ありがとう企画第4弾 (菜都さんリク 跡部夢-中編-) | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

- prince & princess - 



お金の力って本当にすごいと感じた1週間。


こんな文化祭ありえない・・・。

何度そう思ったことだろう。

大抵の物はリストを出せばすぐに届けられ、

普通何週間もかけてみんなで作る内外装なんかも

業者の人が来てやっちゃうなんて聞いた事がない。


だけど、だからって私達運営委員が何もしなくていい訳でもなく

朝から日が暮れるまで、頭の固い真田君の怒声を聞きながら

小うるさく我侭なテニス部メンバーと共に準備を進める。

すごく人気のテニス部だと聞いていたが

コレのどこがいいの!?と、思ってしまうくらい

どいつもこいつも性格最悪。

正直幸村は邪魔しかしてないし・・・・。


それでも何とか形にもなってきて、

文化祭まで後2日となった。


その日はなぜか朝から不機嫌な幸村に手を焼きながら

作業を続けていると、


「暑い・・・。ねぇ塚本さん。冷房下げてきてよ。」

「・・・・。自分で行けば?」

「運営委員って俺達の作業が円滑に進むよう手助けすr」

「わかったわよ!!行けばいいんでしょ!?」


またネチネチと責めあげられたらたまったもんじゃない!

幸村がまだ何か言ってるけど途中で遮ってやった。


本当にアイツはなんなんだ!?

テニス部どういう教育してんのよ!?

甘やかしすぎなんじゃない!?


イライラとしながら空調管理室へ向えば

設定温度が25℃になっていた。

これでもかというくらい連打して、

一番低い18℃まで温度を下げる。


「コレで文句ないだろ!!」

「あるに決まってんだろ!リモコン壊す気か!?」


突然聞こえた声に飛び上がるほど驚き

音がしそうなほどの勢いで振り返れば

顔をしかめた跡部君が立っていた。


「なにしてやがる?」

「暑いって言うから温度下げに・・・。」


あの日の出会いから、打ち合わせや確認の為

顔を合わせる機会も増え

この跡部景吾と言う人間が色々とわかってきた。


言葉や態度は偉そうだけど、意外と面倒見もよく結構優しい。

やっかいな頼み事も文句を言いながらでも必ずやってくれたし、

責任感が強いようで人任せにはせず必ず自分が動く。

私が立海メンバーに手を焼いている事も

どこで見聞きしてきたのか心配して声をかけてくれる事もしばしば・・・・。


お坊ちゃまってもっと世間知らずで

世の中ナメてんのかと思ったけど

私の勝手な思い込みもいいとこだ。


「また幸村か?」

「それ以外いないでしょ?」


そしてそんな跡部君を知るたびに

私の心がざわめきをあげる・・・・。


もっと近づきたい・・・・。

だけど・・・これ以上踏み込んではいけない・・・・。


2つの思いが交差して、ここ数日私の気持ちは落ち着かない。

だけどやっぱりこうやって声をかけてもらうことが嬉しいと思う辺り

もう完全に抜け出せない域まで来ているのかもしれない・・・・。


そんな事を思っていると、


「なんや、立海は女の子にそんな雑用押し付けるんか?」


独特のイントネーションを発する丸眼鏡の男の子が

跡部君の後ろから顔を出した。

真田君みたいな中学生もいてる訳だし

ちょっとやちょっとじゃ驚きはしないが

彼もまた中学生とは思えない姿と・・・・声。


「俺、忍足侑士な。自分立海の運営委員の塚本さんやろ?」

「え?そうですけど・・・・。」

「跡部がよう働くええ子やって褒めとったで。」

「おい、忍足!!」


そんな風に思ってくれてたかと思うとすごく嬉しい。

誰に褒められるよりも跡部君に働きを認められた事が

嬉しくて顔が緩んでしまいそうになる・・・。

バレて・・・ないよね・・・?

恐る恐る顔を上げてみたけれど、気づかれてはいないようだ。


そして、忍足君は何か思い出したように

「そや跡部、あの話し彼女に聞いてみたら?」

と、言い出した。


「あーん?まだ言ってやがったのか?」

「絶対ええ案やと思うで。」

「どこがどういいって言うんだ?」

「女の子はそういう話し好きやからな。」


何の話かと首を傾げれば「あんな・・・」と、忍足君が説明してくれた。



今回の学園祭はテニス部の打ち上げという名目で開催されている。

メインはテニス部メンバーの最後の思いで作り。

学園祭で他校との交流を深め、楽しむのが目的だ。

だが、彼らは厳しい部活漬けの毎日で

ろくに恋愛をしてこれなかった者も多い。

で、この学園祭なら、自分の学校以外にも

他校の女生徒もたくさん来るわけで・・・・。


「巨大お見合いパーティー・・・みたいな?」


嬉しそうに語る忍足君。

これってツッコンんでいいの・・・?


「恋愛なんて各自勝手にやりゃいいだろうが!?」

「ちゃうやん!!別にお見合いしますよ~!なんて言うんちゃうで?」

「ならどうするの?」

「こうやったらうまくいくで!みたいな噂を流すねん!」

「うわさ?例えば・・・?」

「せやな・・・・夜ライトアップされた噴水の前で結ばれたカップルは

永遠に結ばれる・・・とか!」

「お前の好きそうな話だな・・・。映画の見すぎだ。」
「いや、絶対ウケるって!」

「お前はどう思う?」

「そうね・・・女の子はそういうジンクスとか好きなんじゃない?」

「やんな!?ほら、言うたやろ?」


私が賛同したことで嬉しそうに笑う忍足君。


今回のお客の大半が女生徒である事に間違いないだろう。

出展内容を決める時に柳君がそう言っていたから

我が立海は女性客にウケる甘味所に決定したのだから。

それに各校ともテニス部はすごく人気があると雪も言ってたし

そういう事を期待してくる子も多いかもしれない・・・。


でも噴水前の告白は・・・・。

あんな場所にうじゃうじゃ集まって

告白大会ってワケにもいかないだろう・・・・。


跡部君もそう思ったのか


「信じた奴等がみんな揃って集まったら告白どころじゃねぇだろ?」

「まぁこれは例えやから。」

「時間もねぇんだ。あまり凝ったことをやってる暇はねぇ!」

「そやけど・・・・。塚本さんはなんかええ案ない?」


急に話を振られても困るんですけど・・・・。

でも面白そうな話ではある・・・。


しばらく考え、ふと思いついたことを口にしてみた。


「今回の出展リストみたけど、1校を除いて

その他の学校は飲食店がメインだよね?」

「あぁ、そうだな。」

「そのメニューに「恋に効くメニュー」って言うのを

1品加えるのはどうかな?」

「「恋に効くメニュー?」」


私が思いついた案はこうだ。


各店舗1品「恋に効く」とされる商品を置く。

だけどそれはメニュー表には書かない。

もうどの学校もメニュー表の作成を終わっているだろうから

今更やり直す手間をかけさせるわけにはいかないし、

それに、裏メニュー的な存在として

「恋に効くメニューがあるらしい」と噂を流せば

人の心理として、好奇心をそそるはずだ。


「けど今から新しい商品考えて作ってる暇ないんちゃう?」

「飲み物くらいならなんとかならないかな?」

「確かに飲み物なら何とかなるかもしれへんな・・・・。」

「売り上げにも繋がる話しだし悪い話じゃないと思うんだ。」

「せやけど恋に効くってだけで売れるか?」

「ジジンクスなんてそんなもんでしょ?

わからないから試してみたい・・・。」

「乙女心・・・・ってか?」


忍足君とそんなやり取りをしている間

跡部君は腕を組みずっと黙ったまま・・・・。


それでなくても忙しい跡部君。

例え飲み物1品でも今から用意するとなると

そう簡単な話しじゃないかもしれない・・・・。

思いつきで言っちゃったけど、

そうだよね・・・。やっぱりダメだよね・・・・。


そう思った時・・・・・。

伏せていた瞳があたしへと向き


「発案者はお前だ。責任もって手伝えよ?」


そう言い放った。


****************************


やっぱり2部じゃ無理でした・・・・。

後編へ続きます。