ここの所恋愛運は悪くない。ギャンブル運もまずまずだ。
健康運は尻にだけ気をつけていれば、なんとでもないとすれば気をつけるとすればアレ。
タクシー運なのである。
マイカーを所持していない僕は、タクシーを頻繁に利用する。
学生の癖に贅沢だねと良く言われる。
しかし近隣の駐車場は月に2万。学割が効いて2万だ。
千円の距離を20回も乗った所で月の駐車場代にも満たないことを考えると
車を持たないと割り切って、その分タクシーに乗るほうが経済的である。
だから必要とあればタクシーを用いる。
だがしかし、道端で華麗に天に向かって手を伸ばすも、素敵なタクシーにあたらない。
「次の信号を右折し・・・」
「あい」
1週間前のタクシーは食い気味だった。
「次の信号を右折してください」
「・・・・」
昨日のタクシーは返事すらなく、怖かった。
運転が荒くてもいい。加齢臭がしてもいい。
降りる直前でメーターがあがるのも100歩ゆずってオッケー。
だからせめて返事くらいはしてくれと願いつつ、先ほど拾ったタクシーのおじさんに伝えた
「次の信号を右折してください」
「・・・かしこまりました」
遅くも早くもない絶妙なタイミング。まさに耳の中でとろけるような返事だった。
その上声がいい。渋いダンディな大人の声。
疲れた俺の身体にスゥ~っと入ってきた。
ついにきたか。しばらく悩まされたタクシー運もここまでか。
ストレスなく乗車を楽しめそうだと安堵のため息をついた瞬間
氷の上をすべるかの如く滑らかに、信号を左折したのでした。
