつも思った事ははっきりと言い、気持ちを隠したりできる人じゃない。
バカ正直というかただの天然というか、空気読めよ!と思うこともあるけど、
それが真田のいいところでもあるし、そんな所も含めて好きになったわけである。
そんな真田が私に何か隠してる!
それは苛つきと同時に私を不安にもさせた。
そんなに言うのを躊躇うほどに深刻な話なんだろうか?
もしかして別れ話とか・・・・?
いや・・・・それはないか。それなら態度でわかるはずだ。
なら何・・・・?
考えてもわかならいこの状況が私の心をより焦燥させる。
聞いてしまおうか・・・?
だけどよくない話だったら・・・?
そんな考えが浮かんでは消え・・・・を繰り返す。
だけどこんな日を過ごし続ける事に耐えきれず、真田に問い詰めようと心を決めた時、
「今度の日曜日一緒に出かけないか?」と誘われた。
真田の方から私を誘うだなんて今までにあっただろうか?
もしかして今まで言いよどんでいたのってこれ?
自分から誘った事がないから緊張してたとか?
そう思うとホッとしたのか笑がこみ上げてきた。
「何がおかしい?」
「ううん。真田から誘ってもらえて嬉しいなぁ・・・・って思って。」
「そ、そうか。」
「で?どこか行きたい所があるの?」
「うむ。ういんどぉしょっぴんぐとやらをしようかと思ってだな・・・。」
「は?」
「だから、ういんどぉ「いやいや、繰り返さなくていいから!!」
「お前が聞き返すからだろう?」
「だって真田の口からウインドーショッピングって・・・。」
頭でも打ったのだろうか?
自分の衣類はほとんどがお兄さんのお古で、ファッションに興味は皆無の真田がウインドーショッピング!?
それにウインドーショッピングという言葉を知っていること自体驚きである。
「何か買いたい物でもあるの?」
「いや・・・そう言う訳ではなくてだな・・・その・・・・」
「なに?」
「たまには普通のデートやらをしてみてもいいかと思ってな・・・。」
本当に真田どうしたの?
幸村の冷気を浴びすぎておかしくなっちゃった?
いっつも私がほぼ無理やりデートに連れ出していたっていうのに・・・。
嬉しいというより・・・・怖い。
「何かの罰ゲームとかじゃないよね?」
「そんなくだらん事をするはずがなかろう!?」
「幸村に言われたらやるでしょ?」
「むっ・・・・いや・・・そうは・・・・そうかもしれんが・・・」
やるんかい!!
思わず突っ込みの手まで出てしまいそうになる。
まあ、わかっちゃいたけどね。そうよね。真田は幸村大好きだもんね。
「だがこの誘いはそういうものではないぞ!」
「わかってるよ。」
なんだか色々疑問もあったけれど、真田の様子がおかしかった事が解決し、
不安だった気持ちも晴れた私は、それ以上深く考えるのはやめ、久々のデートを楽しむ事に決めた。
日曜日までは長かったようで早かった。
待ち合わせのショッピングモールまでやって来れば、入り口付近で仁王立ちをしている真田を見つけた。
図体がデカイうえにあの風貌。目立たない方がおかしい。
チラチラと通り過ぎていく女の子達が不審そうな目で見ているが真田は気にもしていないようだ。
吹き出してしまいそうなのを堪えながら真田の元へ駆け寄ると、私を見つけた真田の顔が少し緩んだ。
「おはよう。」
「もう昼だぞ?」
「じゃあこんにちは?」
「うむ。こんにちは。」
「あはは。変なの!!」
「挨拶の何が変だというのだ!?」
だって真田が「こんにちは」って!!
何がおかしいのかはわからないけど面白い!
しばらく笑っていたけどこれ以上笑うと不機嫌になりかねない。
「まずどこ行こうか?」
「昇華の行きたい所でかまわない。」
「ならまず服見ていい?」
「もちろんだ。」
基本的に服などの買い物は一人で来るタイプだけど、1度でいいからやってみたい事があった。
お気に入りのお店に入ると、真田は入り口付近で立ち止まっている。
「なにしてんの?」
「ここに入るのか?」
「普通のデートしてくれるんでしょ?」
「そ、そうだったな・・・。」
あまり広いとはいえない店内。
日曜という事もあってそこそこ込み合っている。
そんな中に真田が入ってくればさらに狭い。
それでも私はぴったりと隣に立たせ、「こんなのどう?」「あ、これは?」と真田に声をかけた。
「ね?聞いてるの?」
「もちろんだ。」
「さっきから「うむ。」しか言ってないじゃない!ちゃんと選んでよ!」
「し、しかしだな・・・・。」
真田の額には汗が浮かんでいて眉間の皺はいつもの10倍。
店員さえも近寄ってこないほど異様な空気をかもし出している。
本当なら試着室の前に立たせてその反応も見たかったけれど、
これ以上は可哀相に思えたし、なにより営業妨害になりかねない。
仕方ないか・・・と、私は最初から目をつけていた服を数点手に取りレジへと向かおうとした。
「買うのか?」
「そうだけど?」
「そ、そうか・・・だがもう少し他を見てからでもいいのではないか?」
「は?」
「何も急いで買う必要はないだろう?」
何言ってんの?
真田とこういう買い物に一緒に来た事はないが、真田は優柔不断ではないし、
これ!と決めたらそれから変更などする事はない。
外食しても私が少しでもメニューで悩むだけで「早く決めんか!」と言うほどだ。
そんな真田が他を見てからでも・・・?
しかも今でも十分限界そうな顔をしているのに、今と同じ事をまた違う店でやろうというのか?
「私がこれを買ったら何か問題があるの?」
「そういうわけではないが・・・。」
「なら何?」
「それは・・・・だな・・・・・。」
目を泳がせながら口ごもる真田に、数日前の不安が蘇る。
何かを言いたそうにしながらも何も言ってこなかった真田。
このデートの誘いを受けて、てっきり誘いをかけるタイミングを伺っていたんだと
自己解決してしまっていたけど、本当はそうじゃなかった・・・・?
真田からデートに誘ってくれた事が本当に嬉しくて、
ただ単純に喜んでいた自分がバカみたいに思えてきた。
真田の様子がおかしかった事と、今回のデートは何か繋がりがあるのだろう。
真田にとってこのデートはただのデートではなく何か裏があったと言う事だ。
隠し事なんて出来ないヤツだと思ってたのに・・・。
裏切られたというショックが怒りに変わる。
「あんたなんなの!?言いたい事があんならはっきり言いなさいよ!!」
「しょ、昇華!?」
「気安く名前呼ばないで!」
「どこへ行く!?」
「帰んのよ!もうこんな老け顔見ていたくない!」
「老け・・・!?それは俺のことか!?」
「話しかけてこないで!老け顔が移る!」
「待て!」
「ちょっと離してよ!!」
「離さん!俺の話を聞くまでは帰す訳にはいかんのだ!!」
何勝手な事言ってんのよ!!
掴まれた腕を振り払おうとすると、そのまま引き寄せられ抱きしめられた。
どんなに暴れてみてもビクともせず、逆に腕の力は強まっていく・・・・。
「頼む昇華!!俺の話を聞いてくれ・・・・。」
頭上から聞こえた声は喉から搾り出したように掠れ、とても苦しそう・・・・・。
私はもがくのをやめ、大きく息を吐いてから真田の顔を見上げた。
「そんな顔をさせてすまない・・・・。」
「真田もひどい顔してるよ。」
「昇華を失うかと思うとどうしようもなく怖かった。情けないと思うか?」
真田の考えがわからないだけでここまで取り乱してしまった私が、そんな事思うわけがない。
いつもより早い鼓動に、真田の不安と焦りが伝わってくるようで、私はその胸に顔を埋めた。
「真田の話って・・・?」
「・・・・実は数週間前からずっと悩んでいる事があってな。」
「うん・・・・。気づいてたよ。」
「そうか・・・。それで幸村に相談に乗ってもらっていたのだ。」
幸村!?もうその時点でこの先の展開が読めてきた。
相談なんて言って、どうせ笑って遊んでやろうと思ってたに違いない。
「もしかして今日のデートは幸村からのアドバイス?」
「そうだ。」
「やっぱりね・・・・。」
そういうことか。
やっぱり真田が普通のデートしようなんておかしいと思った・・・・。
「それはわかったけど・・・・で?悩みってなんだったの?」
「こんな事になるならくだらん事を考えず最初からお前に聞いていればよかった。」
「私に?」
「そうだ。だが彼女を喜ばすには演出が必要だと仁王が言っていたからな。できるならお前に知られずに・・・と思ったのだ。」
私を喜ばす?
演出?
知られずに・・・?
散らばっていた幾つもの点が1本の線となっていく。
私の考えが間違いでなければ・・・。
ううん。間違ってはいないはず。
真田が数週間悩んでいた理由。
幸村から受けたアドバイス。
仁王から貰った助言。
それはきっと・・・・・・・
「私の誕生日プレゼント?」
私が導き出した答えに真田はゆっくりと頷いた。
あぁ・・・本当になんて馬鹿な子なんだろう。
そんな事で何日も悩み、幸村や仁王にいい様に遊ばれて・・・。
それでもそこまでして私の為に悩んでくれた事が嬉しい。
隠し事が苦手なのに、私を驚かせる為に必死に頑張ってくれてたんだね・・・・。
「一緒にういんどぉしょっぴんぐをして、昇華の欲しがっているものを探ればいいと言われてな。」
「じゃぁ、買おうとしたのを止めたのは・・・・・」
「自分で買われてしまっては意味がなくなってしまうからな。思わず止めてしまったのだ。」
もしあの場で買わなかったとして、真田は後日一人で買いに来るつもりだったのだろうか・・・?
さっきの引きつった顔を思い出して吹き出しそうになる。
ずっと引っかかっていた謎が解け、久し振りに心から笑えた気がして
私は真田の背中に手を回し、真田が私にしてくれているように、きつく真田の身体を抱きしめた。
「ありがとう真田。」
「俺は何もしていないぞ?それどころか昇華に不快な思いをさせてしまった。」
「ううん。確かに真田に不安にさせられる日がくるなんて思わなかったけど、でもその気持ちが嬉しかったから許してあげる。」
「そ、そうか・・・・。」
「うん。素敵なプレゼントありがとう。」
「プレゼント!?俺はまだ何もあげていないぞ?」
「貰ったよ。真田が私を思って悩んでくれた。それだけで十分でしょ?」
「だが・・・・それでは俺の気が済まない。聞かせてくれ昇華が欲しいプレゼントを・・・・。」
真田がこんなに形にこだわる人とは思わなかった。
これも誰かの入れ知恵だろうか・・・?
けど、そこまで言ってくれるなら、ここは真田に甘えてしまおう。
頑張ってくれた真田の気持ちが何よりも素敵なプレゼント。
その気持ちは嘘じゃない。
だけど欲を言うなら・・・・・ずっと欲しいと思っていたものがある。
でも私の欲しいものは、こんなとこには売ってないの。
そしてそれは・・・・・・・真田にしか用意できないプレゼント。
もしも願えば叶えてくれる?
と、いうか・・・私を少しでも不安にさせたお詫びとして、潔く差し出しなさい!
私は真田の首に腕を回し、そっと耳元で囁いた・・・・・
「私が欲しいプレゼントは・・・・・・・・・・真田だよ。」
Happy Birthday SHOKA
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昇華さんお誕生日おめでとう!!
昇華さんは真田を弄るのが好きなようなので、可愛い真田で仕上げてみました。(笑)
おばかで可愛い真田になってる?
そして最後は攻めるヒロイン。(笑)
誕生日プレゼントちゃんともらえたのかな・・・・?←
実は私と仁王を絡ませた夢を書いてたんですけど、
書いていくほどに「あれ?これ誰の夢?ヒロイン誰?」みたいなね・・・。(苦笑)
すっかり仁王夢になってました♪(オイ)
またそれは後日手直ししてUPします。ww
もう半日以上過ぎちゃったけど、素敵な誕生日を過ごせたかな?
風邪がひどくてそれど頃じゃないかな?
真田と侑士に看病してもらって早く復活してね♪