てじゅか誕生日おめでとう!! (夢) | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

たとえ傍にいる事ができなくても・・・

             いつでもあなたを想っています。



True Love



雲のかかった空から覗く朝日が柔らかな光を放ち

小さな緑の葉を照らす。

登校時間で賑わう通学路から少し離れたこの場所は

風の音だけが響き、胸の高鳴りを沈めてくれた。


時計の針は7時50分を指している。

もう少しだ・・・・。


携帯を開けアドレス帳から名前を探し出す。

着信履歴にもリダイヤルにも、

もう彼の名前は消えてしまっている。

それほど声を聞いていなかったのか・・・。

どれくらいぶりになるだろう・・・・?


逸る心を抑えもう1度時計を見る。


すぐに出るとはかぎらないしそろそろかけてみようか?

震える指でボタンを押せばコール音が聞こえてきた。


tu lululu・・・・・


もう寝てしまっただろうか?

そう思った時・・・


「    」


低く甘い・・・大好きなあなたの声が私の名前を呼んだ。








「明日・・・・行くんだね。」

「あぁ・・・。」


国光のドイツ行きを聞かされたのは全国大会が始まる少し前。

覚悟はしていた・・・。

その話を聞かされた時、どんな顔でどんな言葉をかけたのか

まったく覚えていない・・・・。

いつも国光の見つめる先には

私では想像もできない大きな世界が描かれていて、

そこにいつしか行ってしまうのだろう・・・・。

そう思ってはいても実際に聞かされた時は胸が締め付けられて

涙が溢れそうだった・・・・。


強がってみても、いつも国光が傍にいてくれないなんて

私には耐えられない・・・・。

逢いたい時にあえない・・・。

抱きしめて欲しい時その温もりは傍にない・・・。

何度考えてみても笑って見送ることなどできそうになかった。


別れよう・・・・。今のうちに・・・。

もっと国光を好きになる前に・・・・。

この傷が広がってしまう前に・・・・。


そんな事を考えたりもしたけれど、

国光の手を離すことなんて・・・できるはずもなかった。


国光も私の気持ちには気付いていただろうけれど、

何も言わず、ただ私が答えを出すのを待っていてくれた。

いつもと変わらない大きな腕で私を包み込んでくれていた・・・。


だけど・・・・


時は無常にも進んでいき、

気が付けば卒業式を迎え、国光が旅立つ日はもう明日。


無意識に避けていた話題。

お互いに触れなかった心。

誤魔化すように二人今まで過ごしてきた。

だけどもう・・・・・それも終わり・・・・。


春風と呼ぶにはまだ少し冷たくて

寄り添うようにベンチに腰掛夕陽を眺める。


『行ってらっしゃい。』

そう言って見送ったならば、

いつか『ただいま』と帰ってきてくれるのだろうか?

それとももうここで、別々の道を歩くべきなのだろうか・・・?


もう何ヶ月も考えて答えの出なかった問題を

いまもまだ悩んでいる自分に笑えてきてしまう・・・。


「ねぇ?国光は・・・・どうしたい?」


沈黙の中ポツリと漏らしたと言葉。


卑怯だと思う・・・・。

自分の出せなかった答えを国光に委ねるなんて・・・

どこまでもずるい私・・・・。


わかってる。それがどれだけ国光を苦しめるか。

だけど言わずにはいられなかった・・・・。

これ以上・・・・耐えられなかった・・・・。


国光の出した答えなら。

国光の選んだ未来なら・・・。

私は笑顔で受け入れよう・・・・。

それがせめてもの・・・罪滅ぼしになるなら・・・。


震える手を抑える様に固く握り締めた手に

ゆっくりと大きな手が重なる。

顔を上げ国光を見上げれば眼鏡の向こうで優しい瞳が揺れていた。


「ずいぶんと悩ませてしまって・・・すまなかった。」

「国光・・・・?」

「俺はプロになる為にドイツへ向かう。

いつか必ずプロになってみせる。

だが・・・それがいつなのか?何年先なのか?

そしていつ帰って来れるのか?・・・俺にもわからない。

なのに『待っていてくれ』なんて簡単に言えるはずもない・・・。

だから俺は・・・お前が選んだ未来を・・・受け入れようと思っていた。」


国光も私と同じように悩んでした。

私を置いていくことに・・・申し訳なさを感じていたのだろう。

わかっていた事だけど・・・その優しさが嬉しくもあり・・・胸が痛い・・・。


「俺達はまだ中学を卒業したばかりだ。

これからいくつもの未来を選ぶことができる。だが・・・・・」


そこまで言った所で、止まってしまった言葉。

握られた手に力が入り国光の強い想いが伝わってくるように感じる。

見つめたままの瞳を逸らす事無く次の言葉を待つ・・・。


「どんな未来を思い浮かべても・・・

お前のいない未来など想像できない。

その笑顔を傍で見る事ができなくても・・・・

この温もりを肌で感じることができなくても・・・・

こうやって涙を拭ってやることができなくても・・・・

お前の心はいつでも俺の傍にあって欲しい。

お前の愛を手放すことなんて・・・・できない。」


国光の口から零れる一言が胸の中へ流れ落ち

溢れ出した喜びが涙となって頬を伝う。


まさか国光がそこまで想っていてくれたなんて・・・。

いつも言葉少ない国光。

好きだなんて、片手で数えるほどしか言ってくた事ないのに・・・。


「私も・・・・たとえ逢えなくても・・・心まで離れ離れになりたくない!!」


泣きながらも掠れる声で、精一杯の思いを伝える。

優しい手が涙を拭い暖かい温もりが私を包む。


「少し髪を押さえていてくれ。」

「いいけど・・・。」


その瞬間ふと、冷たい感触を首元に感じ、

そっと手をやれば小さく固いものが揺れている。


「クローバー?」

「あぁ、四葉のクロ-バーのペンダントだ。」

「私に・・・?」

「お前に持っていて欲しい。」


四葉のクローバー。


「どうして・・・四葉のクローバーなの?」

「俺の想いの象徴だからだ。」


四葉のクローバーが意味する象徴・・・・。

私が知らないはずはない。

なぜなら・・・・・。

鞄の中から小さな封筒を取り出し国光へ渡す。


「これは?」

「開けてみて。」


封筒の中には1枚のしおり。

しおりの真ん中には・・・・・・


「四葉のクローバー・・・・。」

「うん。餞別に・・・と思って。」


今日もし別れる事になったとしても

これを渡そうと思って持ってきていた。


「この四つ葉のクローバーはどうしたんだ?」

「どうしたって?探したんだよ。」

「お前がか?」

「うん・・・・。」


四葉のクローバーは1枚1枚にそれぞれの願いがかけられていて

『名声』 『富』 『愛』 『健康』 となっている。

そしてこの4つの葉が全て揃うと『真実の愛』となる。


「もし別れても・・・私が国光も思う気持ちに嘘はなかったから。

だから・・・・幸運を祈って、お守りにって渡せたらと思ってたの。」

「別れはしない。離さないと言っただろう。」

「・・・うん。」

「待っていて・・・・くれるか・・・・?」

「待っててなんてあげないよ。」

「!?」

「私が迎えに行ってあげる!!」


抱きしめる腕に力を込めて、二人の隙間を埋めるように

強く強く抱きしめあう・・・・。


四葉のクローバーのペンダントが、

想いを繋ぎ合わせるように二人の間で揺れていた・・・・・。







「国光!?」


久しぶりに気いた声が甘く心に響く。


「どうした?この時間・・・もう学校じゃないのか?」

「うん、今登校中。」

「何かあったのか?お前から電話してくるなんて。」

「なぁに?嬉しくないの?」

「・・・・・・・そ、そうとは言ってない・・・・。」


口ごもる国光が、受話器の向こうで

どんな顔をしているのか思い浮かび頬が緩む。


「まだ、起きてた?」

「あぁ、もうすぐ寝るところだったが。」

「そっか、よかった。」


会話を続けながら時計を見つめる。

時計の針は後数秒で8時。

心の中でカウントダウンを始める。


「それでどうしたんだ?」

「ん?ちょっと待って。3・・・2・・・1・・・」

「おい・・・?」

「Happy birthday!!国光!!」


驚きで息を呑む声が聞こえ私はニンマリと微笑を浮かべた。


「忘れてた?」

「すっかりな。」

「ふふ。じゃぁ私が1番だね。」

「そうだな。」

「嬉しい?」

「あぁ。」

「ホント?」

「当たり前だろう。」

「国光?」

「なんだ?」

「そこから空って見える?」

「窓からならな。」

「そっちは夜空で、こっちは青空。

見てる空の景色は違うけど、空って繋がってるんだよ。

・・・・・私達の心のように。

「そうだな・・・。」

「たとえどんなに離れていたって、傍にいることができなくたって

いつでも国光の事・・・想っているから・・・。」

「・・・・・それは俺も同じだ。」


どうかこの想いとこの言葉が、

風に乗って・・・・・空を伝って・・・・・

国光の元まで届きますように・・・・。


「国光。お誕生日おめでとう。」


                    Happy birthday kunimitsu 10.7   

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てじゅかハッピーバースディ!!

書くつもりなかったけど、「密かに待ってます」と

言ってくださった方がいらしたんで、頑張って書いちゃいました(笑)


なんか最近切ない感じの話がやたらと思い浮かぶ・・・。

秋だからでしょうか?

ま、何はともあれおめでとうございます!!