仁王未来夢 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は未来設定です。

苦手なたは読まないように気をつけてください。

読んでからの苦情はご遠慮願います。


ヒロインは『恋して愛して』の萌木雪です。




~ 姓 ~




市内にある総合病院の待合室で会計待ちをしていると、

「あれ?もしかして萌木さん?」と背中越しに声を掛けられた。


読んでいた本から顔を上げると、綺麗に化粧されていて別人のようだったが

数年前の同級生だとすぐに分かった。



「久し振りやね。」

「本当だよ。元気してる?」



病院で「元気してる?」と聞かれるのも変な気もしたが

決して病気ではないので「うん。元気やで。」と答えておく。


特別仲がよかったわけでもないけれど、

懐かしい気持ちが湧き出てきて、昔話に花が咲き

あの頃の担任が・・・。隣のクラスの誰々が・・・などと、

嘗ての同級生達の近状を聞かせてもらったりした。



「ね!そう言えばまだテニス部のみんなとは連絡取ったりしてる?」

「たまにやけどね。赤也はよう家に遊びに来るけど。」

「えー!?そうなの?みんな変わってないんだろうな・・・・。」



卒業してからもう数年たつが、今でもテニス部のメンバーは

みんなにとって憧れのような存在なのだろ。

そういえば彼女も誰かのファンだったような気もする。



「あ、萌木さんってさ・・・・。」

「ん?」

「その・・・・・仁王君とかなり長く付き合ってたよね?」



きっとその話をいつ切り出そうかと思っていたのだろう。

口ぶりは遠慮がちだが、目を輝やかせ身体を詰め寄らせてくるわかりやすいまでの彼女の態度に

聞かなくともその後のセリフがわかって、思わず笑ってしまいそうになる。



「今でも付き合ってるの?」

「雅治とは・・・。」



別に隠す必要もないことだ。

そう思い話し出しかけた時、


『仁王雪様。会計までお越しください。』


と、会計口で名前を呼ぶ放送が聞こえた。



「あ、呼ばれたみたい。」

「え?今仁王って・・・?」



会計をする為に立ち上がった私に、驚きの声をあげる彼女。


久々に見た他人からのその反応に、なんとなく照れくさくて「まぁ・・・そういう事?」と苦笑いを浮かべながら

また会う日があるかもわからないが、「じゃぁまたね。」と手を振って会計のカウンターに向かって歩き出した。











雅治とは2年ほど前に結婚。


結婚当初は「仁王さん」なんて呼ばれても自分の事だと気付かなかったり、はずかしかったりしたけど

今じゃ当たり前に使えるようになった。


だからさっきのようなくすぐったい感覚は久しぶりで、

なんとなく嬉しいようで・・・・・照れくさい。



そう言えばまだ慣れない私をよく雅治が事あるごとに

「仁王雪さん」などとフルネームで呼んでからかっていたっけ?


まだ2年前だというのに、かなり昔のように思えるそんな過去の記憶を思い返していると

家のチャイムがリビングに響いた。



「おかえり。」

「ただいま。」



玄関の扉が閉まるより早く身体に腕が巻きつき、少し冷たい唇が私の唇に重なる。


キスが深くなる前に身体を離した私に、不満そう顔をする雅治が可愛くてくすくすと笑うと

「笑うんじゃなか。」と、髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱された。



「もう。やめてや。」

「雪が可愛くないからじゃ。」

「あっ、それよりさ。今日久しぶりに『萌木さん』って呼ばれてさ!」

「誰にじゃ?」

「中高と一緒やった子。雅治はどうせ覚えてへんと思うけど?」



受け取ったジャケットをハンガーにかけながら振り返ると、

なんだか不機嫌な雅治と目が合った。


きっとそれが異性だとでも勘違いしてるんだろう。



「女の子やで?」

「誰もそんな事聞いとらん。」

「それは失礼しました。」



からかうのは好きなくせに、からかわれるのは気に食わない雅治は

ますますムッとした顔を見せ、着替える手を止めソファに腰掛けたかと思うと、

私の手を引き自分の膝に座らせた。


後ろから抱きつく腕が、首元に唇が当てられくすぐったさで身をよじる私を逃すまいときつくなる。



「で?『萌木』って呼ばれて独身時代が懐かしくなったんか?」

「違うって。なんか『仁王』の姓になった頃の事、色々思い出して・・・。」

「あの頃の雪は可愛かったのう。」

「なにそれ?さっきの仕返し?」

「本心じゃ。」



今度は私がムッとした顔しながら後ろの雅治を見上げると、

「ウソじゃ。そんな顔しなさんな」と、優しいキスが落ちてくる・・・・。



「雪が俺と同じ苗字になった時、雪の人生を背負ったんじゃと改めて感じたのう・・・・。」

「へぇ。初耳。」

「雪はなんも考えとらんかったからじゃろ?」

「失礼な!私かって・・・・なんて言うんかな・・・・?雅治と同じ苗字になって私の人生に刻印を押された感じ?」

「刻印。」

「この先の人生、仁王と一緒に『仁王雪』として生きてていくんや・・・・って思ったよ。」



「家族」とか「絆」とか、そういうのはまだ実感はなかったけれど、

雅治と同じ苗字を名乗ることで、雅治との強い繋がりのようなものを感じた。



「この子は産まれた時から『仁王』やねんな・・・」

「女やったら雪のように変わるじゃろ?」

「きっと男の子やからその心配はないわ。」

「もう性別わかったんか?」

「まだやけど・・・・母親の勘?。」



まだ膨らみのないおなかに手を添える。


数ヶ月前に私のおなかに宿った新しい命。

この子は産まれたその瞬間から仁王の姓を持つ事になる。


まだ性別はわからないから、一生仁王の姓のままか、

いつか私のように苗字が変わってしまうかはわからないけど

それまでは・・・・・・雅治と私と同じ苗字で生きていくだろう。


苗字だけが家族としての繋がりではないとは思うけれど、

それでもやはり同じ苗字というのは家族を感じさせる温もりがあるとも思う。



「俺は絶対女じゃと思うがのう。」

「んじゃもし女の子やったら雅治にファーストキスをあげるわ。」

「いいんか?」

「その代わり男の子やったら私が先にキスするから!」

「・・・・・・それは許さん。」

「なんでやねん!」

「雪がキスしてえのは俺だけぜよ。」



覆いかぶさってくる雅治をそっと瞳を閉じて受け入れる。


どこまでもヤキモチ妬きな雅治。

本当に男の子が生まれたら、毎日大変だろう。


けどまぁ、そんな未来もいいのか・・・・・・・・も?



とりあえず今はもう少し、二人きりの仁王家を楽しむとしましょうか?





窓に灯った明かりが消えて、仁王家の長い夜の始まりを告げた―――――



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思いつきで書き始めたら、最後どうまとめていいかわからなくなってきた(笑)


ただ単に「仁王雪さん」って呼ばれたかっただけです。

ほんまスミマセン。ww