気に食わない・・・。
何もわかっていないアイツも・・・・。
ワザとやってる先輩も・・・・。
何もかも気に食わない・・・・。
素直に伝えて・・・。
「だからな、ここはこうやって・・・」
「わぁ・・・すごい・・・」
「な?簡単やろ?」
「はい!すごくよくわかりました!!」
時は夏休み。
毎日部活で忙しく、なかなか会えない夾と、
久しぶりに会える時間ができたけれど、
「会いたい」
なんて素直に言えるはずもなく・・・
「どうせ宿題できてないんだろ?教えてやるよ。」
と、もっともらしい理由をつけて呼び出した。
何の疑いもなく、馬鹿正直に宿題を持ってやって来た夾が
「勉強するなら図書館だよね!」なんて言いいながら、
勉強は嫌いなはずなのに、嬉しそうに俺の横を歩くから
宿題が終わったら、夾の好きな所へ連れて行ってやってもいいか?
なんて気持ちになっていたんだ・・・。
それなのに・・・。
「だからこのXを・・・・」
「・・・・・。」
「おい。聞いてんのか?」
「うん・・・ごめん・・・・。」
「はぁ・・・。なんでこんな問題がわからないんだ?」
「・・・ごめん・・・。」
別に怒っている訳でもないのに、どんどん俯いていく夾。
いい加減俺のこの口調にも慣れろよ。
はぁ・・・。もう少し優しく教えてやるか・・・。
そう思った時、聞きたくもない声が後ろから聞こえてきた。
「あれ?夾ちゃんやん!奇遇やな・・・。いや、これは運命か!?」
「忍足先輩!こんにちは。」
「どうしたん?こんなとこで・・・。あ、宿題か?」
「はい・・・。数学がわからなくて若に教えてもらってたんです・・・。」
「ん?・・・・日吉おったんか・・・。」
「ええ。ずっとここに!」
今やっと気づいたような口ぶりで俺を見る忍足先輩。
振り返り先輩を見れば、余裕そうな顔で俺を見下ろしている。
気に食わない・・・・・・・。
きっと思いっきり顔に出ているだろうけど、忍足先輩は気にする様子もなく
再び俺から夾へと視線を移し、優しそうな微笑で
「俺、数学得意やねんで。よかったら教えたろか?」
と、言い出した。
「俺も数学は得意なんです。」
「そやけど・・・夾ちゃん日吉の教え方じゃわかってへんみたいやで?」
夾を見れば申し訳なさそうな顔で俯いている。
「今度はわかりやすく教えますよ!!」
「俺が夾ちゃん教えといたるから日吉は自分のしたらええやん?」
「忍足先輩は用事があるんじゃないんですか?」
「ん?俺はコレ借りに来ただけやからもう用事は済んだで。」
「なら帰ってその本読めばいいじゃないですか。」
「今すぐ読まなあかん訳でもないしな・・・」
何なんだ・・・。
どう言い返しても軽くかわされる感じに苛立ちを覚える。
先輩の魂胆なんて見え見え過ぎる。
どうする・・・?
別に宿題をすることが本来の目的でもないし
さっさとここを出て行くか・・・?
そんなことを考えていると、夾の性格をうまく突くように
とどめとばかり言葉を落とした。
「夾ちゃんかて、日吉の迷惑にはなりたないはずやしな?」
何言ってんだこの人?
俺が夾を迷惑に思うはずがない。
だけど・・・・
「そ、そうだね・・・。若、私忍足先輩に教えてもらうから
若は自分の宿題やって?」
慌てた様に、無理に作った笑顔を俺に向ける。
どこまでもバカだ・・・。
俺が教えてやるって言っただろ?
迷惑だなんて俺が1度でも言ったのかよ!?
そう思っていても、素直に言葉にできない。
そして、口を衝いて出た言葉は、・・・・。
「勝手にしろよ・・・。」
・・・・・・バカは俺の方かもしれない。
そして今のような状況になっている・・・。
目の前で寄り添うように問題を解いていく二人。
さっき俺が何度説明しても理解できなかった問題も
忍足先輩の教えで、一瞬で解いてしまった・・・。
反対に俺は全然進まない・・・。
当たり前だ・・・。
こんな状況で集中できるはずもない。
時折クスクスと夾の笑い声が聞こえる。
そんな笑顔見せてんじゃねーよ。
そんな顔寄せなくても聞こえるだろうがっ!!
俺に見せ付けるように肩や髪を触り、耳に口を寄せて話す忍足先輩。
それを少し照れた様に恥ずかしがりながらも先輩の言葉に耳を傾ける夾。
気に食わない・・・。
何もわかっていないアイツも・・・・。
ワザとやってる先輩も・・・・。
何もかも気に食わない・・・・。
「夾ちゃん。今晩花火大会あんの知ってる?」
「はい。実は見に行きたいと思ってて・・・。」
「そうなん?なら一緒に行かへん?」
「え?私とですか?」
「夾ちゃんの浴衣姿見てみたいわ・・・。」
それ以上もう聞きたくない・・・・・。
俺は宿題を手早く片付け立ち上がった。
「忍足先輩に教えてもらうなら、俺は必要ないだろ?」
「えっ!?」
「なんや日吉帰るんか?」
「・・・・・。失礼します。」
後ろで夾が俺を呼ぶ声が聞こえたが、
振り返ることもせず図書館を後にした。
夏休みということもあってか、やたらと若いカップルが目に付く。
本当なら俺だって・・・。
なのにあいつは人の気も知らないで・・・・。
あんなにあからさまな忍足先輩の態度にどうして気づかない?
俺が好きなら俺の傍にいればいいんだ。
イライラを抑えられず足早に人混みを抜けていると
壁に貼られたポスターが目に入り足を止めた。
今日の日付と夜空に咲く大輪の華が写るポスター。
そういえばさっき忍足先輩が・・・。
フンッ・・・。
アイツも知ってると言っていた・・・。
見に行きたいって・・・。
ならなんで俺に言わない?
誰と行くつもりだった?
考えれば考えるほど湧き上がるどす黒い感情に握る拳に力が入る。
「あっれ~?日吉じゃん?」
突然、気の抜けるような口調で声をかけられ振り向けば
ニコニコと笑う芥川先輩がいた。
「なになにっ!?お前も花火大会行くのっ!?」
「行きませよ。」
「え~っ!?もったいないC~!夾ちゃん誘ってみれば?」
「・・・なんで俺が誘わないといけないんですか。
行きたければ自分から誘ってくるでしょ?」
そうだ・・・。
行きたきゃ自分で誘ってくるはず。
でもアイツは俺に何も言ってこなかった・・・・。
「・・・・・日吉って馬鹿だよね。」
「は?アンタにだけは言われたくないですね。」
「俺は好きな子にはいつも笑ってて欲しいC~。」
なんなんだ・・・?
顔は笑っているけど・・・声は真剣で・・・。
「その笑顔の為なら俺は何だってするし、どこへだって連れてってやる。」
「・・・・・。」
「日吉は違うの?」
「・・・・・何が言いたいんですか・・?」
「自分が笑顔にしてやろうとか、幸せにしてやるって思わねぇの?」
自分が・・・笑顔にしてやる・・?
いつも笑ってて欲しい・・・。
その笑顔を俺に向けて欲しい・・・。
そんな事いつだって思ってる!
じゃぁ・・・・。
その為に俺は・・・・・何をした?
アイツの為に・・・・・俺は・・・何かした事が・・・あったか・・・?
俺が何もしなくたって・・・夾はいつだって隣にいたから・・・。
俺の隣にいるだけで・・・夾はいつだって笑顔だったから・・・。
だからいつも安心してた・・・。
コイツは俺が好きなんだって・・・感じる事ができたから・・。
なら・・夾は・・・?
夾はいつもどんな気持ちだった?
アイツの隣に自分から並びに行った事があったか?
アイツの傍で気持ちが伝わるような事をした事があったか?
愛されてると・・・安心させてやる事が・・・できたのか・・・?
夾はいつだって不安だったはずだ・・・。
素直じゃない俺に・・いつだって不安を抱えていたはずだ・・・。
今日だって・・・誘ってこなかったんじゃない・・・。
「一緒に行こう」と・・・
言わなかったんじゃなく・・・・言えなかったんだ。
俺の気持ちが見えないから・・・。
俺は来た道を走って戻った。
アイツに今伝えなければ・・・。
この気持ちを・・・
この想いを・・・
俺の全てを伝えよう・・・。
アイツが・・・。
夾が・・・・笑顔になるように!
あの後、急いで図書館に戻ったが二人の姿はなく、
何度携帯に電話しても呼び出し音が響くだけ・・・。
夾の家にも行ってみたが帰ってはおらず
忍足先輩と本当に花火を見に行ったのかもしれない・・・。
日も陰り、情けない思いで家に帰り着いた時、玄関先に見える人影・・・。
「夾・・・・?」
「若っ!!」
俺に気づいた夾が駆け寄ってきた。
「よかった・・・。逢えて・・・。」
「なんで・・・・?お前・・忍足先輩は?」
「帰ったよ?」
「一緒に花火大会行くんじゃなかったのか?」
「どうして・・・?私が一緒に行きたいのは・・・若だけだもん・・・。」
その一言で俺の心は温かく満たされていく・・・。
どうして今まで気づけなかったのか・・・。
たった一言でよかったのに・・・。
それだけでこんなにも幸せな気持ちにさせてやれたんだ・・・。
「悪かった・・・。」
「えっ・・・?」
いつも不安にさせて・・・ごめん。
素直になれなくて・・・ごめん。
お前の気持ちに・・・気づいてやれなくて・・・ごめん。
言いたい事はたくさんあるが、今・・・1番伝えたいのは・・・
「お前が好きだ。誰よりも・・・・・。
俺の傍にいろよ。
俺が・・・お前の笑顔を守るから。」
俺を見上げる夾をそっと引き寄せ抱きしめた。
こんな小さな体で俺にぶつかってきてくれていたんだと思うと愛しさが溢れる。
抱きしめる腕に少し力を入れてもう一度
「好きだ・・・。夾。」
と囁けば、固まっていた夾の体の力が抜け、俺の胸に顔を寄せる。
「私も・・・若・・大好き・・・。」
「知ってる・・・。」
そっと髪を撫でてやれば嬉しそうに笑う。
その時、その笑顔を照らすように花火が上がった。
いつの間にか夜へと変わった空を、花火が綺麗に彩る。
「綺麗だね・・・・・。」
「あぁ・・・。」
「若と一緒に見れて・・・よかった・・・。」
「・・・来年は・・・浴衣着て来いよ。」
「えっ?・・・・・うん!!」
「・・・なら・・・約束だ・・・。」
そう言って笑顔の夾に口付けた。
来年も・・・再来年も・・・ずっとずっとその先も・・・。
一緒に過ごしていけるように・・・。
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夾さん。ブログ復活おめでとう!!
お帰りなさいと、おめでとうの気持ちを込めて
お祝いに書かせてもらいました!
リクはですね、ツンデレ若と同級生設定の両想い。
お世話焼きの侑士を絡めた微エロの三角関。
ツンデレは7:3くらい!!!!!
うん。無理!!
全部取り入れては無理でした!!ごめん・・・orz
ツンデレも7:3って微妙!!
下手したらデレの方が多い!?
お待たせしまくって出来たのがコレで申し訳ない!
でも若カワイくない?ww
ジロちゃんも出せたし♪(自己満足)
私の中のジロちゃんは意外と鋭い感性を持っているブラックジロちゃんです!
えーっと、最後になったけど復活してくれて本当によかった!
上がったり沈んだり色々あるやろうけど、
姐さんがガッツリ受け止めてやっからさ!
またこれからよろしくね!!