仁王誕生祭り!! 本日2本目!! | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は連載中の『七転び八起き』の番外編です。

これだけでも問題なく読めると思います。


~ 誰よりも・・・ ~



12月に入り一気に寒さを増してきた。

暑い夏よりかはマシだが寒いのも得意なわけじゃない。


ポケットに手をつこみながら「マフラーでもして来ればよかった」と今更ながらに思うが、
取りに帰る時間もなく、仕方ないと背を丸めながら見慣れぬ夜道を歩いて行く。


確かこの辺だと足を止め辺りを見渡せば『原』と書かれた表札が目に入った。

この家か・・・・。


1階の電気はすでに消えていて、2階から明かりが漏れている。

確か裏の公園から騒ぎ声が聞こえて寝れんかったと以前言っていた気がする。
って事はあいつの部屋は向こう側か・・・・?


時計を見れば長針が『6』を軽く過ぎた所。

まだ間に合いそうじゃな。


数軒先に曲がり角を見つけ、そこを曲がればすぐの所に公園があった。
薄暗い街灯が1つだけ立つ公園の中に足を踏み入れると
公園との境に立てられたブロック塀の向こうに原の家が見えた。
こちらに面した窓にはカーテンが閉められていて、中の様子は見えないが
恐らくここが原の自室に間違いないじゃろ。


窓を見上げながら携帯を取り出し、原の名前を表示させ通話ボタンを押すと
数コールの後に「もしもし?」と不審そうな声が聞こえた。


「俺じゃ。」
「どうしたの?仁王君から電話なんて初めてだよね?びっくり~。」


電話は苦手で滅多な事がない限りかける事はない。
そんな俺からの電話に心底驚いているようだ。


「なんしとった?」
「え?今?アイス食べてたよ。」
「この寒いのにか?」
「冬にコタツに入りながら食べるアイスは最高なんだから!!」


そう言えばアイスが好きやと言うとったのう・・・・・。
それでなくても寒い今、『アイス』と言う単語を聞くだけで震え上がってしまいそうだが
原が緩んだ顔で幸せそうにアイスを食べていたのだと思うと、なんとなく笑みが漏れた。


「もうアイスは食い終わったんか?」
「あと1口くらいかな?」
「そんじゃ、それ食ったら外に出てきてくれんか?」 
「え?外って?」
「外は外じゃろ?今お前さんの部屋の窓の下におる。」


そう言い終ってすぐにカーテンと窓がが開けられ、驚いた顔の原が顔を出す。


「何で!?」
「声がでかい。」
「あ・・・・・なんでいるの?」
「ちょっとな。ええからはよう降りてきんしゃい。」


向こう側の原の顔が見えんほど息が真っ白になり、気温の低さを表している。

原は「すぐ行くから!!」と部屋の中へを入ってしまったが窓が開いたままじゃ。
あいつらしいのう・・・・。帰ったら部屋が冷えて寒いじゃろうに。
それでもそこまで慌てて出てきてくれようとしている事が嬉しい。


近場にあったベンチへ腰掛け公園の入り口に視線をやれば
静かな夜道にバタバタと足音が響いてきた。


「なんつー格好しとるんじゃ?」
「え?だって着替えてたら遅くなるし・・・。」


スウェット上下に、赤色の・・・・ちゃんちゃんこ?綿入れ?いつか婆ちゃんが着とった気がする。
首元には白いもこもこしたマフラーを巻き、足元はスニーカー。
踏みつけた踵からはみ出とる部分からは毛糸の靴下が見える。
初めて見る私服姿がこれとは・・・・・ある意味強烈じゃな。


「それでどうしたの?こんな時間にうちに来るなんて・・・・。」
「ん?お前さんに頼みがあってな。」
「頼み?なんだろ?私に出来る事ならいいけど・・・・。」
「簡単じゃよ。ちょっとキスされてくれればええだけじゃ。」
「ええ~!?」


コイツは今自分が騒音の元になっとるって気付いとらんのじゃろうな。
まぁ、そんな声をあげさせたんは俺じゃが・・・・。


「そんな驚かんでもいいじゃろ?1度はシタ仲じゃろ?」
「あ、あれは仁王君が!!」
「でも嫌じゃなかったって言うとった気がするのぅ・・・。」


目をキョロキョロさせながら「でも・・・それとこれは・・・」などと慌てる原。
本当にからかい甲斐のあるヤツじゃ。
このままそんなコイツを見とるのも悪くはないがあまり時間もないし本題に入るとするか。


「そんな喜ばれたら嘘じゃと言いにくんじゃがな・・・・。」
「え!?嘘なの!?って言うか喜んでないし!!」
「ククッ。そういう事にしといてやるぜよ。」
「しといてやるじゃなくて、本当に喜んでないもん!!」
「そこまで否定されると今度は傷つくの・・・・。」
「あ・・・・いや・・・・・えっと・・・・・ちょ、ちょっとはドキドキしたよ?」


拗ねたように視線を落とせば、フォローの言葉をかけてきた。
その気はないんやろうが、上目遣いで俺を見上げる原の姿に、

逆に俺がドキドキさせられてしまう。

フォローの為の言葉だとわかっとるのに「ドキドキした」なんて言われて、

嬉しいと思ってしまう俺は重症じゃな。


「それはまたあとで考えるとして・・・・」
「まだ引っ張るの?」
「本当はな・・・・・・ただ原の顔を見たかったんじゃ。」
「え?」


少し真剣味の含んだ声を出せば、原の顔から笑みが消えた。
俺が真面目に話す事なんてそうそう無いからの・・・。
だけど今は・・・・・今だけは素直な本音を伝えたい。


「あの時計あっとる?」
「時計?うん・・・。あってると思う。」
「なら今俺はちょうど1歳歳をとったって事じゃな。」
「へ?・・・・・・あ、あぁ~!!そっか!仁王君今日誕生日だ!!」


公園の真ん中に立てられた丸い時計の針は2本がきれいに重なっていて
俺の誕生日の始まりを告げている。


俺が寒い中にこんなとこまで来たのは、誕生日を迎えた時、1番に原に逢いたかったから。
こんな乙女チックな考えを自分でも持っていた事に驚きじゃが
他の誰よりも、まず原に言って欲しい言葉がある。


「わぁ・・・私今何も持ってないや・・・。あ、でもちゃんとプレゼント用意してるよ!取って来る!」
「いや、それはまた学校で逢った時でよか。だた逢いに来ただけじゃしあまり時間がない。」
「そうなの?ならプレゼントは学校で渡すね?」
「ああ。それより・・・・・」
「でも、お祝いの言葉は何度言ってもいいよね?仁王君。お誕生日おめでとう。」


笑顔で伝えられた俺への祝いの言葉。

1番に言って欲しいと願った、誰よりも1番に聞きたかった言葉。

きっと誰の誕生日だって同じように、同じ笑顔で「おめでとう」と言うんじゃろうが
込められた気持ちは俺だけに向けられたもの・・・・・・。


去年までの俺は、生まれた日を祝う事に何の意味があるのかと思っとったが
こんなに心満たされる言葉をもらえるなら、誕生日も悪くないと素直に思える。


「寒い中来てよかったぜよ。」
「あ、今更だけど・・・・よかったら家上がる?」
「それは嬉しい申し出じゃが、もうすぐ迎えが来る事になっとる。」
「そうなの?でもこのままじゃ寒いよね?誕生日に風邪引いたら大変だし・・・。」
「こうしとったら温かい・・・・・」


目の前に立つ原を抱き寄せると、シャンプーの香りと柔らかな温もりが俺を包み込んだ。


「抵抗せんのか?」
「ん?・・・・うん。確かに温かいな・・って思って。」
「ならこれからは寒くなったら俺の胸に飛び込んできんしゃい。」
「い、今だけですぅ!」


いつもなら慌てふためいて腕から逃げ出そうとするはずの原が、

大人しく腕の中で俺に身を寄せている。
ただ単に暖をとっとるだけやとしても、嫌がりもせず俺に抱きしめられとる事が嬉しい。
いつか、原の方からこうやって腕に飛び込んできてくれる日がくればいいんじゃがな・・・・。


「仁王君震えてる・・・・・。まだ寒いの?」
「原がこんな分厚い上着着とるから原の体温が伝わってこん。」


別にそれでもよかったし、嫌味で言うたわけでもなかったんじゃが
原は俺の腕から身を離し、自分の首に巻きつけていたマフラーをはずしだした。


「これ、結構温かいよ。」
「そんな事したら自分が寒いじゃろう?・・・・それともそのぶん俺に温めて欲しいってことかの?」
「違うよ!もう・・・そんな事言うなら貸してあげないんだから。」
「ククッ。うそじゃよ。そう怒りなさんな。」
「別に怒ってるわけじゃないけど・・・。なら、はいどうぞ。」
「原が巻いて。」


差し出されたマフラーを受け取りはせず、少し腰を屈め原の前に首を突きだした。


「ふふ。今日の仁王君はなんか可愛いね。」
「甘えたいお年頃なんじゃ。」


「なにそれ。」と笑いながら背伸びをして俺の首へとマフラーを巻いていく原は
巻く事に必死で気付いたいないようだが、吐息が髪を揺らすほど顔が近くて胸が跳ねる。


「はい。どう?温かいでしょ?」
「原・・・・・・・やっぱりキスしてよか?」
「え?」


俺の首から垂れるマフラーの端を持っていた原の手を掴み、返事を待たぬまま唇を合わせた。

お互いに冷たくなってしまった唇が、重なる事で熱をもつ。
一瞬触れるだけのキスを落とし唇を離せば、ほのかに甘い・・・・・・


「アイスの味がする・・・・・。」
「なっ!」
「でもこのアイスは・・・・熱い・・・・。」


もっと味わいたいと、湧き出る欲望に流されるように再び唇を近づけかけた時、
公園の中に眩しいほどのライトが差し込んできた。


「タイムリミットじゃ。迎えが来た。」


振り返れば公園前の道路に止まる派手な色の車。
迎えに来て欲しいとは頼んだが何もこのタイミングで・・・・。
いや、姉貴の事じゃからワザとかもしれん。


軽く溜息を落とし、腕の中の原を見下ろすと

なにがなんだかわからんといった顔で俺を見上げている。
キスされた事と、突然やってきた迎えに驚いとるんじゃろうが・・・・


「なんじゃ?もの足りんかったか?」
「そ、そんなんじゃないよ!!」
「どうかのう?」
「むぅ~。もう早く帰りなよ!!待ってるよ?」
「そんな追い立てんでもええじゃろ?」


拗ねた原が腕の中から抜け出せば、冷たい風が一瞬にして原の温もりと香りをかき消し、
心の中に広がっていく物足りなさ・・・・・。


「迎えなんて頼むんじゃなかった・・・・」
「え?なんか言った?」
「なんも言うとらんよ。突然呼び出して悪かったな。」
「ううん。仁王君に1番におめでとうって言えたしなんか得した気分だよ。」
「それは俺のほうじゃがな・・・・・。」
「ん?」
「これ以上体が冷える前に家ん中には入りんしゃい。」
「うん。じゃあ・・・・・また学校で。」
「プレゼント楽しみにまっとるよ。」
「たいした物じゃないけどね。」
「なんならさっきの続きでもよかよ?」
「しないよっ!!」


ポケットの中で震えだした携帯に、姉貴が早くしろと言っているのがわかり
名残惜しさを感じながらも、原に別れを告げ背を向けて歩き出す。


今振り返ったらどんな顔しとる?
まだ俺を見とるじゃろうか?


俺が帰っていく事、せいせいしたと思っとる?
それとも少しは寂しいと思ってくれとるじゃろか?


数時間後にはまた逢えるというのに、帰る前にもう一目だけ原の姿を目に映したくて、
去り際に振り返るなどみっともないかとも思ったが、足を止め思い切って振り返ろうとした。


「仁王君!!」


俺が振り向くのよりほんの数秒早く、俺の名前が呼ばれ、
続くように、さっきも聞いた言葉が耳に届く・・・・・


「お誕生日おめでとう!!1番に言ったついでに回数でも1番狙っちゃおうかな?・・・・なんて。」


はにかむような笑みを浮かべ、なんとなくピントがずれとるような発言に、笑が込み上げてきた。
原らしいといえば原らしいが、本当に俺を飽きさせんヤツじゃ・・・・。


「なら、頑張って1番狙うんじゃな。」


寂しいと思った心が満たされたように温かくなるのを感じながら
俺は今度こそ振り返る事無く車の中へ乗り込んだ。






車内は暖房が効きすぎるくらい効いていて暑いくらいじゃったが
原に借りたマフラーを外すことはしなかった。


車に乗る前に返しても良かったが、そうせんかったんはもちろん計算しての事。


原がプレゼントを渡しに来るのは、間違いなく部活前か部活後の皆が集まる部室でじゃろう。
その時、さっき原にしてもらったように、今度は俺がこのマフラーを巻いてやれば
きっと、キスした事を思い出し顔を赤く染めるはず・・・・。


原が、そしてアイツらが・・・・どんな顔をするか見ものじゃな。


俺の誕生日はまだ始まったばかり。


朝を向かえ、日付が変わるまで・・・・・あと何回おめでとうと言ってもらえるんかの・・・?


車の窓の向こうに流れる街の明かりを見ながら俺は小さく笑みを浮かべた。


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ジャッカルの時と違って長っ!!ってか長っ!!ww


2本目は七転び八起きの原 悠奈ちゃんでした。


オリキャラ?になるのかな・・・?仁王姉を出しちゃいました♪

最初は会話も入れてみたんですが、やっぱやめました。ww


ちょっと頭の回転が鈍ってきて誤字が多かったり話の流れがおかしいところがあるかも・・・・。

また後日書き直そう・・・・。


あと6時間で今日が終わる・・・。


後1本間に合うのかな?Σ(~∀~||;)