*新婚大人設定です。苦手な方はご注意ください。
- すりおろしりんご -
週初めの月曜日。天気は晴れ。
朝から洗濯と朝食の準備をしてTVをつける。
丁度天気予報が流れていて夕方からは雨になるらしい。
こんないい天気やのに雨!?
それなら洗濯もん中に干しなおさなあかんやん・・・。
なんとなく気が重なって、食べとった食パンを皿に投げた。
それにしてもアイツはまだ寝とんのか?
7時半をまわっても起きてけーへんいちごに少し苛立ちながらも
このままじゃアイツも仕事に遅れるやろ・・・と
仕方なしに起こしに寝室まで向かった。
「おい。ええ加減起きろや!」
「うぅ~ん・・・。」
「遅刻してもしらんぞ!?」
「・・・・・さ・・・・・寒い・・・・。」
「はぁ?」
確かにもう夏とは言われへんけど寒いってほどでもないやろ?
そう思ったが、何や顔が赤いし目が腫れてる気がする・・・。
まさか・・・・?
デコに手をやると普段より高い体温・・・。
「お前熱あるやん・・・。」
「やっぱり・・・・ダルイと思った・・・。」
「腹出して寝てるからちゃうか?」
「・・・・言い返す元気・・・・ない・・・・。」
「はぁ・・・起きれそうか?」
「無理・・・・。」
「しゃぁないな・・・・。」
時計を見るともう出勤10分前。
まさか仕事休むわけにもいかへんし・・・・。
薬箱から風邪薬とペットボトルの水を持って部屋に戻る。
布団に丸まって顔だけ出す姿が
なんとなく可愛いなんて思ってしまった。
「ここに薬置いとくから飲めよ?」
「わかった・・・・。」
「早めに帰ってくるからそれまで大人しく寝とくんやで?」
「・・・・・・うん・・・。」
「ほな行って来るわ。」
「・・・・・・行くの?」
「はっ?」
まさかそんな言葉が返ってくるとは思わず
素っ頓狂な声をあげてしまう。
今のって・・・・・行ってほしないってことか・・・・?
「なんや行ってほしないんか?」
「・・・・・はよ行ってこい!」
やっぱりな・・・。
素直に「行ってほしない」なんて言うわけないわな・・・。
せやけど少しだけ見せた弱気な姿に心が揺れる。
傍にいて看病してやりたい・・・・。
そう思う気持ちは嘘やないけどやっぱり仕事は休まれへん・・・。
部屋を出る前に振り向いてみれば、
またさっきのように布団に丸まっていて顔は見えへん。
でもなんとなく不安な顔をしてそうな気がする。
ほんまに大丈夫かいな・・・・?
けど子供やないねんからどないしょうもなくなったら
病院行くなり電話してきたりするやろ・・・・。
そう自分に言い聞かせ、家を後にした。
「あの時計止まってへん?」
「え?ちゃんと動いてますよ。」
「なんや今日は時間経つの遅ないか?」
「いつもと一緒ですけど?」
「なんやイライラするわぁ・・・・。」
仕事をしていてもアイツが気になって仕方ない。
付き合うてから今まで、いちごが病気なんてしたんは初めて。
いつもは偉そうにモノ言うてくるくせに
熱出すだけであんなに可愛らしくなるもんやろか?
今朝の「行くの?」と言った時の目が忘れられへん・・・。
朝からもう何度見たかわからん時計に目をやると
さっきからまだ2分しか経ってへん・・・。
ちゃんと寝てるやろか?
トイレ行こうとして途中で倒れたりしてへんやろか?
いちごなら・・・・ありえそうや・・・。
電話してみるか?けど寝とったら起こすんも悪いしな・・・。
そんな事ばかり考えて仕事にならん・・・。
そんな時ある人物の顔が頭に浮かぶ。
そうや!!こんな時こそアイツやん!!
俺は携帯を握り急いでアイツに電話をかけた。
「あ、侑士か?俺や。謙也や。」
「なんやねん。朝からお前の声とか聞きたないわ。」
「悪かったな!!それよりお前今仕事か?」
「夜勤明けで今から寝るとこや!」
「ちょうどええわ!今いちご熱出して寝てんねん!」
「何がちょうどええねん?今から寝るっちゅーてるやろ!?」
「お前医者やろ!?いちご診たってくれや!!」
「謙也が看病したったらええやん。」
「仕事休まれへんやろ!?」
「はぁ・・・ほな診に行ったってもええけど・・・・。」
「ほんまに!?助かるわ!ありが」
「報酬はいちごの体でええよ。」
「なっ!!何言うてんねん!?頭おかしいんちゃんか!?」
「人妻と昼下がりのアバンチュール。どや?」
「どや?やあるかぁ!!それにアイツ熱出してんねんぞ!?」
「弱ってる時に優しぃされるとオチやすいからな・・・。」
「もうええ!!お前には頼まん!!」
「キャンセルは効きません。はよ帰って来ないちごどうなっても知らんで?」
「ちょ、侑士!?おい!!ちょー待てや!!」
まだ話し終わってもいないのに受話器の向こうからは
通話が切れた事を知らせる機械音が聞こえてきた。
嘘やろ・・・・?
きっとそうやって俺を煽ってるだけや。
まさかいくら侑士でも従兄の妻に手は出さへんやろ?
・・・・・ださへん・・・・よな?
「すんません!!なんか風邪ひいたみたいなんで早退します!!」
「え!?忍足さん!?」
後ろで俺を呼ぶ声がしたけど聞こえんかった事にしとこ・・・。
明日怒られるやろな・・・・。せやけど今はそんな事気にしてられへん!!
昼前で人気の少ない道を家へと走る。
なんや前にも侑士のせいでこうやって走ったような・・・・?
そんな気がしなくもないがとにかく今すぐいちごの無事を確かめたい。
そんな思いで必死に足を動かした。
「いちご!?」
勢いよく玄関の扉を開き寝室に駆け込む。
しかしベッドのは寝ているはずのいちごの姿がない。
どこ行ったんや!?
まさか侑士がもう来て・・・・・・。
嫌な予感が脳裏を霞め、転がり込むようにリビングに入れば
ソファーに寝転び、うたた寝用のブランケットに身を包んだいちご。
侑士の姿も見えへんし、スヤスヤと眠るいちごを見て
ホッとしたと同時に強い脱力感が襲う。
そうやわな・・・。いくら侑士でもそりゃないか・・・・。
はぁ・・・。なんや一気に疲れたし・・・・。
アホみたいに口あけて寝てるいちごに近づき
顔にかかる髪をそっと退ける。
頬を撫でるように指を滑らせると、朝触れた時よりも
体温は下がっているように感じた。
「ん・・・。」
俺が触れた事で起こしてしまったんか、閉じていた瞼が開く。
寝起きのボーっとした顔で俺をその瞳に映しながら
「なんで・・・・?ゆめ?」なんて寝ぼけた事を言ういちご。
俺が心配して帰ってきたって言うのにコイツはホンマに・・・。
「なんでこんなとこで寝てんねん!」
「え・・・?なんでいるの?」
「し、仕事がはよ終わったんや!」
「そうなの?お帰り~・・・。」
「ただいま・・・ってちゃうやろ!?なんでこんなとこで寝てんねんって!?」
まだ寝ぼけてんのか?
間延びした話し方でのんきに「お帰り~」なんて言うとる場合ちゃうやろ!?
「ちゃんと寝とけ言うたやろ?」
「だって・・・・」
「なんやねん・・・?」
「アッチは静か過ぎて・・・・心細かったんやもん・・・。」
「・・・・・・・。」
いちごの口からこんな可愛い言葉が聞けるとは・・・・。
目を伏せたように睫を震わせ「心細かった」と言ったいちごに
胸の奥から愛おしさが込み上げてきて、
思わず赤く火照った頬に手を添え唇にキスを落とした。
「!!な、なにしてんの!?」
「お、お前がかわええ事言うから悪い!」
「なにそれ・・・・。」
別にキスくらいで照れる事もないはずやのに
お互い顔を赤くして慌てふためく二人・・・。
なにやってんねん俺達は・・・・。
そんな気恥ずかしさを誤魔化すように
「腹減ったな・・・。なんか食うか?」と立ち上がった。
「食欲ない・・・。」
「なんかちょっとでいいから食わなあかんで。」
「じゃぁ・・・りんごが食べたい。」
「りんご?ほなちょっと待っとき。」
ちょうど昨日買ったばかりのリンゴを手に取り台所へ立つ。
そう言えば俺が子供の頃、風邪ひいた言うたら
リンゴ食わされてたな・・・なんて懐かしい記憶を思い出しながら
いちご柄の皿へりんごを盛った。
「ほら。リンゴやで。」
「・・・・なんですりおろしなの?」
「はぁ?風邪の時のりんご言うたらすりおろしやろ!?」
「そんなの聞いたことない。」
「文句言うなら食わんでええわ!」
「食べないなんて言ってないじゃん!!」
「ほな食えや。」
「・・・・病気の時くらい優しくしてくれてもいいのに・・・。」
拗ねたようにぼやくいちごに十分優しいやろ!?
なんて思いながらも、「仕方ないな・・・」とスプーンを口元に運ぶ。
「え・・・・?」
「はよ口開けなこぼれるやろ!?」
「・・・・・・・。」
「うまいか?」
「うん・・・・・・。」
「あーん」とかあんな恥ずかしい事できるか!!って思っとったけど
こうやって弱ってる時くらいはええかもしれん。
皿からりんごをすくっては口へと運ぶ。
恥ずかしいんか視線を泳がせながら口を開けるいちごに笑みがこぼれた。
「これ食ったらちゃんとベッドで寝るんやで?」
「ここじゃダメ?」
「俺も一緒に寝たるから。」
「・・・・・・うん。」
こんな素直ないちごを見れるなんて滅多にないやろし
今日くらいは思いっきり俺に甘えてほしい。
太陽がまだ空を照らす昼さがり・・・・。
俺は安心したように眠るいちごを胸に抱きながら
可愛い事言ういちごもええけど、
やっぱりいつものいちごがええわ。
だからはよ・・・元気になりや・・・。
そう願いながら、寝息を漏らす唇にそっと自分の唇を重ねた。
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いっちごちゃーーーん!!
お待たせしました♪
風邪ひいて弱ってるところを看病して欲しいとのリクでした。
おかゆがキライらしいのですりおろしりんごで代用(笑)
タイトルはあまり意味はないですww
一応ハメてハマってハメられて 前編 ・後編 の続編?のつもりです。
かなり可愛いいちごちゃんと、なんだか数倍カッコイイ謙也ですが
たまにはいいよね?こんな二人もさ!!
リクサンキューでしたぁ~!!