~ 小さな恋人 ~
終業のチャイムが鳴ったと同時に教室に駆け込んできたがっくんに連れられて、
やってきました遊・園・地~!!
平日の、しかも夕方ともなると人の姿はまばらで、
ほとんど並ぶ必要もなく次々と乗り物を制覇していく私達。
「ほら!次行くぞ!!」
「ちょ、待ってよ、がっくん!!」
私の手を引き、飛ぶように駆けて行くがっくんの後を、こけないように必死で着いて行く。
ちっちゃいくせに力だけ強くって困っちゃうよ・・・。
やっと目的地に着いたのか、足を止めたがっくんに「次は何乗るの?」と問うてみれば
「やっぱこれだろ?」と満面の笑みで空に向かって指差した。
「バンジ~!?」
「そ、やっぱこれやんなきゃ始まんねぇだろ?」
「全然!!普通に始められるよ!」
「なんだよノリ悪ぃな・・・。せっかくの誕生日なんだから飛んどけって!!」
え~。誕生日だから飛んどくとか意味わかんないんですけど~!?
そう。今日は私の誕生日。
「誕生日と言えば遊園地だろ?」と、がっくんらしい提案で、
こうやって遊園地に連れて来てくれたわけなんだけど・・・。
別に高い所が苦手なわけじゃないし、絶叫マシンも嫌いじゃない。
だけどバンジーは違うでしょ?・・・・違うよね?
「それにこのバンジーにはジンクスがあるんだぜ!」
「どんなジンクス?」
「好きなヤツの名前を叫びながら飛ぶと結ばれるんだって!」
「え~嘘くさーい!!それにそんなの聞いた事ないよ。」
「マジだって!!」
「それ誰が言ってたの?」
「侑士だけど?」
絶対嘘だね。がっくん騙されてるんだよ!!
幼気ながっくんにそんな嘘吹き込むなんて・・・。お仕置きだね!
あっ!!だけどこれって・・・・。
「じゃあ、がっくん私の名前叫びながら飛んできてよ!!」
「はぁ!?そんな事できるわけないだろう!?」
「なにそれ~!!がっくんが言い出したんだよ?それこそ乗り悪いC~。」
「なんでそこだけジローみたいな口調になんだよ。」
「ぶぅ~。」
「わぁった!!わかったよ!!やればいいんだろ?」
「さすががっくん!!いよっ!!男前!!」
拍手でおだてれば渋々そうだった顔がちょっと得意げになってきた。
たんじゅーん!!だけどそこがカワイイ~!!
「あ、がっくんがっくん!!」
「なんだよ。」
「ついでにお誕生日おめでとうって言って!」
「そんな長い言葉言えねぇし!!」
「私の誕生日祝ってくれないの・・・?」
「だぁ~!!そんな泣きそうな顔すんな!!わかったから!」
「ホント・・・?」
「はぁ・・・。んじゃ、そこでしっかり聞いとけよ!」
「うん!!」
これが嘘泣きだってわかってるのに毎回焦るがっくん。
本当に可愛いんだから。そんなとこが好きなんだけどね!!
大きなマットの周りに張り巡らされたフェンスに手をつき上を見上げる。
がっくんのバンジー好きは今に始まった事じゃないけど、
こうやって目の前で飛ぶのを見るのは初めてだったりする。
なんか私の方がドキドキしてきちゃうな・・・。
飛び降り台に人影が見え、それががっくんである事を確認する。
あの派手な頭は間違いない。
しばらくするとカウントダウンが始まり・・・・・・。
「ほなみおめれとぉぉ~ぅお~ぅお~ぅお~・・・・。」
がっくんの絶叫が響きわたった。
今、「おめれとお」て言った!?「おめれとお」って言ったよね!?
きゃ~がっくん~!!!!今すぐ抱きしめたい!!
装置を外したがっくんが笑顔で戻ってきた。
「ちゃんと聞こえてたか?」
「うん!!『おめれとお』って聞こえてた!!」
「『おめでとう』だろ?」
「『おめれとお』だよ。」
「『おめでとう』って言った!!」
「あはは。うん。そうだね。ちゃんと言ってたね。」
「クソクソ!!なんだよ!バカにしてるだろ!?」
「ははは。してないって。あはは。あ、がっくん待って!!怒んないでよ!!」
ちょっとからかい過ぎたのか拗ねたがっくんが私を置いて歩き出してしまった。
慌てて追いかけるとそっぽを向いて私の方を見てくれない。
「がっくんごめんね?あまりに可愛かったから・・・。」
「可愛いとか言うな!」
「カッコよかったよ!!」
「いまさら・・・。」
「本当だって!それにすごく嬉しかった!」
「・・・・。」
「ありがとう。私の我侭聞いてくれて。」
「・・・・・。」
「がっくん好きだよ。」
いまだに私に背中を向けたままだけど、
髪の隙間から覗いた顔が赤いのは気のせいではないはず。
それでも振り向いてくれないがっくんに、「がっくん・・・。」と弱々しく声をかけると
「ん。」と左手が差し出された。
「へ?」
「ほら。早くしろよ!」
これって・・・手を繋げって事だよね?
嬉しさと、愛しさで顔がニヤケそうになるのを必死で堪え
差し出された手に自分の右手を重ねる。
「がっくん大好き!」
「恥ずかしい事デカイ声で言うな!!」
「がっくんは?」
「・・・・好きだけどよ・・・。」
「聞こえなーい!!」
「俺もほなみが好きだっ!!」
半ばやけくそ気味に叫んだがっくんだったけど、
顔を真っ赤にしながらも、繋いだ手はしっかりと握られて、
がっくんの気持ちが伝わってくるようだ・・・・。
「ふふ。」
「何笑ってんだよ。気持ち悪ぃな・・・。」
「なんでもないよ~!ねぇ、がっくん観覧車乗ろう!!」
「別にいいけど?」
「頂上でまたキスしてくれる?」
「なっ!!」
「初めてキスしてくれた時のように♪」
初デートは遊園地。そして初キッスは観覧車。
あの日のがっくんはとてもカッコよかった。
『お前の事大事にする』ってキスしてくれたんだ・・・。
返事のないがっくんを、チラリと横目で見れば、
「言われなくてもするつもりだったのに・・・。」とちっちゃな声が聞こえてきた。
本当に可愛くて・・・だけどカッコいい私の恋人。
揺れるゴンドラがゆっくりと空に向かって昇っていく・・・。
繋いだ手が離れないようにと、隣同士に座った二人をライトアップが優しく照らす。
ガラスの向こうに星空しか見えなくなった時、引き寄せられるように二つの影が重なった・・・。
「お誕生日おめでとう・・・。ほなみ。」
****************************************
ほなみさん。お誕生日おめでとうございます!!
いきなり勝手に書いてすみませーん!!
がっくん初夢なんで擬似入ってるかもしれませんが、
ほなみさんのバトンを参考に書かせていただきました!!
カッコイイがっくんを目指したつもりなんですが・・・。ww
今日はどんな誕生日を過ごされるのでしょう?
素敵な誕生日となりますように・・・。
そして、この歳もほなみさんにとって素晴らしい1年になるよう祈っております。