芽生えた感情 (仁王夢) | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言


嫉妬・・・自分の愛する者の愛情が、他の人に向けられるのを恨み憎むこと。



辞書で引けば簡単に説明ができるけれど

人の感情なんて、そんな簡単なものじゃない。


この気持ちは・・・嫉妬?

それとも・・・・・・・?

初めて気づいたこの想い・・・・。

あなたはいつも・・抱えていたの・・?



   芽生えた感情



先生の急な出張で、突然自習になった昼過ぎの5時間目。


クラスメイトと何の話からか、テニス部のモテランキングの話になり

「やっぱり幸村君だよ!」とか「彼氏にしするなら柳生君がいい!」

なんて好き勝手言いながら盛り上がっていた。


私は聞き役・・・と言うか、寝た振りしながらも聞き耳を立てているだろう仁王に

いらぬ「口実」を与えてしまわぬよう、ただ黙って聞いていた。

ここでもし誰かの意見にうっかり同意でもしてしまえば

間違いなく強制連行だ・・・・。


そんな中、やはりというか、当然と言うか・・・

「仁王君だって雪と付き合ってかなり減ったけど、まだまだモテるよね!?」

と、誰かが言い出した。

いらぬ事を・・・。


私と付き合う前に、どれほどモテていたのかはよく知らないが

こうやって付き合いだしてからもちょくちょく告白されているらしい・・・・。

まぁ、性格はともかく、顔だけならモデル顔負けの美形だ。

こんな顔でテニスしてカッコよくキメてりゃモテても不思議ではないだろう。


「彼氏がモテるとかすごい自慢じゃない!?」

「連れて歩けばなんか優越感感じるし!!」

「うんうん!!」


勝手なこと言うてるし・・・。


「でも彼氏がモテ過ぎるのって不安にならない?」

「自分より可愛い子とかに告白されてグラッと傾いちゃったり!?」

「ええ~!?やだ~!!」


想像でここまで盛り上がれるのもすごい・・・・。


「ね!?雪は心配にならないの!?」

「はっ!?」


突然話をふられた事で素っ頓狂な声をあげてしまった。

今までキャッキャと勝手に盛り上がっていた子達がみんな私を見てる。


え・・・?答えろと?

この手の質問は今までにも何度か聞かれた事があった。

しかし今回は直ぐそこで仁王が聞き耳を立てている!


私は頭で少し整理しながら言葉を選び・・・


「そうや・・・」

「雪ちゃんは絶対的な自信があるからヤキモチ妬かないんだよね!?」


なに!?


私が頭をフル回転で探し出した言葉を発する前に

どこぞのアフォーがデカイ声で答えてしまった!


確か以前に聞いてきた子だ・・・・。

間違っちゃいないが微妙にニュアンスが違う・・・。

それじゃぁ私は自意識過剰なだけではないか!?

私は「信じてるから妬く事もない」っつったんやけど!?


「おぃおぃ・・・」と心でツッコミを入れてる間にもクラスでは大盛り上がりだ。


「さすが!!仁王君と付き合うならそれくらいじゃなきゃダメってことだね!」

「雪ちゃんすごいね・・・。」


だから違うって・・・。


しかし今はそんなことを言っている場合ではない。

ゆっくり後ろを振り返り仁王の席を確かめれば、さっきと変わらずうつ伏せたまま・・・・。


ただ寝ているようにも見えるが間違いなくアレは今のをばっちり聞きました!って感じだ。


あぁ・・・どっちにしろ今晩は帰れないかも・・・。

そう思いながらただ終業のチャイムが鳴るのを待った。





「雪はヤキモチ妬かんのか?」


案の定強制連行で仁王家へ連れ込まれた後

立ち上がれないほど泣かされ啼かされ力尽きた・・・。


ぼーっとした頭の中で何でこんなことに・・・など考えていると

ボソリと隣の仁王が訪ねてきた。


そうやった。

こうなった原因はソレや!!


妬かんのかと聞くかれれば・・・・


「妬かん事もないけど・・・・」


と、しか答えようがない。


「確かに俺は雪に惚れとる。信じてもらえるのも嬉しい。

やけどだからって妬かれんっちゅーのはなんかのぅ・・・。」

そう言われてもどう答えればいいものか・・・?


仁王はきちんと愛情表現をしてくれるし、

コレと言って不安要素はない。

他の子に告白されてる現場を目撃したことはないが

ラブレターらしきものを目にした事はある。

だけど、それでヤキモチを妬くのもおかしな話ではないのか?

おそらくきちんと断っているのだろうし

仁王がその気がないのだから妬く必要もない。


どこをどう妬けばいいのか私の方が聞きたいくらいだ。


「仁王はどういう時妬くん?」

「雪が赤也の頭撫でとる時とか・・・」

「は?」

「丸井の口に飴やガムをほり込んでやるのも、ジャッカルに笑いかけるのも

俺よりも柳生や柳を頼りにしとるのも。真田は・・・・論外じゃが・・・。

幸村と2人で話しとるのが1番イヤじゃ・・・・。すべてが・・・気が狂いそうになる。」


真田は論外なんや・・・・。なんて思ってみたが

暗闇の中、私を見る仁王の目は真剣で、笑い飛ばす事も出来ない。

そんなに日常のちょっとした事・・・。

直ぐに忘れてしまうようなこと・・・・。

そんな事にヤキモチを妬かれていたとは・・・・。


確かに、他の男子といると何故か仁王が邪魔しに来るし

幸村と話してる時なんてすごい不機嫌になるし・・・・。

そうか・・・アレが嫉妬やったんや・・・。

「でもそんな事今まで言うたことないやん?」

「俺が勝手に妬いとるだけじゃからな。」

「でもさ・・・・」

「なら、言うたらどうにかなるんか?俺以外の男と話さんで過ごせるんか!?」

「それは・・・・。」

「・・・・すまん。なんでもなか。もう寝んしゃい。」


突然打ち切られた会話・・・・。


こんな風に声を荒げて怒鳴られたことも、

感情をぶつけられたのも初めてかもしれない。

そして・・・途中で話を止めてしまうのも・・・・今までになかった事。


いつものように仁王の胸へ抱きしめられても

冷たい壁に押さえ込まれているような感覚で

手先が冷たくなっていくのがわかる・・・。


仁王の気持ちが・・・・こんなに遠い。


その後眠る事も、仁王の腕の中から抜け出すことも出来ず

ただ時計の針の音を聞き続けた・・・・。







どれくらいの時間が過ぎたのか・・・?

スースーと頭の上から寝息が聞こえだし仁王が眠りについた事を知らせる。


「誰かの傍じゃ眠ることが出来ない。」

そう言ってた仁王が私の傍では安心したように眠ることを嬉しいと思う。

「今じゃこの胸に雪の温もりがないと落ち着かん」

そう言ってくれたのは先日のこと。


仁王がそう言ってくれるから、私は心が満たされ、仁王を信じることが出来る。

ヤキモチなんて妬く必要がないと思う・・・・。

なら・・・・。

私は同じだけ仁王に愛情を伝えられているのか・・・・?

出来ていないから・・・仁王はヤキモチを妬くのではないのか?


いつも仁王から愛をくれるから・・・私はただ受け止めるだけで・・・・。

投げられた言葉を・・・ただ返すだけで・・・・。

自分から「好き」だなんて言ったのも・・・・告白の時だけかもしれない・・・・。




「レイカ・・・。」


えっ・・・・・?


突然聞こえた声に耳を疑う。

今・・・なんて?


耳を澄まして聞いてみてもその後仁王が言葉を発する事はなく

規則正しい寝息が続くだけ・・・・。


でもたしかに・・・・。

仁王は「レイカ」と言った。

「レイカ」・・・・・人の名前・・・・?


さっきまでとは違う不安が湧き上がり息苦しさを感じる。


聞いたことのない名前・・・・。


仁王が寝言を言うなんて今までなかったことだ・・・・。

無意識の中で発された名前・・・・。

それが妙な不安を掻き立てる・・・。


誰・・・・・? 



次々に溢れくる感情に吐き気がし、

私はそっと仁王の腕から抜け出し身なりを整え

そのまま振り返ることもなく部屋を後にした。





初夏といっても夜はまだ肌寒い・・・・。

街灯に照らされた誰もいない道に私の足音だけが響く。


仁王が付き合ったのも、キスしたのも・・・・抱き合ったのも・・・・

すべて私が初めてではない。

でもそれは過去の事・・・・。

もう終わっている事だし、いまさら何を言うつもりもない。


気にならないのか?イヤだと思わないのか?


そんな事を聞かれたこともあったが、

そんな過去が在って今の仁王がいるのだと思えば

昔の付き合った人達にお礼を言わなければいけないほどかもしれない。

そう思っていた・・・・。


「今までの仁王君からは考えられない惚れっぷり」

「愛されてるって感じがするよね。」


仁王を信じていたのは、仁王の愛をちゃんと感じていれたから。

だけど、みんなが言ってくれる言葉に、安心を覚えたのも確かなこと・・・・。


そんな言葉に思い上がっていたのかもしれない・・・。



「『コート上の詐欺師』。簡単に信じたら泣かされちゃうよ?」


幸村に、仁王と付き合った当初言われたことがあった。


だけど仁王は、どんなに意地悪なことを言ったとしても嘘だけはつかなかった・・・。

だから・・・・・。



いつの間にか止まってしまった足に1粒の雫が落ちる・・・・。



今まで何があったってこんな気持ちになった事なんてなかったのに・・・。

いつだって前だけを向いて歩いてこれたのに・・・。


仁王のたった一言が・・・・。

その口から囁き落とされた名前が・・・・・

私の胸に突き刺さったように・・・いたい・・・。


別に浮気をされたわけでもない・・・。

別れようと言われたわけでもない・・・。


何も確かなこともなく・・・ただ名前を呼んだだけ・・・。


なのになぜ・・・・・?

なぜ涙が止まらないの・・・・?



「仁王・・・・・。」



次々溢れる涙を止める術もなく、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。


「仁王・・・におう・・・に・・お・・」

「呼んだかのぅ」


聞きなれた声が聞こえた瞬間、ふわりとした温もりに包まれる。


仁王・・・!?

なんで・・・?


だけどそんな疑問よりも身体が先に反応し仁王の腕を払い除けた。

こんな気持ちで仁王に抱きしめられたくない・・・。


暗がりの中視線を合わすことなく向かい合う2人の間に沈黙が流れる・・・。


苦しい・・・。

今ココで聞いてしまえばいい。

「レイカ」って誰なのか?


でも・・・・それを言ってしまえばすべてが終わってしまうかもしれない・・・。

そんな恐怖が心を覆い言葉が出て来ない・・・。


「何で泣いとる?」

「・・・なんでも・・ない。」

「なんでもない事ないじゃろ?雪がそんな涙流しとるのははじめて見る。」

「・・・・・・・。」

「なんで勝手に帰ろうとした?しかもこんな時間に。」

「・・・帰りたかったから。」

「なら俺を起こすせばええじゃろ?なんで一人で帰ろうとしたんじゃ!?」

「一人で帰りたかったから!!」

「泣いて俺の名前を呼びながらか!?」

「そうや!!悪いか!!」

「そんな顔でな泣いとるのに一人で帰せるわけないじゃろ・・・・。」


腕を引かれ腰に腕が回ったかと思うと乱暴なほどに顎をつかまれ唇を奪われた。

どんなに暴れても巻き付く腕の力は強くなるばかりで決して離れない。

硬く閉じる口に強引に舌を差し入れ息さえも出来ぬくらい深い口付けを繰り返す・・・。


仁王とキスしているはずなのに、心は冷たく嫌悪さえ感じる。

だけどこの温もりが離れていくのもイヤだと思う私がいる・・・。


抵抗しなくなったのを確かめ腕の力が抜かれ

倒れる様にその胸に身体を預けた。


いつもより早い鼓動が耳に響き、そっと瞳を閉じる。

その音を聞いていると少し冷静さを取り戻してきた。


「仁王・・・・?」

「ん?」

「嫉妬ってどんな感情?」

「なんじゃいきなり?」

「嫉妬するとどんな気持ちになるん?」

「苦しくて・・・黒い何かが渦巻くような感じかのぅ?

悲しい気持ちと、汚い気持ちの入り混じった感情じゃな。」

「そっか・・・・。じゃぁ・・・この気持ちは・・・嫉妬?」

「この気持ち?」

「仁王?・・・・「レイカ」って誰?」

「は?」

「さっき寝言で「レイカ」って言うとった・・・。」

「・・・・・・。」

「その名前聞いて・・・頭が真っ白になったような気がした・・・。」

「雪・・・・。」

「仁王が無意識に私と違う名前を呼ぶなんて・・・いやや・・・。

私じゃない誰かを夢に見るなんてイヤや!!」


再び溢れ出した涙で霞む仁王の顔を見上げ

襟を引き寄せ唇を合わせた。


私からキスしたのはあの日の告白以来・・・。


私からしなくてもいつも仁王がしてくれたから・・・。

待っていれば仁王が愛情をくれたから・・・。


だけど今は、私の想いをすべて込めたキスを仁王に・・・。

この想いが・・・仁王に届くように・・・。


いつの間にか頭の後ろに仁王の手が回されて

離れてはまた口付けて・・・。

その度に何度も何度も愛情を送り込む・・・。


仁王がすき・・・。

仁王が・・・・大好き・・・・。


ゆっくりと離された唇に寂しさを覚えながらも

仁王と視線を合わせる・・・。


いつもより優しい目をした仁王が、

私の頬に手を添えながら嬉しそうに微笑んだ。


「雪からキスしてもらえるとは思わんかったのぅ・・・。」

「・・・・・。」

「それにヤキモチまで妬いてもらえるとは・・・・。」

「それは・・・・」

「「レイカ」は親戚の子じゃよ。」

「え?」

「たまに家に来る親戚の女の子・・・・5歳じゃけどな。」

「へ?・・・・親戚・・・?・・・5歳・・・?」

「安心したか?」

「・・・・・・。」

「ん?」

「ううん。よかったって思っただけ・・・。ほんまに・・・よかった・・・。」


溢れる涙を拭いながら私は笑顔を仁王に向けた。


もしかして・・・ワザとやったんやないか?って思ったけど

そのおかげで大切な気持ちに気づけたから・・・・。

与えられる愛情は、当たり前のものじゃない・・・。

受け止めるばかりでは、私の想いは伝わらない・・・・。


少しづつでいいから・・・・こうやって2人で前へ進んで行こう。


仁王の腕の中で、その温もりを感じながらそう心に刻んだ・・・・・。







「ね!あれって仁王君じゃない?」

「また告白?相手は・・・2年か。さすがだね・・・・。」

「雪ちゃんはすごいね。私だったらこんなシーン普通に見てらんないよ!」

「雪ちゃんは気にしないんだもん!!ね?」

「そうでもないで。私かって嫉妬くらいするし!」

「「え~!?」」


窓を開け、木陰に見える告白を受けてる真っ最中の仁王に向かって叫ぶ。


「仁王~!浮気したらハリセン100発!!」


こなことでヤキモチは妬かないけれど、

あんな想いはもうゴメンだから・・・・。


ここらでちょっと私の気持ちも周りに知らしめとかなあかんやろ?









「うむ。作戦は成功したようだな・・・・。」

「蓮二。何の話だ?」

「弦一郎にもいつかわかる日が来る・・・。」


柳ノート。最新データー。


『ヤキモチを妬かない相手を嫉妬させるなら、寝言で他人の名前を呼ぶべし。』


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第3弾です!!   


第1弾→仁王と雪のある日の出来事  

第2弾→本音


順番としては・・・2・3・1かな?(ばらばら)


本編連載はまだなのに、番外編ばかりが出来ていく・・・。ww


今回はちょっとシリアス気味にしてみました。

いちごちゃんが私の嫉妬話見たいって言うてたんで書いてみました!

こんなもんでどうでしょう?ww



この話、ちょっと・・・かなり?実話入ってます(笑)


私は本当にあまり嫉妬とかしなくって放任主義です。

自分もできれば束縛されたくないんですけどね・・・・。


私に他の女の子の話したり、一緒にいるのに違う女の子と電話したり

そういう事をする彼氏が昔いたんですよ。

ヤキモチ妬かせたいってバレバレで相手にしてませんでした。

でもその人が寝言で違う女の名前を呼んだ時、かなりドキッ!ってしたんですよ。

寝言って本当に無意識じゃないですか!!

そんの中で、他の女の名前を呼ぶってどういう事!?みたいな?(笑)

もちろんその彼は仁王の様に作戦で言った訳じゃなく本気の寝言でしたよ。


今回はそれを元に書いてみました!!


最後の蓮二のセリフは・・・意味わかっていただけますよね?

もしわからなかったらそれは私の文才不足ですんで

コメいただけたら補足します(笑)


最後までありがとうございました!!