あれは中学生くらい
だったろうか?
私はマフラーを編んでいた
途中で行き詰まったら
母が
「どれ、貸してみ?」って
私の手から
編みかけのマフラーをとって
編み始めた
久しぶりの編み物に
母は楽しそうだった
母が編み進めるごとに私は
そこまで頑張って編んだのに
自分の作品じゃ
なくなってしまう気がして
ハラハラした
母が私の様子が変なのに
気づいて
「どうした?」と
聞いてくれたから
「これって私の作品だよね・・・?」
とおそるおそる言った
母は察したようで
「なんだそんなこと気にしてたの」
とちょっと不機嫌そうに
自分が編んだ分をほどいて
私に返した
不機嫌そうと感じたのは私で
母は私に悪いことした
気持ちだったのかもしれない
私はハラハラしていた時よりも
落ち込んだ
母は怒ってる様子では
なかったけれど
傷つけたのではないか?
少なくとも
嫌な気持ちに
させたのではないか?
母がせっかく編んだのに
ほどかれて手元に戻ってきた
編み物を握って泣いた
泣いてるのを母に見つかって
余計不快にさせないよう
顔を隠して泣いた
母に編まれるのは
いやだったのに
ほどかれたらもっと悲しくなった
私はどうしてほしかったんだろう?
もう何十年も昔の事なのに
あの胸の痛みは
まだ思い出せる
ちょっと苦い母の思い出
2021-4-11 10:22:32